第二章 第二十八話:「南蛮交易の新たな展開」
天正四年(1576年)盛夏——
越前の敦賀港は、夏の強い陽射しに照らされながらも、活気に満ちていた。黒川家の交易拡大に伴い、南蛮商船が頻繁に出入りするようになり、異国の品々が市場に並び始めていた。
「殿、南蛮交易の船団が帰港しました。琉球やマカオ経由での品々も多く、茶器に適した陶器や珍しい染織品が手に入ったとのことです。」
藤堂宗春が報告書を手にしている。
「さらに、ルソンの商人とも取引が成立し、貴重な壺や香木も手に入れております。」
「それは良い知らせだ。」
俺は市場の方を見やりながら、次の一手を考えた。
「茶の湯の文化が栄えつつある今、これらの品々を単なる交易品としてではなく、茶道具としての価値を持たせることで、さらに高値で取引できる。」
斎藤友継が頷いた。
「殿の考え通り、千利休殿に目利きを依頼するのが最善かと。」
「そうだな。彼の鑑定を受けた品々は、ただの異国の品から、茶人たちが求める芸術品へと昇華する。」
俺は扇を軽く開きながら、静かに言った。
「ならば、早速千利休殿へ品々を送り、意見を伺おう。」
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*京・堺との交渉
南蛮交易の成功により、京や堺の商人たちも越前の動きに注目していた。
「殿、堺の今井宗久殿が黒川家との交易を強化したいと申し出ております。」
間宮時継が持参した書状を広げる。
「特に茶道具の取り扱いについて、堺での市場を拡大し、南蛮交易品を含めた新たな流通網を築きたいとのこと。」
俺は少し考え込んだ。
「つまり、堺が越前の茶道具を積極的に受け入れ、南蛮交易の拠点としての立場を強化するということか。」
藤堂宗春が慎重に付け加える。
「しかし、それに伴い津田宗及殿の反発が強まる可能性もあります。」
「当然だな。だが、今井宗久殿や千利休殿と結ぶことで、堺の茶人たちの影響力を利用できる。」
俺は微笑みながら言った。
「ならば、我々の交易が堺の商人たちにも利益をもたらすことを示せばよい。」
斎藤友継が頷く。
「新たな茶道具の流通と、それを求める京の貴族や武家との取引を加速させれば、津田宗及殿も無視できなくなるでしょう。」
「うむ。ならば、京と堺の茶人を敦賀に招き、南蛮品を交えた茶会を開く。そこで黒川家の交易の価値を知らしめよう。」
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*茶会の開催——文化と商業の融合
数日後、敦賀の黒川家館にて、茶会が催された。
千利休、今井宗久、そして堺や京の名だたる茶人たちが集い、南蛮交易の茶道具を用いた席が設けられた。
「これは……見事な品ですな。」
利休が手に取ったのは、南蛮船からもたらされた壺だった。
「単なる異国の品ではなく、侘び寂びを感じさせるものがある。」
彼は目を細めながら、器を見つめた。
「茶の湯の世界に、新たな可能性をもたらすかもしれませんな。」
今井宗久も頷いた。
「これらの品々が市場に出れば、堺や京の茶人たちがこぞって求めることでしょう。」
俺は静かに微笑んだ。
「交易は単に物を動かすだけではない。文化を創り出し、新たな価値を生み出すことができるのです。」
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*未来への展望
茶会が終わり、客人たちが帰った後、俺は庭に出て夜空を仰いだ。
「越前の商業が、ただの交易から文化を生み出す段階へと進み始めた。」
藤堂宗春が隣で静かに言った。
「この動きが定着すれば、黒川家の交易は他の勢力を凌駕するものになりますな。」
「そうだ。だが、これが本当の始まりに過ぎない。」
俺は遠く海を見つめながら、次の戦略を練り始めた。
「商業国家として、さらに先を見据えなければならん。」




