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第二章 第二十六話:「柴田勝家との交渉」

最大妨害者の柴田勝家ですが、さて。

天正四年(1576年)晩春——

春も終わりに近づき、越前の田畑は青々とした若葉に覆われ、港には活発な交易の声が響いていた。しかし、黒川家にとって最も重要な課題は、織田家内での立場を確固たるものにすることだった。

「殿、やはり柴田勝家殿との対立は避けられませんか?」

斎藤友継が慎重に尋ねる。

俺はしばらく沈思し、地図の上で越前の位置をなぞった。

「いずれは対立の可能性もある。だが、今は商業の発展を優先する時だ。勝家殿を敵に回せば、我々の動きは著しく制限される。それよりも、彼を協力者にする道を探るべきだ。」

間宮時継が頷いた。

「それには、彼にとっての利益を提示する必要がありますな。」

「そうだ。勝家殿は織田家の重臣であり、武断派の筆頭だ。戦に明け暮れる彼にとって、商業の重要性は二の次だ。ならば、彼にとって不可欠なものを差し出すべきだ。」

藤堂宗春が考えを巡らせながら口を開いた。

「軍資金の提供……でしょうか?」

「単なる金の提供では不十分だ。」

俺は視線を鋭くし、机を指で叩いた。

「柴田殿が欲しているのは、安定した補給と戦力の強化だ。ならば、我々は交易を通じて、軍備の整備と兵站の確保を支援すると申し出る。」

斎藤友継が驚いた表情を浮かべた。

「それはつまり、黒川家が織田家の軍事基盤を支える役割を担うということで?」

「そうだ。戦に不可欠な鉄砲、火薬、糧秣の供給を我々が担当する。そうすれば、柴田殿も我々を無下にはできなくなる。むしろ、頼らざるを得なくなる。」

間宮が低く笑った。

「なるほど……それは、黒川家の影響力をさらに拡大する策でもありますな。」

俺は静かに頷いた。

「そうと決まれば、早速柴田殿に会談を申し込む。」

________________________________________

*柴田勝家との対面

数日後、黒川家の代表として俺は柴田勝家と対面した。会場は越前・一乗谷にある黒川家の館。軍務の合間を縫って訪れた柴田勝家は、鋭い眼光で俺を見つめていた。

「黒川よ、商いにばかり気を取られ、織田家の武威を疎かにするつもりではあるまいな?」

開口一番、柴田は厳しい口調で問いかけた。

俺は動じずに微笑み、静かに言葉を紡いだ。

「とんでもない。むしろ、私は織田家の武威を支えるためにこそ、商業を発展させているのです。」

柴田の目がわずかに細くなる。

「ほう? どういうことだ?」

「戦に必要なものは、兵だけではありません。糧秣、鉄砲、火薬……これらがなければ、戦もままならぬ。そして、それらを安定して供給するのが、黒川家の商業網なのです。」

俺は机上の地図を指し示した。

「我々は日本海交易を拡大し、堺や京の商人たちと協力関係を築いています。もし柴田殿が軍を動かす際、必要な兵站を黒川家が保証できるとしたら……?」

柴田は腕を組み、じっと俺を見据えた。

その時、部屋の奥から静かな足音が響いた。黒川家の女官が膳を運び、静かに席へと置いた。金箔の杯に注がれた酒の香りが、わずかに漂う。

「柴田殿、どうぞお召し上がりください。」

そう言いながら、妻が控えめに微笑んだ。戦ばかりの勝家には馴染みの薄い、穏やかな宴席の形式だったが、彼はそれを気にする素振りもなく、堂々と杯を手に取った。

「つまり、お前は俺に取引を持ちかけているというわけか。」

「そうです。柴田殿の軍が必要とする物資は、黒川家が確実に供給します。その代わり、柴田殿には黒川家の商業政策を支持していただきたい。」

柴田はしばらく沈黙し、そして豪快に笑った。

「はっはっは! 面白いことを言う。商人の戯言かと思えば、なかなかの策士よの。」

彼は杯を手に取り、一気に飲み干した。

「よかろう。お前の商いが、戦の助けになるというならば、俺も口を出すまい。ただし……」

彼の目が鋭く光った。

「戦の場面で俺が必要とするものが、確実に届くことを誓え。」

俺も杯を手に取り、静かに頷いた。

「誓いましょう。黒川家の商業は、織田家の戦を支えます。」

________________________________________

*取引成立——新たな関係

交渉が成立し、黒川家と柴田勝家の関係は「敵対」ではなく「協力」へと変わった。俺は取引の成立を確信しながら、静かに柴田の表情を見た。

「黒川よ、一つだけ忠告しておく。」

柴田は低く言った。

「商いはいいが、織田家の武威を軽んじるような動きをすれば、その時は容赦せんぞ。」

俺は静かに微笑んだ。

「ご安心を。商いと戦は、どちらも生き抜くための術。我々はそれを見誤りはしません。」

柴田は満足そうに頷き、席を立った。

こうして、柴田勝家との同盟が成立した。これにより、黒川家は織田家内での地位をより強固なものとし、商業国家としての発展をさらに加速させることが可能になった。

だが、同時にこれは新たな責任を意味する。

「商業が戦を支える……か。」

俺は一人、静かに呟いた。

「これが、新たな時代の形だ。」


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