第二章 第二十話:「信長の裁定」
堺との正式な商業協定の準備が進む中、俺は信長公にこの件を報告するため、再び岐阜城へ向かった。
道中、山々は紅葉に染まり、秋の深まりを感じさせる。越前と美濃を結ぶ街道も整備が進み、物資の流通が活発になっているのを実感する。
「殿、信長公は今回の協定をどう判断されるでしょうか?」
斎藤友継が慎重な口調で尋ねる。
「信長公は商業の重要性を理解している。だが、織田家内の反発を抑えるためには、協定が織田家全体に利益をもたらすものであると明確に伝えねばならん。」
俺はそう答えながら、岐阜城へと足を進めた。
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*岐阜城での謁見
岐阜城に到着すると、信長公の側近である村井貞勝が迎え入れてくれた。
「黒川殿、信長公がお待ちです。」
謁見の間に入ると、信長公が静かに俺を見据えていた。その眼光は鋭く、俺の出方を測っているようだった。
「黒川、そちが進めている堺との商業協定について、報告を聞こう。」
俺は深く頭を下げ、協定の詳細を説明した。
「越前と堺が共同で商会を運営し、交易を管理することで、商業の安定化を図ります。これにより、織田家全体の財源が増え、軍事資金の確保も容易になります。」
信長公はしばらく沈黙した後、口を開いた。
「ふむ……確かに利はあるな。しかし、これが織田家の他の家臣たちにどう受け取られるか、考えておるか?」
「はい。特に柴田勝家殿のような武断派にとっては、商業の発展が彼らの影響力を弱める要因になり得ます。」
「その通りだ。そちの考えは悪くない。だが、織田家の秩序を乱すようなことになれば、余は容赦せぬぞ。」
信長公は微笑しながらも、鋭い威圧感を漂わせた。
「それは承知しております。ゆえに、この協定はあくまで織田家の利益を最優先するものであり、軍資金の安定供給につながることを保証いたします。」
信長公は軽く頷いた。
「よかろう。堺の商人どもをうまく使え。だが、そちの商業政策が戦の邪魔になるようなら、そのときは覚悟せよ。」
「御意。」
俺は深く頭を下げた。
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*岐阜城を後にして
謁見を終え、俺は岐阜城を後にした。
「殿、信長公の裁定を得られたのは大きいですが、警戒も解かれてはおりませんね。」
斎藤友継が慎重な表情を浮かべる。
「当然だ。信長公が認めたとしても、織田家内にはまだ反対する者がいる。これからが本当の勝負だ。」
俺は馬の手綱を握り締めた。
「堺との協定を成功させることで、我々の立場をさらに強固なものとする。そして、越前を真の商業国家へと導くのだ。」
夕暮れの街道を進みながら、俺は次なる一手を思案していた。




