第二章 第十八話:「堺の揺らぐ均衡」
新たな交易の波が、堺の商人たちを揺さぶっていた。
「黒川家との交易が広がれば、堺の商業も更なる発展を遂げる。」
こう語るのは、今井宗久を筆頭とする商業推進派の者たちだった。一方で、津田宗及を中心とする保守派の商人たちは、この急激な変化を警戒していた。
「これまでの秩序を乱す可能性がある。我々堺の自治を脅かすことになるのではないか?」
津田は、京の公家と連携し、堺の既存の枠組みを維持することに注力していた。しかし、黒川家との交易の成功を受け、多くの商人たちが利益の拡大に目を向け始めている。
「このままでは、堺の商業は黒川家の影響下に置かれることになるぞ。」
津田は焦燥感を募らせながらも、まだ動きを決めかねていた。
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*堺への使者
「殿、堺の情勢が揺れています。津田宗及の勢力が弱まりつつあるようです。」
間宮時継が、堺からの報告を手にしていた。
「商人たちは、利益のある方に流れるものだ。黒川家の交易が軌道に乗れば、いずれ彼らも動かざるを得なくなる。」
俺はそう言いながら、次の一手を考えていた。
「この機を逃さず、堺へ使者を送る。さらに商業協定を拡大し、黒川家と堺の結びつきを強めるのだ。」
「どなたを?」
「藤堂宗春を使わせる。彼ならば交渉に長け、商人たちとも信頼関係を築きやすい。」
「承知しました。」
藤堂宗春を堺に向かわせることで、黒川家の立場をより強固にし、堺の商人たちとの関係を深める。これは、ただの商談ではなく、黒川家が堺の勢力争いに本格的に関与することを意味していた。
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*津田宗及の決断
藤堂宗春が堺に到着すると、すぐに商人たちとの会合が開かれた。
「越前との交易が発展すれば、堺にとっても新たな市場が開けるのは明白だ。」
今井宗久がそう言うと、多くの商人たちが頷いた。
しかし、津田宗及は依然として反対の姿勢を崩さなかった。
「黒川家の影響力が強まりすぎれば、いずれ堺の自由も失われるやもしれぬ。」
「しかし、それはむしろ堺にとっての新たな成長の機会では?」
藤堂が説得を試みる。
「商業とは変化するものだ。過去に囚われるのではなく、時代の流れを読まねばならない。」
津田は黙ったままだった。
やがて、彼は深く息をつき、言った。
「私はまだ黒川家との交易を完全には受け入れられぬ。しかし、もはや時代の流れを無視することもできぬ。」
それは、保守派の敗北を認めるような言葉だった。
堺の均衡は、ついに大きく崩れ始めたのだった。
まだまだ、意識改革は終わりません。




