第二章 第十六話:「商業の拡大と新たな火種」
試験交易の成功から数日が経ち、敦賀港の賑わいは一層活気を増していた。港には新たな商船が寄港し、堺だけでなく、京や尾張の商人たちも徐々に越前の交易網に興味を持ち始めていた。
「殿、先日京へ送った使者から報告が届きました。」
斎藤友継が巻物を広げる。
「京の商人たちの中には、越前と堺の交易に関心を持ち、参画を検討している者もいるようです。特に、琵琶湖経由の物流が整えば、京への物資の供給が安定すると見込んでおります。」
「京の商人が動けば、公家勢力の圧力も和らぐだろう。」
俺は巻物を受け取り、内容を確認した。琵琶湖水運が整備されれば、越前の交易はさらなる飛躍を遂げることになる。
「とはいえ、京の商人たちは慎重だ。彼らは織田家の意向を気にしておる。信長公の裁可が下れば、より多くの商人が参画するだろう。」
「では、信長公へ直接申し上げるべきでしょうか?」
「いや、まずは更なる成果を示す。堺との第二次交易を成功させ、確かな利益を得ることで、織田家の軍資金増加に貢献できることを証明するのだ。」
「しかし、堺の商人の中にはまだ抵抗勢力がいるかと。」
間宮時継が慎重に言葉を選ぶ。
「津田宗及はいまだ我らの交易を快く思っていない。しかし、前回の交易の成功で堺内の賛成派も増えた。次の交易では、より多くの商人が関わるはずだ。」
「となると、津田は次こそ妨害に動く可能性が高いですね。」
「その可能性は十分ある。」
俺は考え込んだ。
「次の交易では、安全対策をさらに強化する。商船の護衛を増やし、密偵を送り込んで津田の動きを探るのだ。」
「承知しました。間宮が内偵を進めます。」
俺は番所の外を見た。港では、交易の準備が着々と進められている。商人たちの熱気が伝わってくるようだった。
「信長公へは、琵琶湖水運の整備計画と共に、交易の成功を報告する。織田家の支援を得られれば、京と堺を繋ぐ商業路はさらに盤石なものとなる。」
「信長公が商業の発展に興味を持てば、反対勢力も動きづらくなるでしょう。」
「だが、商業の拡大は新たな敵を生むことにもなる。」
俺は深く息を吸い込んだ。
「次の交易が、本当の勝負となる。」




