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第二章 第五話:「影に潜む黒幕」

商隊襲撃事件の裏に何者がいるのか、黒川家の警邏組が動き出した。

城下の暗がりを巡回する警邏組の隊士たち。彼らは夜間の見回りだけでなく、密かに商人や町人たちの動向を探る密偵の役割も担っている。今回の襲撃が単なる盗賊の仕業ではないことは明白だった。

「殿、城下に潜む怪しい動きがいくつか確認されました。」

報告に現れたのは、警邏組の頭領である間宮時継まみや ときつぐ。彼は元忍びの家系であり、隠密活動に長けた男だ。

「まず、吉見屋五兵衛の動きですが……彼自身が襲撃を指示した証拠は出ておりません。しかし、彼の周囲には、最近になって京や堺の商人たちと密かに会っている形跡があります。」

「ほう……京や堺の商人?」

「はい。特に堺の商人の中には、織田家の他の勢力と繋がりを持つ者もおります。柴田勝家の家臣筋の者が、越前の商人と接触していたという情報もございます。」

俺は腕を組んで考え込んだ。

「つまり、黒川家の商業改革を快く思わぬ者が、織田家内にもいる可能性が高いということか。」

「ええ。それに、最近になって越前に流入した間者の中に、京の公家筋に関わる者もいるようです。」

「公家筋……」

「朝廷の一部では、信長公の勢力拡大を警戒する動きもございます。そのため、黒川家が独自に商業権を確立することを阻止しようと動いている可能性があります。」

信長の政策は従来の権威を根底から覆すものだ。俺が進める商業改革もまた、その一環と見なされているのかもしれない。

「つまり、敵は外部だけでなく、内側にもいるということだな。」

「その通りです、殿。」

________________________________________

吉見屋の真意を探る

俺はもう一度、吉見屋五兵衛を城へ呼び出した。

「最近、お前は京や堺の商人と密かに接触しているようだな。」

「殿……それは商いにおいて、当然のことではございませんか?」

吉見屋は表情を崩さぬまま答えた。

「当然かどうかは、今は関係ない。問題は、その商談の中に、黒川家の商業改革を妨害しようとする者が混じっていないかということだ。」

吉見屋はしばらく沈黙した。

「……正直に申し上げますと、確かに堺の商人たちの中には、殿の改革を快く思わぬ者もおります。しかし、私自身は、黒川家の方針に従うつもりです。」

「ならば、証明してもらおう。お前の仲介で、堺の商人たちと正式な会談の場を設ける。もし彼らが妨害を企てるつもりならば、その場で炙り出す。」

「……それが叶うならば、私も一枚噛みましょう。」

「もう一つ、最近の商隊襲撃についてだが……お前の商人たちが狙われた理由は分かるか?」

「……おそらく、商人たちを怖がらせるためでしょう。改革が始まる前に、動きを封じるつもりかと。」

「その背後にいるのは誰だ?」

「それは……分かりませぬ。しかし、商隊襲撃の背後にあるのが単なる野盗ではないことは明らかです。おそらく、堺の商人の一部、あるいは織田家内の何者かが関わっているはずです。」

俺は深く頷いた。

「よかろう。吉見屋、今後はお前も警邏組と連携し、商人たちの動向を監視せよ。」

「御意。」

________________________________________

警邏組の次なる動き

間宮時継が再び報告を持ってきた。

「殿、我々の密偵がある情報を掴みました。京から来た間者の中に、朝廷の使いと称する者が含まれているとのこと。」

「朝廷の使い?」

「はい。しかし、彼が本当に朝廷の意向を受けた者なのか、それとも別の勢力が送り込んだのかは不明です。」

俺はしばし考えた。

「ならば、我々も朝廷と正式に接触し、事実を確かめる必要があるな。」

「……となると、京へ使者を送りますか?」

「それも考えねばなるまい。しかし、まずは襲撃者の正体を掴むことが先だ。」

「すでに動いております。黒幕を突き止めるには、もう少し時間がかかるでしょう。」

「よかろう。引き続き警邏を強化し、越前の安全を確保するのだ。」

こうして、黒川家の商業改革を巡る暗闘が、さらに深まっていった。

敵は一人ではない。

外部の商人か、織田家内の勢力か、あるいは朝廷か。

黒幕が誰であれ、この改革を阻む者を放ってはおけない。


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