第二章 第四話:「商業改革への妨害と対抗策」
翌朝、俺のもとに急報が届いた。
「殿、交易路を往く商隊が襲われました! しかも、立て続けに二件です!」
使者の報告に、俺は眉をひそめた。
「襲撃者は?」
「野盗との噂ですが、あまりに手際が良すぎます。ただの盗賊の仕業とは思えませぬ」
藤堂宗春が腕を組みながら低く呟く。
「商業改革に反発する者たちの仕業かもしれませんな。先の会合で商人たちの合意は取りましたが、中には密かに妨害を企てる者がいてもおかしくはありません」
「……すぐに警邏組に調査を命じろ。襲撃の規模、手口、狙われた商隊の共通点を洗い出せ」
斎藤友継が頷き、手配を開始する。
「商隊の護衛を強化し、取引を行う商人たちには我々が守ると伝えよ。越前が商業の拠点となるためには、交易の安全が何よりも優先される」
俺の言葉に、家臣たちは即座に動いた。
黒川家の商業改革を阻む動きが始まった。ならば、こちらも次の一手を打つしかない。
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間者の摘発と対策
それから数日後、警邏組が動いた結果、興味深い報告が上がってきた。
「殿、襲われた商隊はいずれも吉見屋五兵衛と取引のあった商人たちでした」
「ほう……」
吉見屋は先の会合で表向きは俺の改革に賛成したが、裏で妨害をしていた可能性がある。
「もう一つ気になる情報がございます。城下で最近、見慣れぬ者たちが増えております。京の方から来たと名乗る者もおり、商人たちと密かに接触しているようです」
「商人の一部が外部の勢力と通じ、黒川家の動きを阻もうとしている……か」
「どういたしますか?」
「まずは吉見屋を動かす。彼に協力を迫るのだ」
俺は吉見屋を城に呼び出した。
「殿、ご機嫌麗しゅう」
吉見屋は穏やかな表情を浮かべていたが、その目の奥には探るような鋭さがあった。
「最近、商隊の襲撃が続いているな」
「ええ、商人たちの間でも不安が広がっております」
「そちらでは、何か心当たりはないか?」
「とんと存じませぬな。ですが、商業が発展すれば、それを妨害しようとする者が現れるのも道理。特に、交易の変革に反発する者たちは、力ずくでそれを止めようとするかもしれませぬ」
「ならば、吉見屋。お前が商人たちをまとめ、この妨害を防ぐ側に回れ」
「……これはまた、急なお話で」
「お前ほどの男ならば、すでに状況を把握しているはずだ。黒川家の商業改革が進めば、越前の地位は高まり、お前たち商人の利益も増える。それを妨げようとする者たちがいるなら、排除すべきではないか?」
吉見屋は沈黙した。
「お前がここで黒川家と協力するならば、お前の商売も守られる。だが、逆に裏で動いていることが明らかになれば……その時は、相応の措置を取らねばならぬ」
「……御意。確かに、この改革が成功すれば、我々にとっても大きな利益となりましょう。殿のお力添えにより、商業の発展に貢献いたします」
吉見屋は一礼し、城を後にした。
だが、すべてが解決したわけではない。
商隊襲撃の黒幕が本当に吉見屋なのか、あるいは外部勢力なのかはまだ分からない。今後も警邏組の監視を強化し、さらなる動きを見極める必要がある。
黒川家の商業改革は、試練の時を迎えていた。




