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第二章 第三話:「商業改革の壁」


市場の改革と街道の整備が始まり、商業国家としての基盤が着実に整えられつつあった。しかし、すべてが順調に進むわけではない。秤量通貨の問題と既得権益層の反発という二つの大きな壁が立ちはだかっていた。

貨幣制度の混乱

市場で商人たちの様子を見ていると、取引のたびに銀秤を使って価値を測る光景が目に入った。各地で流通する貨幣は統一されておらず、京の寛永通宝、堺の南蛮貿易で流入したスペイン銀貨、越前の地元商人が使用する銀片など、様々な貨幣が混在している。

「殿、商人たちは毎回取引のたびに計量をしており、時間がかかりすぎます。相場が日々変動するため、遠方から来る商人にとっては不利な取引になることもございます」

瀬戸忠勝が眉をひそめながら言う。

「つまり、このままでは商業が活発になっても、不便が増えるだけということか」

「その通りです。特に、取引の公平性を担保するには、基準となる貨幣の設定が不可欠です」

俺は腕を組んで考えた。秤量通貨は、この時代の商取引においては一般的だったが、商業の発展には明らかに不利な要素となる。

「ならば、公定相場を制定し、貨幣価値を統一するしかない」

「しかし、それには公的な権威が必要になります。信長公や朝廷のお力を借りることになるでしょう」

藤堂宗春の言葉に俺は頷いた。

「まずは越前内部で試験的に相場を固定し、取引の安定化を図る。商人たちが慣れた頃に、織田家や朝廷を巻き込んで全国規模へ広げる」

「なるほど……まずは実績を作るわけですな」

「そうだ。商人たちに支持されれば、信長公も無視できなくなる」

俺はこの策を実行に移すことを決めた。

________________________________________

既得権益層の反発

秤量通貨の問題に取り組む一方で、新たな問題が発生した。越前の古くからの商人たちが、新たな商業政策に強い不満を抱いているのだ。

「殿、最近、商人組合の中でも反発する声が増えております。特に、これまで関所で利益を得ていた者や、特定の品目の独占権を持っていた商人たちが強く反対しておるようです」

斎藤友継の報告を受け、俺は静かに息をついた。

「既得権益層か……」

越前の商業改革は、すべての商人に公平な取引機会を与えることを目的としている。しかし、これまで特定の利益を享受していた者たちにとっては、大きな損失となる。

「殿、このままでは、一部の有力商人たちが裏で妨害工作をする可能性があります。すでに、関所の減少に反対する者たちが京の商人と密かに連携し、黒川家の政策を無効化しようと動いているとのこと」

藤堂宗春の言葉に、俺は目を細めた。

「つまり、我々の動きが本格的に警戒され始めたということか」

「そうなりますな」

このまま放置すれば、黒川家の改革に対する妨害はさらに強まるだろう。場合によっては、商人たちが敵対勢力と手を組み、織田家に訴え出ることもあり得る。

「ならば、対話の場を設けよう」

「対話、ですか?」

「一方的に政策を押しつけるのではなく、商人たちと議論を重ね、双方に利益のある形を模索する。『楽市楽座』の理念を理解してもらえれば、反対派の中にも納得する者が出てくるはずだ」

「しかし、それでも反発する者が出るのでは?」

「そうなれば、信長公の権威を借りるしかない。楽市楽座は織田家の方針でもある。それに従わぬ者は、もはや商人としての資格を失うことになる」

「……なるほど。ならば、まずは商人たちとの会合を開くのが得策ですな」

「そうだ。その場で、公定相場の試験導入も提案する」

これで、まずは黒川家主導での商業改革の基盤を確立する。

しかし、これがすんなり進むとは限らない。

「商人たちとの対話を終えた後、織田家や朝廷との交渉が必要になる。次の壁は、そこにある」

商業改革の道は、まだ始まったばかりだった。


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