表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/67

第二章 第二話:「越前商業改革の始動」

秋の朝、城下町の市場に足を踏み入れると、喧騒と活気が入り混じった空気が広がっていた。

しかし、まだ完全に復興したとは言い難い。商人たちは慎重な態度を崩さず、交易の流れも滞りがちだった。黒川家が本格的に商業国家への道を歩み始めるには、まず具体的な行動を示し、民衆と商人の信頼を得なければならない。

俺は斎藤友継、藤堂宗春、瀬戸忠勝らを伴い、市場の視察を行った。商人や職人たちと直接言葉を交わし、現場の声を聞くためだ。

「殿、お噂は聞いておりますぞ。黒川家は商いを盛んにするお考えだとか……?」

布商の男が遠慮がちに問いかける。

「その通りだ。越前は戦の地ではなく、商いの地として栄えるべきだ」

「それはありがたい話ですが、戦のたびに税や取り締まりが変わるのが困りますな。安定した決まりごとがなければ、商いも長続きしませぬ」

その通りだ。戦国の世では、大名が変わるたびに税率や取り締まりが変動し、商人たちは常に不安定な立場にあった。

「だからこそ、俺は『公定税制』を定める。商人たちが納める税を一定にし、突然の変更を禁じる。また、黒川家の名のもとに、取引の安全を保障する」

瀬戸忠勝が補足する。

「さらに、交易品ごとに明確な基準を設け、相場を安定させます。これにより、不当な値付けや過度な買い占めを防ぎ、商人同士の公平な取引を保証します」

商人たちは顔を見合わせた。税率の安定、交易品の基準化——これらは彼らにとって大きな安心材料となる。

「それが実現するならば、安心して商売ができますな」

「そのためには、まず黒川家の保護のもと、商人組合を設立する。これにより、商人たちは互いに連携し、問題があれば黒川家と協議のうえで解決できる仕組みを作る」

藤堂宗春が付け加えた。

「また、越前独自の通行証を発行し、黒川家の支配地域内では自由な移動を認める。これにより、商人たちは街道の関所で不当に足止めされることなく、迅速に交易が行える」

商人たちの表情が変わった。少しずつ、俺たちの考えが彼らに浸透しつつある。

「……殿が本気で商業を支えてくださるのであれば、我らも全力で協力いたしましょう!」

そう言って、商人の代表格が深く頭を下げた。

警邏組織の設立:間者と治安維持

市場や街道の整備と並行して、越前国内の治安維持も急務であった。商業が発展すればするほど、間者や盗賊、密偵の暗躍も増す。そこで、新たに『警邏組けいらぐみ』と呼ばれる組織を設立することにした。

「商いが繁盛するほど、間者や盗賊の企みも増える。特に、織田家と敵対する者たちが、越前を混乱させようとするのは避けられない」

俺は斎藤友継と藤堂宗春に向かって言った。

「そこで、新たに警邏組を設置し、越前国内の警備を強化する。警邏組は商人の護衛、密偵の摘発、盗賊の取り締まりを主な職務とする」

「つまり、商業の発展に伴う犯罪の抑止機関ということですな」

「そうだ。特に、密偵や間者の摘発には重点を置く。彼らが敵対勢力に情報を流せば、黒川家の商業基盤が脅かされることになる。警邏組には、武士だけでなく、町民からも有能な者を登用し、城下の動向を探らせることにする」

「なるほど……身分にこだわらず、情報収集を徹底するというわけですね」

「また、商人たちにも協力を仰ぐ。商業の安全が守られることは彼らにとっても利益となる。警邏組の一部には商人たちと連携する情報組織を加え、市場や宿場で不審な動きがあればすぐに報告できる体制を作る」

「これが実現すれば、越前は戦国の世で最も安全な商業地となるでしょう」

俺は深く頷いた。

「商業国家を確立するには、ただ道を整え、税制を安定させるだけでは足りない。安全と秩序を守ることが、すべての基盤となるのだ」

藤堂宗春は微笑しながら言った。

「戦わずして国を強くする……殿はやはりただ者ではございませんな」

俺は静かに息を吐き、城下の活気を見つめた。

「まだ道は半ばだ。だが、越前は必ず、戦国の混乱を超えて、新たな時代の礎となる」

________________________________________

街道整備の開始

市場を後にし、次に向かったのは街道の整備現場だ。

越前の交易が活発になるためには、安全な街道が必要不可欠だった。これまでの戦乱で荒れた道を修復し、各所に休息所を設置することで、商人や旅人が安心して移動できる環境を作る。

「殿、すでに人足を集め、街道の補修を始めております。来春までには京へ続く主要道が整備される見込みです」

報告するのは現場を統括する職人頭の藤木。

「さらに、街道沿いには宿場町を整備し、旅人が休める場所を増やします。これは商人のみならず、旅人や巡礼者にも恩恵があるでしょう」

俺は頷く。

「街道の安全を維持するため、武装した盗賊団や野武士の取り締まりも徹底する。商人が安心して越前を通れるようになれば、交易量は飛躍的に伸びるはずだ」

藤堂宗春が感心したように言う。

「こうして見ると、殿の考えは一つ一つが理に適っておりますな。武力による支配ではなく、商業と秩序による統治……これは戦国の常識を覆すものです」

「だが、これで終わりではない。越前を商業国家として確立するには、さらなる施策が必要だ」

俺は馬を進めながら、次の計画を思い描いた。

これから行うのは、貨幣制度の確立と織田家との協力強化。

商業改革の第一歩は踏み出した。だが、この道はまだ始まったばかりだ——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ