第二章 第一話:「商業国家の確立」
第二章開幕です。
商業国家戦略が開始されました。
夜が明けると、越前の城下町は静かに活気を取り戻しつつあった。
信長との謁見を終えた今、黒川家の役割は明確になった。「争いを避け、商業による発展を促し、それをもって織田家の力を支える」 これを実現するためには、越前を戦乱の地ではなく、商業と流通の拠点として確立しなければならない。
俺は朝から家臣たちを集め、今後の計画を話し合うことにした。
「まずは、越前における交易の安定化を進める。戦がなくとも、流通が途絶えれば商人たちは去り、経済は衰退する。我々が商業国家を確立するには、まず『安全』を確保しなければならない」
斎藤友継が頷く。
「確かに、その通りですな。戦国の世において、最も価値のあるものは『安定』です。武士たちは領土を守ることに必死ですが、商人たちは戦の少ない地を求めて移動します。つまり、越前を争いのない土地とすることで、商人を呼び込めるわけですな」
「そのために、俺たちはいくつかの施策を打つ必要がある。」
俺は指を立て、いくつかの重点策を示した。
④ 貨幣制度の改革
「そして、交易を活性化させるためには、貨幣の統一が不可欠だ。この国には今、多くの種類の貨幣が流通しており、秤量通貨が主流だが、それぞれの銀や金の純度が異なるため、商取引のたびに相場を計算しなければならない」
「確かに、堺や博多では相場が立っておりますが、越前独自の統一通貨を作るということでしょうか?」
「いや、独自通貨を発行するのではなく、相場の基準を制定し、安定した貨幣取引を可能にするのだ。織田家の支配地域においても、こうした統一された相場を定めることで、商業の発展を後押しする」
「しかし、相場を決めるには何らかの権威が必要かと……」
「そこで、天皇の権威を借りる。京都の朝廷や有力な商人たちと協力し、『公定相場』を制定する。これにより、越前での取引が全国の商人にとって明確で安全なものとなる」
藤堂宗春が目を輝かせる。
「なるほど……確かに、貨幣の安定は商人にとって大きな魅力ですな。殿の目論見は、単に戦を避けるだけでなく、織田家と天皇の双方を味方につけるということ……まことに巧妙です」
俺は頷いた。
「貨幣の価値を安定させることで、越前は商業の中心地となる。これは黒川家の利益のみならず、織田家にとっても大きな利益となるのだ」
________________________________________
① 道路と関所の改革
「第一に、交易路の安全確保だ。越前と京・堺・敦賀港を結ぶ街道を整備し、治安維持のために黒川家独自の護衛隊を設ける。また、織田家の方針に従い、関所の数を最小限にして商人の移動を容易にする」
藤堂宗春が眉をひそめる。
「しかし、殿、それでは通行税の収入が減るのでは?」
「逆だ。関所を減らせば商人たちは越前を通りやすくなり、交易量が増える。その結果、港や市での税収が増えるんだ。短期的な利益ではなく、長期的な繁栄を目指すべきだ」
藤堂はしばらく考え込み、やがて納得したように頷いた。
「……確かに、長い目で見れば理に適っていますな」
________________________________________
② 商人保護と新たな制度の確立
「次に、商人たちが安心して商売できる環境を作る。これは織田信長公の方針に習い、『楽市楽座』を徹底する。さらに、商人組合を設立し、黒川家の庇護のもとで自治を認める。ただし、一定の税を納めさせ、商業税の制度を新たに設ける」
瀬戸忠勝が笑みを浮かべる。
「なるほど……単なる商業自由化ではなく、商人たちにメリットを与えながらも、黒川家としての管理を強めるわけですな。堺や博多の商人たちも、安定した取引ができると分かれば、ここに投資するでしょう」
「その通りだ。商人たちにとって最大の敵は『予測できない危険』だ。戦乱の影響を最小限に抑えた地域なら、彼らは積極的に商いを行うようになる」
________________________________________
③ 寺社勢力との調整と金融政策
「そして、一向宗や寺院勢力との関係を整理する。すでに永泉とは交渉を進めているが、宗教勢力を政治から切り離し、寺院を商業と金融の拠点に変える。寺は土地と人を持ち、信用も厚い。この信用を活用し、商人や農民が金を借りやすい体制を作る」
「つまり、寺院を利用した新たな金貸しの仕組みというわけですな?」
「そうだ。現状では金貸し業は寺院や富裕な商人が独占しているが、それを制度として整え、民衆に開放する。これにより、商業だけでなく農業や手工業の発展にもつながる」
________________________________________
黒川家の「争いなき繁栄」の実現
「こうして、越前を『争いのない商業国家』とすることで、俺たちは信長公の目に止まるだけでなく、他の大名にも影響を与えることができる。そして、最も重要なのは『戦わずして勝つ』ということだ」
斎藤友継が感慨深げに頷く。
「戦国の世において、戦わずして勢力を拡大するとは……まさに殿の考えは異端にして革新。だが、これが実現すれば、黒川家は他の大名とは異なる新たな時代を切り開くことになりますな」
「そのためにも、俺たちはまず越前を安定させ、商業の発展を実証する。これが成功すれば、織田家にとって俺の存在はさらに重要になる」
俺は深く息を吸い込んだ。
「俺たちはただの地方領主ではない。黒川家が、戦国の世における『新たな国の形』を示す。そのために、ここから本格的に動き出すぞ!」
家臣たちは一斉に頷き、新たな時代の幕開けを感じた。
こうして、黒川家の商業国家としての確立が、本格的に始まった。




