第一章 第九話:「帰還と決意」
岐阜城での謁見を終え、俺は無事に信長の許可を得て、越前へ戻ることとなった。
道中、馬上から遠くの山々を眺める。秋も深まり、木々は赤や黄色に色づいていた。冷え込む風が肌を刺すが、俺の心は驚くほど落ち着いていた。
信長は俺の商業国家構想を受け入れた。しかし、それは単なる許可ではなく、同時に織田家の監視下に置かれることを意味している。つまり、俺の策は成ったが、ここからが本当の戦いの始まりだ。
「殿、ご無事で何よりです」
隣を並走する斎藤友継が口を開いた。
「信長公は、殿のお考えを快く受け入れられたのですか?」
「受け入れた、と言えばそうだ。しかし、これは織田家の支配を強化するためでもある。俺の提案が気に入らなくなれば、いつでも潰しにかかるだろう」
「それは……つまり、殿はこれから慎重に動かねばならぬということですね」
「その通りだ。俺たちは信長の器の中で商業を発展させながらも、同時に黒川家としての立場を確立せねばならない」
友継は唸りながら頷いた。
「まさに、これからが本当の勝負ですね」
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帰還、家族との再会
数日後、俺たちはついに越前の城へ戻った。
城門が見えると、そこには家臣たち、そして俺の家族が待っていた。
「殿! お帰りなさいませ!」
家臣たちが深々と頭を下げる。その中に、父・重信、母・雅、そして妻の篠の姿があった。
「真秀……無事で帰ってきたな」
父が静かに言う。その声には安堵の色があった。
「はい。信長公との謁見を終え、黒川家の商業国家構想は正式に認められました」
「……よくやった」
厳格な父がそう言葉を紡ぐと、母が微笑みながら寄ってきた。
「お前は無事に戻ってくると信じておりました。でも、戦国の世、何があるかわかりません。どうか、これからも油断なさらぬように」
「母上、ご心配をおかけしました」
そして、篠が俺の目の前に立った。
「……ご無事で何よりです、殿」
篠は、出立の日とは違い、どこかほっとしたような表情をしていた。俺はその肩に軽く手を置く。
「心配をかけたな。俺は戻った。だが、これからが本当の始まりだ」
篠は小さく頷いた。
「はい。殿のお支えとなる覚悟はできております」
俺はその言葉を胸に刻んだ。
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決意、新たな時代へ
夜になり、俺は城の天守から夜空を見上げていた。
これから俺たちは、本格的に越前を商業国家へと変えていく。信長の承認を得たことで、越前の立場は強化されたが、それは同時に、失敗すればすべてを失う可能性もあるということ。
「これからが、黒川家の本当の戦いだ……」
戦国の世に、新たな時代を築く。
そのために、俺は歩みを止めない。
第一章 完




