Tの世界
もう隣の家が消えた。
今回は早かったなー。
この家での暮らしもそろそろ終わりか。
そう思い、家族でケーキを食べて思い出を語り合った。
みんなで眠りにつこうとしたその時、上からものすごい音に襲われて、僕らの家の屋根が無くなった。
そして、ササっと息子と娘が上空へ消えていった。
残った妻と私。
「今までありがとう。またいつか。」
そんな言葉を交わした途端、私たちは一緒に上空へ消えた。
−次−
今回は移動式のお家だ。
前世は確か、固定式の家で急に上空に連れて行かれた。
今回は移動する振動を感じる。
パラパラと雨が降っている音も聞こえる。
今回は、会えないのかな。
バシャン!
突然家は落ち、私ごと水没した。
−次−
今回も固定式の家だった。
そして、あの時の妻もいた。
「久しぶり。」
「そう?あっという間に感じたよ。」
「何にせよ、また会えてよかった。」
そう言って私たちは抱き合った。
そうしているうちに、屋根が上空へ消えた。
「今回も早かったね。」
「なぁに、また会えるさ。」
そして私たちは抱き合ったまま、上空へ消えた。
私たちは、神様の鼻水を吸い取り、一緒にぐるぐるまきにされて神様のゴミ箱に捨てられた。