真夜中の会話
車も通らないような夜中、道に立っている私は、隣で生真面目に仕事をしている彼に話しかけた。
「誘導なんて、人が近くに来てからで良いじゃないか。誰が見ているわけでもないんだから、もっと肩の力を抜いて、ノンビリやろうよ」
「そうは言うけど、これが僕の仕事なんだから。人が通る、通らないは関係ないよ。それに君だって真面目に仕事をしている」
彼の言うように私も確かに仕事をしている。だが、私は彼ほど真面目にやっているわけではない。灯りだって出していないのだ。
そんな風に反論しようとしていると、自転車に乗った若者が二人、走って来た。彼らは私たちを見て言った。
「お、あそこの信号のところ、自販機あるじゃん」
「ちょうどいいしジュースでも飲もうぜ」
そんな言葉を聞いた私は仕方なく灯りを点けると、商品を照らした。そんな私を見下ろしていた彼は、やっぱり真面目だ、と笑いながら緑の灯りを点滅させた。
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