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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第三章:蠢動する人成らざる者
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金剛の殻を破れ

どうも皆さんこんにちは、泥陀羅没地でございます。


此処最近投稿時間が遅くなって申し訳無い…言い訳としては諸事情で忙しくですね…はい。


しかし、毎日投稿を止めるつもりは無いので其処の所は御安心を…はい、頑張ります。


これからも私の三文小説を楽しんで頂けたなら幸いです。

――カッカッカッ――


「チィッ…何だあの〝液体〟は…!?」


一人の生徒が忌々しげにそう吐き捨てる…木霊する声はジワリと広がり、その疑問を周囲の仲間達の耳へと伝達する…そして図らずもソレは、彼等全員の〝代弁〟と言う形で彼等の敵対者足るその〝女性の耳〟に届く。


――ゴポッ…ゴポゴポッ――


「ウフフフッ、フフフフフッ♪…良いわねぇ、可愛いわねぇ…怯えちゃって…でも戦いを止めない姿勢も健気で〝良い〟わ♪」


その女性はそう嫋やかに微笑みながら、その周囲に浮かぶ不気味な銀色の〝粘液〟を操り、その笑みの裏に〝嗜虐性〟を帯びた邪気を醸し出す。


「さぁ、掛かってきなさい〝少年少女(ボーイ&ガール)〟達!…お姉さんがドロドロのグチョグチョに弄り回して上げるから…!」

「「「「別の意味で戦いたく無い…!」」」」


――パキンッ――


「――……〝単一〟の属性では無い…無数の〝属性〟…いや、全属性を弾いたと言う事は全属性の混合魔術…出力から見て、〝五元素適正者(ノストラム・メイガス)〟か」

「――あら、正解よ♪…って言ってもコレを見せると大体の人は分かるわよ?」


四人が二つの意味で萎縮する中、ただ一人、淡々と相手に対する知見を深める様に魔術を行使する青年…菅野月人は問い掛ける様に敵対者で有る彼女へ問い、その問いに彼女は答える。


――ザッ――


「…此処で重要なのは〝適正の判別〟だ…貴方は〝五元素〟を同等レベルで扱える稀有な特性を持っている…だが五元素の内どれか一つが特出しているのでは無い…コレは重要な〝情報(ピース)〟だ」

「…ふぅん?……でもそれって私が嘘を吐いていたらどうなるの?」

「〝問題無い〟…2手3手と策を用意するのが〝魔術師〟だ」


――パチンッ――


その瞬間、彼女の周囲の地面が爆ぜ土埃が彼女の周囲を包む…しかし、その爆発が彼女の身を危機に晒す事は無い…それは単に、彼女の操る銀色の粘液が彼女を庇護しているから…だけでは無く…単純に彼女を直接害する様な〝爆発〟ではなかったからだ。


「〝撹乱〟用の〝罠魔術〟…器用ね坊やッ……でも――」

(残念だけど人間には大なり小なり魔力が有る…〝魔力反応〟さえ識別できればどうってことはないのよ…!)

「〝丸見え〟ね!」


土埃の中で、銀色の液体を操り触手の様に無数に生え広がる魔術がその矛先を土埃の先に映る反応へ向けて伸びる。


(魔力反応に動きはない…このまま勝利は頂きね…フフフッ♪)


彼女はそう言い妖艶な肢体を軽く抱き、一人怪し気な妄想に夢中に成る…そして間もなく、その銀色は恐るべき速度で以て彼女の知覚する魔力の反応へその銀の触手を振り抜いた…。


――ブォンッ――



その光景は…彼女にとって最も衝撃的な〝敗北〟として、その脳裏に、人生の記録に刻み付けられるだろう。


――パキンッ――


「―――ヘッ?」


彼女の…〝虹銀の魔術師〟…〝清川可峰(きよかわかみね)〟の目に映る光景は、それ程までに彼女の予想を上回る〝光景〟を形作っていた。


――パキンッ――


「〝良くやった皆〟…コレで〝勝てる〟」


其処には、銀色の触手に分断された〝菅野月人〟が有り…その身体が構成する内部成分は、生物には見られない、不自然な〝魔力の散逸〟が見られた。


――ガシャァンッ――


そして、分かたれた一人の青年の身体はまるで…硝子細工を落としたかの様な甲高い破壊音と共に、その形を魔力の残滓として霧散させ…その姿を完全に掻き消す。


「な…え?…嘘――ッ!?」


ソレはきっと…青年が分断された事への驚きだったろうか…こんな筈ではなかったのだから当然だ、ただ捕縛し、拘束し、〝無力化〟するつもりだっただけなのに…と、彼女は一瞬思考し、そして直ぐにソレの違和感を探り当て、平静を保つ……が。


――ガチャンッ――


「〝静音駆動〟…〝解除〟…〝破却式〟――〝反証〟…〝反証指定〟――〝|五元複合術式・虹銀(アマルガム)〟」

「ッ――嘘ォッ!?」


その行動は既に…〝遅過ぎた〟…彼女が鉄の衝突音にその顔を向けた…その場所に立っていたのは先程自らが〝殺めたと思っていた青年〟であり、その手には黒鉄の〝銃〟が握られ…その銃口を此方へと向けていたのだから。


「〝反証完了〟…〝全員弾幕展開〟ッ…一気に畳み掛けろ!」

「「「「了解!」」」」


その言の葉が紡ぎ終えてから寸分の狂い無く…銃は撃鉄を鳴らし、魔力の爆発が銃口から吹き出し…真っ白い弾丸状の〝魔術〟が、虹色を帯びた銀の粘液に触れる…その瞬間。


――ビキッ――


「ッ――制御が…!?」


その虹色の銀は、先程までの天を漂う様な軽やかさを一点、大地に縛られた〝水〟の様に、重力に従い落ちて行く。


「――流石、〝五元素適正者〟…並以上の魔力量だ…僕の魔力総量じゃ、〝操作を妨害〟する程度しか出来ない…だが、今はそれでいい」

「ッ……あ」


ソレに気を取られた刹那…可峰の視界一杯に広がる、無数の魔術の弾幕を見て彼女は悟る。


「やだ…私負けちゃう?」


その言葉は、魔術の奔流に飲まれ聞こえる事は無かったが…ただ一つ、その光景を〝見ていた者達〟が言える事は…。


『「最早ただの魔術師見習いとは言えないな」』


と言う事で有る……。



――カッカッカッカッ――


「――フフフッ、月人君のチームが最初の〝攻略者〟か♪…うん予想外では無いねぇ♪」

『……』


其処は暗い何処かの〝道〟…白衣が影に馴染まない仄暗い道の中を迷わない足取りで進みながら、その青年姿の〝何者か〟は、網膜に投影された己の〝複製体〟の報告を聞き薄ら笑いを浮かべる。


『……何を考えているのですか、〝全知〟』

「ん?……いやいや、君の記憶と頭脳は紛れもない私のものだろう?…ならば私の考えなど検討が着くはずじゃないか」

『……貴方は我々を〝差異の有る別人〟として〝設計〟した筈、ならば我々と貴方とでの思考ルーチンの違いが有る事はご存知でしょう?』

「その上でだよ、その上で…君は私の思考を知っている、君の思考を知らない私よりもね…ならば、私の考える〝事〟は容易に想像出来る筈だろう?」

『……まさか』

「――安心したまえよ、2度同じ過ちは繰り返さないさ…その為の〝一ヶ月〟だ…完璧は存在しないがそれでも対応の択は無数に有る…加えて今はその最終段階だ…君が思うような結果には成らないと〝宣言〟しよう…君の望む〝死人無し〟と言う極めて分かりやすい要求は余程の事が無い限り叶うだろう」

『……それでも、留意する様に…〝全知〟…〝99%勝てる〟と言う事は〝1%〟負けると言う事です…その場合、私は貴方を〝赦さない〟』

「……うん、分かっているよ〝理知〟…私の〝善性〟…〝理解ってる〟とも」


その人物は、網膜に映る女性へ、その表情を崩すこと無くそう言うと通信を切り、その道を進む。


「〝心異体〟の自我形成も、順調だねぇ…結構な事だ♪」


コレで〝一安心〟……かな?…いや。


「まだ目前の〝厄介〟が残ってる…油断は無しだね」

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