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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第三章:蠢動する人成らざる者
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妖魔を狩るとは

――ザッザッザッザッ――


教材用に拵えた妖魔が何故〝蟲型〟かのか…もっと言えば〝ゴキブリ〟なのか。


――ザッザッザッ――



数の多さ、個の質…無論それも計算の内だ…しかし、真に私が求めた要素は別で有り、そしてソレはその要素故にこの〝惨状〟を創り上げる。


「――フフフッ…良いねぇ…計画通りに〝戦線が乱れてくれた〟…クックククッ♪」

(((((無茶苦茶悪い顔してる)))))


――ザッザッザッ――


「イヤァァァッ!?!?!?」

「待てお前等、ただの虫だろうが!?」

「その虫が無理なんだよ気持ち悪い!」


ソレが〝蟲〟に対する〝生理的嫌悪〟…妖魔との死線を潜った者ならばいざ知らず、未だ妖魔と矛を交えていない魔術師には効くだろう。


――ブブブブブブブッ――


「ギャアァァァッ!?飛べんのかよこいつ等ァ!?」

「良いから〝迎撃〟しろっての!」


――ガチィィンッ――


人と妖魔の入り乱れる〝激戦〟を…結界の外側から覗き見る…やはり、少しはアレと戦う意志を見せる者達は居るが、大多数はそうではないらしい。


――ズパァンッ――


「グアァァァッ!?!?!?」


――ズルッ…ズルッ…――


「イヤァァァッ!?…助けて、助けてェェッ!!!」


――ブンッ、ブンブンブンッ――


〝装具〟が致命傷と判断した者、戦闘継続が不可能と判断された者達が結界の外に弾き出され、戦闘記録を見た教師各位に反省会及び説教に連れて行かれる。


「いやはや、正しく此処は〝阿鼻地獄〟だねぇ…」


悲鳴に絶叫が耳に絶え間無く響く…装具が受け持つのはダメージだけだからねぇ…そりゃあ痛いとも…。


「孝宏先生…流石にもう少し加減した方が…」

「残念ながら彼等が〝最弱のグループ〟何だよねぇ…ソレに訓練前に渡しておいた〝訓練用装具〟のお陰で死にはしないし安全性は保証されているだろう?…何より彼等には〝知ってもらわねば〟ならないのだよ」

「それは…何を……」

「〝妖魔と戦う事〟…その意味をね」


私は他クラスの担任補助君達にそう言い、生徒達に目を向ける。


――ガチィィンッ!――


「ッ…硬ッ…!」

「魔術も効きが悪いッ、あの人どんな改造したんだ…!?」


其処には数を減らした生徒達が一丸と成り、溢れ出して止まらない黒い蟲の塊へその力を振るっていた。


「簡単じゃない、楽勝じゃない、アニメやニュース、創作で語られる様なモノは飽く迄も創作だ…〝犠牲者ゼロ〟何て事は奇跡でも無い限り起こらない…相手は妖魔だ、姿形は我々の知るソレと酷似していても、その〝根本〟は違う…微妙な差異、明確な差異…何方の変化もその認識を誤れば〝惨状〟は容易に起こる…こう言う風にね」


戦いとは〝昏く、恐ろしい〟物だ、〝死と隣り合わせ〟で有る事を忘れるな…そして――。


――ズズズッ――


「タァァスケテェェッ…!」

「ッ!?――嘘だろオイッ…!」


決して〝気を緩ませるな〟…例えソレが真に生還を果たした仲間で有ろうと、確証が持てるまで、それは〝危険性〟を帯びている。


――ズパァンッ――


「グゲヘェッ!?」

「――先ずは手始めに〝全滅〟したまえよ、諸君」



●○●○●○


「――何じゃあ…やっぱ〝罠〟じゃなかか…」


眼の前で、見知った顔の首が飛ぶ…その光景に耐えられる者がどれだけ居るだろうか?…そして。


――ゾゾゾゾゾゾッ――


「ッ邪魔ぞ虫共ォ!」

「ヒッ…!?」


そんな知り合いの姿が、無数の虫の集合体で有ったならば…それに耐えられる者がどれだけに減るか?…。


――ブォンッ――


「ハンッ、この程度で怖気るか…シャンとせぇ!…まだ終わっちょらんぞ!」


そう言い、一人の青年、伊方武はその手に大太刀を構えて戦場を駆ける。


(不味ったのう…奴共、無尽に湧いちょるのぅ…この兵力差じゃ、押し切られて終いぞ…ならば―)

「――〝陣〟を敷けェッ、魔術師は壁でも何でも生やして進路を狭めぇ!」

「戦える奴は前を散らせ!…〝籠城〟が出来るまで持ち堪えろ!」

「ムッ!?」


――ドッ――


「ナイス〝指示〟だぜ伊方!」

「応、〝氷太郎〟か!…貴さん!」

「「一丁、一暴れするか!」」


兵力差は絶望的、戦力差は明白、指揮も何もかもが不利の中で、黒い蟲の波を二つの〝戦士〟が押し通る。


「狙うは〝一点〟!」

「奴共が出てきよるあの〝洞穴〟じゃ!」


――ビキビキビキッ――

――ザンッ、ザザザンッ――


その二人はこのグラウンドに形成された、〝不自然な洞窟〟に突き進まんとその脚を前へ踏む。


出来るだけ多く、出来るだけ早く…周囲の虫達を轢殺しながら…そして、その洞穴の中に、脚を踏み入れた…その瞬間。


――ゾワッ――


「「ッ!?」」


先程まで己等等欠片も見向きしていなかった〝ゴキブリ〟共が、その身に明確な〝敵意〟を込めて二人へ群がってゆく。


「ッ…縄張りに入ると〝ブチ切れる〟のか…!」

「しかし…参ったのう……アリャァ…!」


二人は止め処なく溢れ迫る虫達に押し潰されながら…その視線の先を見る…其処には――。


――ゴポッ…ゴポポッ…――

――ボトッ、ボトボトッ――


「『Gigigigi…』」


洞穴の最奥で…自ら食われる〝ゴキブリ〟と…ゴキブリを食らったゴキブリがその身体を丸い水風船の様な何かへと変化し…その中で8匹程の〝黒い何か〟を育てている…不気味極まる光景が広がっていた……。


――ブォンッ――


次に目覚めると、其処は結界の外側…その眼の前には。


「――良い判断だね〝伊方武〟君、君の指示のお陰で彼等は敗北を先延ばしに出来た」

「氷太郎君も素晴らしい…生還は不可能と悟り、少数精鋭で情報を集める為に突貫すると言う判断は間違いでは無い…本当は明日辺りに判明するかと思っていたが…良い意味合いで〝期待を裏切られた〟よ♪」


そう言い、二人へ微笑みかける白衣姿の青年が此方を見ていた…。


「保って後十分かな?……兎も角、コレで一段落だね…一段落したら休憩を1時間設けるので君達は今の内に情報の整理や第三者からの視点を聞いてくると良い」

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