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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第一章:謎だらけの教職者
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魔術とは学問で在り、学問は神をも殺す

「〝魔術とは何か〟……私が結論付けるのはズバリ、〝学問〟で有る」

「魔術には血縁が大きく左右する……それは間違いでは無い、優れた魔術師の家系には優れた魔術の素質を持つ者が生まれやすい」


おや、今幾人かが肩を落としたね、フフフン、安心したまえよ。


「とは言え、〝素質の有る者が生まれやすい〟だけだ…天賦の才だとか、莫大な魔力量が有ったとして、それを完璧に扱えなければ意味が無い、そして魔力量が少ないからと〝魔術師として失格〟だと扱き下ろすのは愚かの極みと言える」


先程の現象を体験した名家の二人が特に決まり悪そうにする。


「魔術において重要なのは、その〝魔術〟に対する〝知識〟と〝探究心〟だ……〝例えば〟」


――パチンッ――

――ゴォォォッ――


『ッ!?』

「この様に……〝コレ〟は単純な〝炎〟の術式の、その効果だけを組み込んだ物だ、見ての通り、ただの炎……コレを例えば、〝渦巻く〟様に……或いは〝圧縮〟し、威力を底上げする…なんて芸当も出来る、後は〝纏う〟事も出来るし…コレは少し難しいが――」


――ブチッ――


「ッ何してるんですか!?」

「そう騒がない騒がない……ほら、元通り…」

「は、え?……嘘」

「コレは簡単な話し、炎に治癒能力を足したんだ……より簡単に言えば、〝己の肉体を炎の一部〟として扱う様に術式を組み込み、欠損した部位を炎で再構築した……勿論炎は私の一部だからと言う本来なら有り得ない理論だから、魔力消費も馬鹿だ…逆に、何故此処がこうなって、結果こうなる……と言う理論が術式に組み込めたならその術理の魔力消費は驚く程少くなる……そして、私は君達に特にお勧めな魔術が有る」


そう言い皆に見える様、私は魔術を構築する……ソレを見た巌根君が眉を顰めて訝しげに呟く。


「〝魔弾〟?」

「そう、〝魔弾〟だ……不思議に思ったかい?…しかし私が思うにこれ程応用が効き、且つ完成度の高い魔術は珍しい」

「理由としては、先ず術理の効果……コレを細分化すると〝魔力〟…〝固める〟…〝飛ばす〟…と言う非常にシンプルな術式と成っている、コレだけの術式故に構築速度は恐らく全魔術の内でトップクラスだ、そして次に拡張性…コレは間違い無くトップと言えるよ、なんせこんな風に〝弾丸〟や〝複製〟…〝弾幕〟…と、容易に術を拡げられる、相手にする上で相手の術が幅広いとそれだけで厄介何だ」


……と、少々熱くなってしまったね。


「まぁ、何が言いたいかと言うと、魔術とは理解さえ出来れば魔力量何て関係無い、〝知識〟が物を言う〝学問〟だと言いたいんだ」


……さて、それじゃあ本日の目玉だね。


「さぁ、と言う訳で魔術に着いてより深く知ろうじゃないか……君達には〝魔術文字〟の読み解き方を教えよう、無論〝妖術〟版も有るから安心したまえ!」


今日一日でしっかりと脳に刻み付けてやろう、フフフフフ……!



●○●○●○



「――フゥ…疲れたねぇ〜」


いやぁ、仕事終わりの茶は身体に染み渡るねぇ〜…極楽極楽…。


「所で、何故字波君が此処に?…仕事はどうしたのかな?」

「そんなもの既に終わらせてるわよ……それで、どうだった?…生徒達の方は?」

「うん、悪く無いね…資質的にも能力的にも優れた子達だと思うよ……しかし、流石に復職したての私をあのクラスに割り当てたのはどうなのさ?」

「500年只管魔術を研究し続けたんでしょう?…なら私よりもあの子達の指導に向いていると思ったのだけれど」

「500年の引きこもり魔術オタクの間違いだよ」

「あ、それはそうと後で私の予定に付き合ってくれないかしら?」

「えぇ〜…私も予定と言う物が有――」

「報酬に私の血液を調べても良いわよ?」

「それで、予定とは?」

「相変わらず欲望に正直ね……予定は今夜の〝会議〟よ」

「……ほう、そこはかとない嫌な気配がするね、この話は無かった事に――」


――キィィンッ――


「oh……欲望に正直過ぎると良くないね」

「〝契約〟は果たしてもらうわよ?」

「はいはい、分かったよ……っと失礼…少しお手洗いに行かせて貰うよ」

「えぇ、行ってらっしゃい」




○●○●○●


――ドクンッ――


それは人知れず胎動する…〝繭〟だった。


暗い暗い、下水の奥底で…汎ゆる汚泥を喰らい、ただ胎動していた。


それは憎んでいた。


何故憎んでいたのかはソレすらも分からない、ただ憎んでいた、人を。


汚泥を喰らい、下水に溜まった負の魔力を喰らい、それは大きく成長した……そして今この瞬間、胎動の微睡みから目覚め、新たに生まれ落ちんとしていた。


――ドクンッ――



その一際大きな胎動(魔力の鼓動)と共に……。


しかし、ソレは。


――ズガッ――


「いやぁ、臭うねェ…吐きそうだ」


その飄々とした男の到来によって阻まれた。


「コレは…ふむ、成る程、周囲の魔力を食らって成長していた訳か……その図体とその魔力で良く誰にも見つからなかったね……ま、良いや」


薄れ行く意識の中で、それはその声を聞き意識を失った。


「面白いサンプルだね、回収しておこう……多分あの魔力放出で他の魔術師にもバレてそうだねぇ、魔力の痕跡だけ消しておこう」


独り言を呟き、その男は去る。



そしてその数分後、魔力を感知した〝魔術協会〟より派遣された、魔術師達が目にしたのは。


「何だ……死んでいる?」


巨大な体に穴を開け、息絶えた〝カタツムリ〟の様な魔物の骸だった。


「魔力の残滓を感じない……どうなって―」

「まさか、〝正体不明〟か!?」


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