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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第三章:蠢動する人成らざる者
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陽射しと乾きの季節

本日の二本目。


もしかすれば3本目が有る…かも知れないです、予定は未定です、はい。

――ザリッ――


「シェェッ!!!」


――ギリィンッ――


鋭く重い〝一撃〟が、隔てられた結界を〝打つ〟


「〝白霜の矢〟…!」


――バシュンッ――


その揺らぎに白氷の矢が結界を砕く…まぁ。


「ッ――何枚有るんだよ…!?」

「〝五枚〟は削ったよ!?」


その程度はさして気にする程ではない。


「――残念ながらその出力では〝貫けないよ〟…!」


――カッ――


「――少なくとも〝今〟は、間違いなく〝無理〟だ」


高々〝五枚〟……この程度削れた所で爪の先を切る様な物だ…。


「――〝太陽の統べる地ペル・アア・デシュ・レト〟…一足早く、夏を感じようか諸君!」


――カッ――


私はそう言い、天に巨大な魔術陣を〝創る〟…ソレに対して私を囲む5人の精鋭が顔を引き攣らせる…フフフッ、駄目だねぇ…こう若々しい青年達が驚いていると、老人の悪辣な嗜虐心が刺激される…。


「――安心し給え…この術式はそんな大層な代物じゃないよ…そもそも、私個人の魔力量では〝戦略兵器〟と称される〝大規模魔術〟は扱えない…そんな魔力は持ち合わせていないのだよ…うん、其処は少し惜しい」


――カァッ――


魔術が天に張り付き、その紋様を濃く輝かせる……その様相に〝月人君〟は破壊工作に打って出る……だが。


――スカッ――


「ッ……攻撃が通らない…!?」


その魔術は天に浮かぶ魔術陣を華麗に通り抜ける、何の抵抗も無く彼方へ消える…驚くのも無理は無いさ。


「〝その通り(イグザクトリー)〟…この魔術は言ってしまえば〝単純〟で〝無価値〟何だ…コレを展開する意味合いは殆ど無い…周囲の魔力を貪り食い、ただ〝陽射し〟を強く強くするだけ…君達からすればただ蒸し暑いだけ、防郭魔術を使えば害何て殆ど無い…ただ〝陽射し〟を強くするだけ…只管に、只管に…〝渇かすんだ〟」


ただエリアを〝渇かす〟だけ…〝何の生命も育たない不毛の砂漠〟に変えるだけ…陽射しを増幅するだけだ。


――サッ――


「――そして、そんな〝コレだけ〟の術も使い様によっては〝脅威〟と成る物だ……〝王護と砂塵の墓守(カムシーン・アヌビス)〟!」


私の言葉に大地の砂は隆起し、その中から無数の〝獣頭の怪物〟達が5人へ迫る。


「〝ゴーレム〟の一種だッ、何処かに必ず〝核〟が有る!」

「ッ――〝業炎の狐火〟…私が一息に〝焼き尽くす〟!」


その砂塵の兵達を一瞬で焼き尽くす焔が私と生徒達を覆い隠す…〝殲滅〟と〝遮断〟…其処で活きてくる……。



――ズォッ――


あの〝魔術小僧〟の…〝厄介な合理性〟が。


「……〝破却式(アンチ・マジック)〟……〝狙撃手(スナイプ)〟」

「――〝素晴らしい〟…〝狡猾〟さだ…」


強力な魔力を帯びた炎の〝壁〟…ソレで探知を妨害し、視覚外から高速で迫る〝魔弾〟……ソレもただの魔弾じゃない。


――パキンッ――

――パキンパキンッ――


〝術式〟そのものに衝撃を与える〝術式〟…〝対魔術〟に特化した〝魔術師〟専用の〝切り札〟…。


流石に――。


「――〝御褒美〟をやろうとは言ったが…〝遠慮が無い〟なァ…君等は」

「ッ先生!?」

「ちょっと月人君やり過ぎでしょ!?――い、今直ぐ医務室に――」


慌てる二人に対し、三人は〝心臓に穴を開けた私〟を見て黙り込む…フフフッ。


「〝熱砂の幻(サラブ・デシュ・レト)〟――いやはや、此方側が教導するだけだと思っていた…上手く行けば試作の魔術の実験に利用しようかと思っていたがどうして――」

『ッ!?』


――ヒュンッ――


「〝太陽無き砂の刺客(アペプ・ハシシーン)〟……中々どうして〝学びの多い〟…」


私は背後からそう言い、彼等彼女等の首筋に〝黒い短刀の影〟を当てる…この距離ならば彼女等が術を行使するよりも早く首を掻き切れるだろう…まぁ、コレは飽く迄も〝勝負〟…そんな事はしないがね。


――パリンッ――


「今の魔術は何だ〝先生〟?」

「彼処までの術なら相当な魔力消費の筈です」

「――〝砂〟の操作、〝零〟からでは無く〝一〟からの魔術行使ですね?」


〝模擬試合〟終了と同時に、三人が私に詰め寄り問いを投げ掛ける……もう少し涼しい風に吹かれていたかったが仕方無い。


「今の〝試作段階〟だった魔術でね…簡単に言ってしまえば〝砂と陽光〟を利用した…名付けるならば〝砂漠魔術〟だよ…条件として水分を含まない〝砂〟が必要な魔術で扱い所の難しい代物だが、嵌まれば〝無双の一品〟だ…何せこの術理の弱点で有る〝水系統〟があの条件下では行使できない…作った端から熱で蒸発する…だから対処としては〝同じ術式〟を使うか――」


――キュィンッ――


「ッ――僕の」

「――月人君が〝考案した〟…〝破却式〟を用いた魔術破壊が有効打に成るだろう…無論、そうでなくとも破れる場合も有るがね」


私はそう言い、そのまま皆と共に私の研究室で一休みをしないかと提案していたその時。


――ドドドドドドッ――


『逃がすなー!!!!』


前方から土煙を上げて迫る〝何か〟を見て顔を引き攣らせる…。


「是非!」

「今の術式を!」

「見せて下さい!」

「「「「「見せろ!」」」」」


其処には知識を貪らんとする〝(魔術師)〟の群れが〝()〟を求めて迫っているのが見えていた…。


「不味い不味い不味いッ…済まない皆、先に行っておいてくれ…!」


私は皆へそう言い、身を翻し其の場から走り去る…ちょっと待て何で魔術を――!?…。


「後で資料で渡すから散り給え!」

『〝生〟で見たい!』

「なら自作すれば良いだろう!?」

『後でする!』

 

そうして知に飢えた獣達と憐れな仔山羊と成った私の逃走劇が繰り広げられたのだった……日曜日に何でこんな事を…!…。



「……取り敢えず行こっか皆」

「そうですね、皆で反省会しましょう」


そして彼等の魔の手から逃れた生徒達は、二人の少女に先導されて学園に入っていくのだった…。


「あ、字波さん!」

「あら……さっき凄い音が聞こえたのだけど?」

「〝師匠が逃げてる〟だけですよ?」

「あぁ……そう言う……それじゃあ少しお茶会しましょう?…何をしていたのか聞かせて欲しいわ」


そして冷たい風が吹く〝楽園(オアシス)〟の中で、生徒と教師による穏やかな反省会が始まるのだった…。



――ミーンミンミンミンッ――


「グオォォォォッ暑い暑い、蒸し殺す気かね君達、蜜蜂かァ!?」


その階下では楽園とは真逆の地獄が繰り広げられていたが…ソレは彼女等にとっては関係の無い話で有る。

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