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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第三章:蠢動する人成らざる者
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日常の変化

どうも皆様こんにちは、泥陀羅没地でございます。


昨日は諸事情で投稿出来ず申し訳無い…今日2本投稿するから御容赦を。

――トンッ…トンッ…――


「〝魔弾の射手〟――ハァ…」

「あの…その…」


――トントン、トンッ――


「〝魔弾の射手〟――ハァァ」

「えっとぉ…」


――トントントンッ――


「〝魔弾の射手〟――ハァァァッ…!」

「ぅぅぅ……」


月満ち欠けた夜の街、何時も通りに変わらない妖魔退治に駆り出された私は、しかしそんな事などどうでも良く、ただ深い、深〜い〝溜息〟のみが心から湧き出す…。


〜〜〜〜〜〜〜


『――話は聞いたわよ、孝宏…!』

『ッ――!?…待ち給え字波君、〝交渉〟を――』

『――聞かないわ、職員に成るに差し当たり交わされた〝契約〟…貴方の記憶力なら忘れる訳ないわよね?』

『――コレには深い訳が『〝一ヶ月研究禁止〟』――なぁッ!?――待て待て待てッ、そんな殺生なッアァァァァァッ!?』

『契約を破れば〝半年〟に延びるわよ?』

『Noooooooo!?!?!?』


〜〜〜〜〜〜〜〜


「―――はぁ…仕方無い、コレも〝罰〟だ、受け入れるしか有るまい」


私はそう言い、手に刻まれた〝契約〟の証を忌々しく思いながら、順調に〝駆除〟を続ける……しかし。


「――所で〝夢宮香〟君」

「ッひゃい!?」

「……何をそんなに怖がるのだね…?」


私は今夜の相方である女性、〝夢宮香〟君へ疑問を共有しようと声を掛けると、何やら彼女は酷いオーバーリアクションで応える…何があったのかね?…。


「――まぁ良い……一つ聞きたい、君は恐らく〝今夜の妖魔出現数〟をデータに取っていると思うが間違いないかね?」

「は、はい!…私は余り戦闘で役に立てないので…こうした雑用で役に立とうと…」

「――成る程、ではそんな君は恐らく此処最近の妖魔のデータを取っていると考えて良いかね?」

「はい!……それが、何か?」


私の問い掛けに香君は小首を傾げて問い返す…しかし、私は彼女の問い掛けに軽く返して彼女の目を見る。


「……うむ、少し君に問いたい…恐らく君の情報が役に立つ…今夜の妖魔、〝ヤケに多い〟と思わないかい?」

「……少し、待って下さい」


私の問いに香君は目を閉じ記憶を掘り起こす様な動作をする。


「―――〝一ヶ月前の平均魔物出現数〟は凡そ〝50〟前後…コレは合計5グループの合計なので、1グループ辺り〝五匹〟前後…ですが…」

「我々だけで既に〝10匹〟だ…」

「……確かに、少し多い気がしますね」


私の言葉に、香君が少し怪しむような顔で何かを考える…私も同様に思案する。


(〝例〟の一件の影響か?…或いは何かの偶然か…だが、何れにせよ〝異常〟である事は確かだ)

「……八咫烏には調査の要請を出しておこう、〝偶然〟かも知れないが〝もしかすれば〟が有る…」

「そうですね…」

「私から八咫烏の連中に通達しておこう、君の情報を取り入れる様に伝えておく、暇さえあれば手を貸してやり給え」

「ッ!?…それは…」

「――この調査には間違いなく〝君の知識〟が必要不可欠だ、こればかりはどんな魔術師でも換えは効かない…君の今までが必要なんだ」


後ろ指を指されようと何かの役に立つかもしれないと、日夜日頃のデータを記録していた彼女だ、必ず彼女が必要に成るだろう。


「胸を張り給えよ香君、どんな物であれ何かを成そうと足掻く事は決して無意味では無いのだからね」

「ッ……はい!」

「さぁ、感極まるのは後回しだ…必要な情報を集めて回るとしよう」



○●○●○●


「――〝下僕との同調〟を切れ、探知されるぞ」


声が響く…鋭く美しい声が、そう言い其の場に居る〝無数の人影〟へそう告げる。


「――〝妬み蛇〟めを倒したのは、やはり〝アレ〟で間違いない様ですなぁ」

「ハァ?…あんな〝妖力〟の少ねえ奴があの蛇の呪詛防げるかよッ」

「――奴の〝妖力制御〟は他の術師とは雲泥の差じゃ、加えて妖力の使い方が極めて上手い…あの術理、恐らくは術師の内では基礎も基礎の術式じゃろう……ソレを用い、更には本来消耗の多い〝肉体強化〟を長時間維持し続けている…術師としての腕前も伺え知れよう」

「……ハッ、つっても所詮〝人間共〟の術師だろ、俺等の相手じゃねぇだろうよ!」

「……相変わらず仲良しやねぇお二人さんは」

「そうですね姉様…滑稽で面白いです」

「あぁ!?」


そんな人影共の騒ぎ立てを無視しながら、その声の主は己の傍らにいる人影に目を向ける。


「――どう見るよ〝茨木〟、〝アレ〟は…〝どっち側〟だ?」

「……恐らくは、〝此方側〟かと」


その言葉に声の主は満足そうに口を歪めると、座敷から立ち上がり赤色の長髪を靡かせ眼下の人影共に命令する。


「お前達、良く聞け」

『ッ!』

「あの〝小僧〟を〝仲間〟にする!…〝連れて来い〟!」


そんな直球な命令に、人影共は先程までの喧騒を潜ませその身から薄ら寒い〝妖力〟を迸らせ。


『応!』


と、応える


「――そんじゃあまずは〝宴〟だな!…好きに食って好きに飲もうじゃねぇか!」


それに満足気に頷くと、その声の主……赤髪の〝鬼〟はそう言い、飯を酒をドンドンと持ってこさせる……そして、始まる〝妖怪共の宴〟が。



●○●○●○


――ブルルッ――


「ッ……今、何か悪寒が…」


字波君の書類仕事に付き合わされながら、私はふと感じた嫌な気配…より言えば面倒事の気配に身体を震わせる。


「また何か仕出かしたの?」


そんな私の言葉に字波君が疑念の目を向ける…全く失礼な!…。


「失礼な、やらかしたとしても隠蔽は完璧だ、万に一つもバレる事はない!」


以前だって研究中に発生した副産物の脱走を公になる前に処理したからね、証拠隠滅能力を舐めないで欲しい!


「…そう、つまりバレたら不味い事をしてるのね?」

「……アッ」


……いやいや、そんなまさかはっはっはー……。


――スッ――


「ま、〝丸一日〟好きにして良いから勘弁してくれないかね?」

「……〝一週間〟ね」

「…良いだろうッ」


そうして何とか字波君からのお咎めをやり過ごし…私は何とか事無きを得たのだった。



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