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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第二章:幻獣駆けるは科学の世界
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氷霊の白狼・邂逅

――カンカンッ――


「やぁやぁ諸君、競技大会への出場、健闘、敗北、勝利おめでとう…さて、そんな君達にとって、今日の講義は有る種の〝魔術師の一要素〟と言えるかも知れないねぇ」


私は壇上で彼等へそう言い、黒板に今日の講義の内容を書き記す……ズバリは――。


『『『ッ……!』』』

「今日の講義は〝使い魔〟…使い魔と言う存在、区分、特性…そして、〝使い魔の使役〟を君達に学んで貰う…」


その言葉に、生徒諸君は高揚を抑えきれない様だ……平静を装う九音君も、氷太郎君も、やはり〝使い魔〟と言う存在には興味を隠せないらしい。


「――フフフッ、それでは諸君……〝訓練場〟へ移動しようか」


君達の〝パートナー〟と成る存在、ソレと契りを結ぶ前の事前知識をお教えしよう。





――カンッ――


「――以上が〝使い魔〟4種の特性だ」


場所は変わって訓練場、とは言っても先程言った通り、今回は何も血肉を鍛える為に来た訳では無い。


「――そして、〝使い魔〟の契約に関してだが、コレは4種全体、強弱問わずに存在する〝危険性〟を教えておこう……魔術師が〝使い魔〟と契約するに差し当たり…一定の割合で〝使い魔〟と〝魔術師〟は闘争を余儀なくされる…ソレは、〝魔術師と使い魔の相性〟故であったり、〝使い魔の性格〟故であったり…〝使い魔と魔術師の実力の均衡〟故であったり…〝使い魔〟として召喚される者達はその〝契約者〟と気質が似ている為に起こる一種の〝試練〟だ…勿論、穏やかな使い魔も存在するから一概には言えない……と、言った所で君達には早速使い魔の使役を始めてもらうのだが…君達が用いる手法は〝召喚術〟による使い魔の召喚だ」


私はそう言い…名前順に五人を選定し、広めに距離を取らせる。


「五人ずつ、順繰りに召喚してもらおう…仮に使い魔と戦闘に成ったとしても、それならば多少のリカバリーが効くからね……〝アル〟…結界術を張ってくれ」

「『獣使いの荒い奴め』」


――ブォンッ――


「「「「「さて、それじゃあ早速使い魔の召喚に必要な工程を踏もうか」」」」」

「〝分身〟?」

「「「「「いいや?…コレは飽く迄も幻影さ、此方の方が複数の場所で同じ説明が出来る……兎も角、始めて行こう」」」」」


私はそう言い、彼等五人に目を閉じるように言う…。




○●○●○●




「『先ず、目を閉じ力を抜いて…そう、そして…君達にはそれなりに難しい事を要求するよ……〝使い魔に求めては成らない〟…こんな者が欲しい、こんな奴が良い、コレは要らない、アレは要らないと〝求めては成らない〟…〝意識〟して、何かを求めては行けない』」


(求めない事……ね)


暗闇の中で、俺は声の通りに邪念を消す。


「『流石、武人気質の君には精神のコントロールはお手の物か…他の生徒達はまだ時間が掛かるだろう…此処は、一つ先に進めてしまおう♪』」


――トンッ――


その次の瞬間、己の額に…指を突かれる……すると、暗闇の中で〝術〟が浮かび上がってくる。


「『元来なら紙に記した術式に魔力を流す手法も有ったが…君達にはこの術式を自力で組み上げて貰う…相当に難しい術式だが、〝相当に難しい〟だけだ…一つ一つ、遅くともゆっくりと構築していけば簡単だ…焦っては行けない』」


――ジジジジジッ――


「『宜しい…では、次に〝詠唱〟を…さぁ、唱え給え……〝君の使い魔〟が、君が綴るべき〝言霊〟を教えてくれるだろう』」


――キィンッ――


脳髄に染み付いた〝魔術〟を構築し終え、俺の魔力がその魔術陣に流れて行く……ソレに伴い、俺とは別の魔力が、俺の魔力に干渉を始める。


『〝ッ―――〟』


恐らくは、〝コレ〟の事なのだろう…俺は依然暗闇の中で口を動かした……。


「『〝氷霊〟、〝霊界の白狼〟、〝咎人を狩る猟犬よ〟、〝我が声に応えよ〟――』」


――ズオォォッ――


その瞬間、俺の周囲を極寒の冷気が包み込んだ。



●○●○●○


――ピキピキピキッ――


「……随分な〝大物〟が釣れたらしいねぇ…」


――パキンッ――


蝕む〝氷霜〟が結果の内を包む…その異様は、目に見えて分かる程に…高々一分余りで、春夏の間に〝銀世界〟を生む…その〝獣〟と〝召喚者〟にそう言葉を吐く…その声は氷付き、彼らの耳に届くより早く氷像と成るが。


「〝白銀の霊狼よ〟…〝汝が名を此処に示せ〟」


そして、氷太郎君の言葉と同時に銀世界の中心に〝白銀の狼〟が現れる…。


「『〝我が名は〟――〝霊界の白狼(ゴースト・フェンリル)〟…〝氷界の支配者が一匹〟、〝ただ一匹の獣〟よ…!』」


その獣は美しい銀の〝体毛〟を靡かせ…通常の狼の3倍は大きくした様な巨躯を持ち…氷太郎君に対峙し、そう告げる。


「…霊界の支配者…ね……では、聞くが〝白狼〟…お前は俺の従僕と成るのか?」

「『その品定めよ…我とて〝霊界の支配者〟…そうやすやすと他者の従僕になぞ成るものか…主が我を呼び、我はソレに応え、しかし主の望みを拒絶した……であらば――』」


――ピキピキッ…ピキッ――


「〝何方が上か決めるしかねぇな〟!」

「『ククッ…上等!』」


そして、一匹と一人はトントン拍子で話を進め、互いにヤル気満々で対峙する…が、まぁうん。


「流石に死にそうに成ったら止めるよ氷太郎君?」

「………応、そんときゃ頼むぜセンセ」

「『クククッ…安心せよ、力量差で押し掛かりはせぬ…主に合わせてやる故、ソレに〝打ち勝て〟……行くぞ?』」


そして、次の瞬間。


――ガリィンッ――


「グゥッ!?」

「『クカッ♪…〝小手調べ〟は合格よ!』」


氷太郎君の槍に、白狼の爪が伸し掛かったのだった……しかし。


「寒ッ…こうなるなら本体で来なけりゃよかった!」


このままでは風邪を引いてしまう…実際この肉体が風邪を引くかと言われれば、恐らく掛かるか?…肉体構造は同じだしね!…じゃない。


「取り敢えずカマクラでも造って寒さを凌ごうか…!」


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