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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第二章:幻獣駆けるは科学の世界
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昇格と言う名の面倒事

どうも皆様泥陀羅没地でございます。


本日の投稿どうぞ…。

「――と、言う訳で今後例の〝禁薬〟騒動はこれ以上の世界的大流行を起こすこと無く収束に向かうだろう」


――カチャッ――


優雅なモーニング……と共に字波君へ軽い報告と世間話に更け入る…もうすっかり字波君の職務室で駄弁る事に慣れてしまった…あれもこれも、私の研究室と食堂が対角に位置しているせいだと、心奥に吐き出しながら、報告から派生した少々悪趣味な世間話に移る。


「所で字波君、禁薬に対する治療薬には、世界中の裕福層が金に糸目を付けず、積極的に投資している様だ……何故だと思う?」


私は敢えてその意味を字波君に問う…すると字波君は私を見詰めて軽く返す。


「資産家は何も道楽的な訳じゃない…利益を目敏く察知し、嗅ぎ付けて己の利益に成るように動かすものよ」

「〝半分は〟正解だ…だが、彼等がこうも活動的なのにはもう一つ〝理由〟が有る……〝彼等(資産家)の息子、娘等〟が…〝禁薬の服用者〟だからだよ♪」


金銭に善悪は無い、しかしこの手の〝価値有る者〟には総じて〝悪意〟が付き纏う、金を有するとはそれだけ世の中を好きに改変できるからね。


「金は多くの諍いを生む…陽の目を浴びてはならない唾棄すべき影の鼠が、陽の光から齎された威光を求めて擦り寄るようにと彼等の〝宝〟を蝕んだのだろうねぇ」

「朝食には重たい話題ね」

「ふむ……ではもう少し軽い物にするか……ニュースは見たかい?」


私は彼女の意向を汲んで話題を変える…朝起きて見たニュースの〝一報〟でも話すとしよう。


「えぇ、私達の学園のアレ――」

「いやいや、そうじゃないよ…〝君と私の熱愛だ〟〜…と、どうやら世間では少なくない反響を受けているらしい」

「ブッ!?――ッゴホッゴホッ…!?」


私の言葉に字波君は紅茶を喉につまらせて蒸せる…吐き出さなかったのは控えめに言っても素晴らしい忍耐力と理性だ。


「今朝も君の部屋に向かう前に自主練に励む生徒達から好奇の視線に晒されてしまったよ…何時の御時世も有名人のプライベートは格好の餌に成るらしい」

「ッ…貴方ねぇ…!」


私の誂いに顔を赤くしながら字波君は睨む…流石に誂いが過ぎたかな?…。


「まぁその件は放置しておく事だ、一々反応してしまえばそれこそメディアの思うツボと言う奴だ…なぁに、君も私もこの類の躱し方等良く知っていよう……む」


過ぎ行く時間を満喫する最中…ふと、此方へ近付いてくる〝魔力反応〟に思わずリアクションする。


「コレは……字波…〝理事長殿〟…御客人の様ですよ」

「ッ……この魔力は…でも……嗚呼、成る程」

「何か予定でも?」

「えぇ、昨日新しく出来た用事よ…説明して無かったわね…」


――コンコンッ――


「おはようさん、字波はん…入ってもええですかぁ?」


軽く叩かれる扉、その後に放たれる隠匿的な艶やかな声に字波君は気を落ち着かせて言葉を紡ぐ。


「えぇ、入って良いわよ…〝桜花〟」


と……その言葉に、扉の取っ手は捻られ、扉を隔てた先から花油の香りが漂ってくる。


――ガチャッ――


「そう、それじゃ失礼します……あら?…何や、孝宏はんも居はったの…ほなら話が早いわぁ…♪」


その人物は、一目見て分かる程に上等な代物を身に纏い、その靭やかで華奢な身体に美しい黒い長髪を揺らす…その口と細い指の先に紅い鮮やかな紅色を塗られた…〝花魁〟の様な美女。


――カツッ――


「――取り敢えず、座らせてもろてええどす?…此処まで歩いて来たさかい…疲れてもぉて」

「……構わないわ」

「おおきに♪」


その美女はそう言い、歩を進め…丁度その時。


――グラッ――


「キャッ…!」


躓いたのか、その身体を私の方へ倒れさせる…。


――ドサッ…――


「……大丈夫ですか?…〝冬超桜花〟様」

「フフッ、堪忍ぇ…疲れ過ぎて平らな道で転んでしもうて…ねぇ?」


その美女を軽く受け止め、私は怪我の有無を確認すると、〝妖魁〟は色気を帯びた瞳で私を見詰め、そう言う。


(非常に整った顔立ち、華奢だが細すぎず…且つ色気を孕んだその佇まい…成る程、その何恥じない妖艶さだ…そして、成る程…)

「おおきに…〝旦那はん〟♡」


彼女はそう言い、私の耳元で囁くようにそう〝囁く〟…その声は酷く誘惑的で、蠱惑的で、身を揺さぶるような〝美しい声〟…途端、彼女の姿に目が離せなくなる感覚…間違い無い。


(〝魅了〟の呪いの様だね…)


――ゴホンッ――


「…桜花?……私の〝部下〟に手を出すのは辞めなさい…〝後悔するわよ〟?」

「…クスッ♪……堪忍ぇ字波はん…そんな殺気出さんといてぇな…旦那はんも堪忍ぇ…♪」

「……えぇ、問題有りません」

「……コホンッ、それで今日来たのは…〝アレ〟の話ね?」


妖魁の軽い挑発は収まり、字波君が彼女へ確信を以て問い掛けると〝妖魁〟は答える。


「そぉそぉ…字波はんの考えてる事とおんなじよ……〝孝宏〟はんの〝昇格試験〟について局長はんから言われてもぉてなぁ…それにしても吃驚やわ…まさかこんなに早ぉ昇格するて、〝白鵺〟はん以来やない?」

「……そうね」


……は?…嘘ぉ…?


「……昇格…私が?」

「あら?…なぁんや、字波はん説明してないん?」

「……忘れてたのよ」


私の疑問に妖魁は字波君を見る…すると、バツが悪そうに顔を背ける、口を窄ませてそう言う字波君…いや、あのねぇ。


「――ま、仕方無んやない?…字波はんは多忙なんやから、そうやいのやいの言うてやらんでも…ウチが代わりに来たんやから、堪忍したってぇな?」


……ふむ、ソレは確かに……ソレに、目を付けられるリスクは考慮していたし、構わんか…。


「…では、詳細を聞きましょうか…私が関係していると言うならば私も委細を知る権利は有るのでしょう?」

「勿論…それじゃあコレ…八咫烏から旦那はんへの〝お便り〟」


そう言い私に紙束を手渡す〝妖魁〟から紙束を受け取り目を通す…目を通す、のだが。


――パラッ――

――パラッ――

――パラッ――


捲る度に沈んでゆく私の顔を見て、二人がその口端を緩める……長々と活字を刻み、所々で弁明を書いているが要約するとつまり…。


『戦魔術師のランクを〝金剛下級〟まで上げる代わりに今から指定する〝妖魔〟無力化してきて!…よろしく!』


と。


『君凄いねぇ!…君の研究無茶苦茶役立つから理魔術師のランクを〝金中級〟にまで昇格させるよ!…皆の注目の的だよ!…やったね!』


である……うん。


(権力を望まない人間だって居るんだよねぇ!!!!)


私の心を取り繕わずに言うならば僅か6文字、漢字含め四文字で十分だろう……即ち。



〝面倒臭い〟……である。

いやぁ…京都弁って中々難しいですねぇ。

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