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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第一章:謎だらけの教職者
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氷狼と絶剣の姫

どうも皆様泥陀羅没地です。


本日は投稿が遅れて申し訳無い。

「化物め、化物め、化物め!…」


湿っ気の多い陰鬱なその暗がりで。


何度目か分からないその叫びを愚者は叫ぶ。


「何だ、何だよ彼奴等…人間か!?」


ソレは在る種の〝恐れ〟と己の惨めさからくる逆恨み…或いは〝妬み〟の濃縮だった。


己には無い物を、誰々は持っていた。


己には搭載されていない才能を彼々は持っていた。


そんな才有る物のその所業は、最早人間の範疇を超えており、鮮烈な〝光〟が己の心の闇を刺激する。


下法に頼った己でさえ、到底太刀打ち出来ないと…心の奥底に湧いた〝絶望〟…それを愚者は〝否定〟する…。


――パキンッ――


致命的な〝間違い〟を…〝彼等〟は肯定してしまった…選んでしまった。


「ッまだだ……まだ、行ける…僕は…そ、そうだ…コレを飲めば…!」


陰間に姑息は集り…愚かを煮詰めた愚物は、その手に取り出した瓶の蓋を掴み…。


『〝一日に3錠〟』


――ガパッ――

――ジャラジャラジャラッ――


〝怪しげな商人〟が言った…その言葉は、最早彼等の耳には届かない。


――ドクンッ――


薬はその腸に溶け消え、彼等は痛い程鼓動を鳴らす心臓を抑え、脂汗と共に醜く微笑む…。


「ケハッ…はは、ははははッ!…何だコレ…スゲェ力が沸いてくる…!」


――パキッ――


一際強く、彼等は魔力を迸らせると…その次の瞬間にはその魔力は潜む様に消え…彼等は〝人の中〟へ混じって消える。


――タッ――


「……フン、つくづく愚かな〝餓鬼共〟め」


そして、その光景を見ていた〝白猫〟は…その尾で地面に散った錠剤を一つ掴むと蔑む様に人混みに紛れる〝紛い物〟を見て其の場から悠々と歩き去った…。


○●○●○●


「『それでは〝第二回戦〟…激闘を繰り広げ、本選へ出場した16名から勝ち抜いた〝8名の猛者〟…それでは対戦カードを捲りましょう!』」


解説の1人虹原歩はそう言葉を紡ぎ上げ、会場に熱を煽る…燻る炭火が如き蒸し暑い熱気を帯びつつも、舞台の中心は酷く静かで、冷たい〝沈黙〟に満ちていた。


「『鮮烈にして強烈、無双にして冷徹に、その氷の刃は血染の氷結に覆われる…可憐なる花の姫を一刀に斬り伏せた!…〝巌根氷太郎〟!』」

「ハンッ……誰が冷徹だよ」


その名乗り口上にその青年は野次を飛ばしながら、その身体を軽く伸ばす。


「『相対するは此方も〝剣〟!…その姿は麗しく、太陽が如く眩しく笑う剣の姫!…その姿は不可視が如く、迅速の絶技を避けれる物は無し!…〝黒乃結美〟!』」

「フフンッ、麗しい何て照れちゃうなぁ〜♪」


そして片やその口上に嬉しそうに笑いながら剣を振るう少女。


「『両者ともに〝刃〟の魔術師…魔術師らしからぬ、しかし凄まじい激闘は間違い無いでしょう!…それでは、両者構えて!』」


そして、高まる闘争の空気に両者構え……ふと、黒乃結美が相対する青年へ声を投げる。


「椿ちゃんの仇討ちだよ氷太郎君!…椿ちゃんは凄いんだぞコノヤロー!」

「…俺との相性が悪かっただけだろ、端から敵を舐めちゃいねぇよ」

「ッ!……そっか、じゃあごめんね!…でも負けないよ!」

「此方の台詞だ…」


互いにその戦意を最大にまで高め、そして集中力が極限まで高まった…その瞬間。


――ピィィッ!――


「「ッ―――!」」


笛の音と共に……二人は〝消えた〟…。


――ギリィィンッ――


「ッ……ウッソぉ!?」

「フゥゥゥッ……〝氷武羽衣〟…〝狼鎧凍牙〟」


そして、響き渡る少女の驚愕の声……それから少し遅れて…その光景を目にした者共は〝驚愕〟に目を丸くするだろう。


――ギリッ…ギリギリギリッ…――


少女の剣に触れる…その異様な武器とその姿に。


「ハッ……奥の手が一本だけって言ったかよ!?」


青い氷の爪を持ち、氷の鎧毛を纏った氷の人狼…否、巌根氷太郎はそう言いながらその爪を強く押し込む。


「――ッ、何それ格好良い!!!」

「ッ…ありがとよ!」


――ジャリンッ――


「ッ――ハァッ!」

「ッ!――クッ!?」


そして対抗するように力を込めるその剣を下から殴り上げ、隙だらけの腹に後ろ蹴りを放つ…そこへ、少女は間一髪右手を差し込みダメージを軽減させながら吹き飛んでいく…。


――ザリザリザリッ――


「イテテッ……何とか間に合った〜……ねぇ、ソレも氷太郎君家の秘術なの?」

「……いや、コイツはその改造だ…氷の武器を生成するのを止めて肉体強化に全振りさせた…つもり何だが…まさかこう簡単に対応されるとはな…」

「いやいや、色んな武器を使うのだけでも凄いのに、私の得意分野(肉体強化)も私と同レベルとか、此方の方がプライドズタボロ何だけど!?」


距離を取りながらもそう軽口を言い合いながら、二人は体制を立て直す…そしてソレと同時に、漸くその事態に理解が追い付いたのだろう観客達は一斉に湧き上がり、解説も興奮を声に滲ませ叫ぶ様に言う。


「『何と言う事でしょう!…試合開始から僅か十数秒の〝攻防〟…何方もハイレベルな身体強化による刹那の斬り合い、恥ずかしながら私には何が何か全く分かりませんでした!』」

「『何よりも驚くべきは氷太郎選手のあの異形でしょう…まさかあの羽衣と異なるもう一つの切り札を持っているとは…予想外の一手です!…そして、そんな氷太郎選手の切り札を最小限の被害に収めた結美選手も流石の一言!』」


――ピキピキピキッ――


「――さぁ、どうする〝黒乃〟…降参するか?」

「ッハハ!……冗談ッ!…まだまだ此処からだよ!」


――コオォォォッ――


冷気が地面を凍らせ…少女から吹き出す魔力が大気を震わせる。


「身体強化のデメリットは〝魔力消費〟…だから」

「応…この姿も数分と維持出来るモンじゃねぇ……だから、悪いが出し惜しみは無しで行くぜ?」

「勿論……行くよ!」


そして、二人はその身から魔力を吐き出し…その姿を一瞬で掻き消し…そして〝肉薄〟…。


「「ッ――シィッ!!!」」


――ジッジジジジジジジンッ――


一瞬の空白の後…その空白を塗り潰すが如く…剣戟は鳴り響いた…。

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