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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第九章:かつて神で在った者達
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人の矛と神の矛

――……――


「ッ―――何だ…?」


其処は、大地の遥か頭上…空が宇宙に変わる境の場所で…〝神々の王〟は、己が世界に起きた〝波紋〟を見て、疑問を口にする。


「―……つくづく、愚かな者共よ…自らの創造者を忘却に陥れる愚行を、再び演じようとは」


〝敵対者の侵入〟を理解した彼の眼は大地を見下ろす、全く異なる場所で同時に発生した〝六つの波紋〟…ソレを前に、彼の神はその身から迸る魔力を…その手に凝縮する。


「矮小な人よ、身の程を知るが良い…〝我が威光を以て従属せよ、従属を拒絶するならば我が雷霆にて塵となれ〟――〝是成は神の裁定也〟」


そしてその手に宿した魔力が形を為すと…彼はソレを握り締め…その破片を空へ振り撒く。


「〝運命〟は、我が手の内に」


そして、彼の目は大地を見下ろす…世界に訪れた六つの波紋、その波紋を駆除せんと其々に動き出す、自らの〝配下〟達の動きを…。


其れ等を観察していたその最中…ふと、〝彼〟はその視線を移ろわせ――。


「――〝見ているな?〟」


〝此方〟を…〝見た〟…。






――ブツッ――


「おっと…やはりバレたか」


脳が焼き切れる痛みと共に、私は目から鼻から血を流しながら忌々しくも己の監視を看破した〝彼〟に称賛を告げる。


「ちょっと、もうすぐ転移するって言うのに怪我しないでよ」

「仕方無いだろう?…コレで〝向こう〟の意識が此方に向くんだ…多少の怪我なら想定内さ」


そして、私は周囲に待機した彼彼女等の言葉にそう返しながら、自身の怪我を治療していく。


「――しかし良かったのかタカヒロ、俺達を 渡鴉から外しても?」


私の隣には、彼等四人を統べるリーダーの〝ライト〟君が座り、私へそう伺う…その言葉に私は軽く返し、冗談交じりに彼へ言う。


「何構わんさ、君等が少し留守にした程度で組織運営に支障が出る程軟な組織は作っちゃいない…それに今回の目的だと、どうしても普通の人間では〝相性が悪い〟のさ…その点、魔力さえ有れば肉体の再生が容易な〝魔人〟は、危険な任務に放り込みやすい♪」

「俺達肉壁かよ…」

「肉壁兼戦闘員だね」


そんな私の言葉に反応した、背後から我々を見ていた〝スーロ〟君に私はそう返し、前方で〝ゲート〟を構築するリリスに問う。


「――後どれ位掛かるかな?」

「――もうちょっと待ってよ、流石に前程雑には力を使えないんだから」

「元々私達普通の社会人だったしね〜…流石に教授程技術に明るくないって」


彼女の補佐をするシェリーの言葉に肩を竦ませながら、私は彼女等に言う。


「現在、五チームが神代領域に先行している…その理由は言わずもがな〝神代の主〟を討伐する為だ…そして、その作戦をより万全な物にするために我々が〝裏方に居る〟」


――ブワッ――


「諸君、〝泣き言〟は言ってられないよ――我々はコレから、この〝ゲーム(賭け)〟を大幅に〝収縮〟させる…とどのつまり我らの行き先は、母なる大地の遥か頭上――」


私の魔力が周囲を包む、今まで貯めに貯めた魔力の大瀑布が、私の手の動きと共に整えられ、厚く強固な護りと成る。


「――〝主神ゼウス〟の座する…〝星の神殿〟だ…」

「ッ繋いだわ…〝行くわよ〟…!」


その護りが皆を覆い尽くすと同時に、我々の居るその床に亀裂が走り…我々を虚無の底へ引き摺り込む…意識さえ暗闇に溶けて消えんとした…その刹那。


――『パキンッ』――


何かが砕けるような〝幻聴〟が…耳を突いた気がした。



●○●○●○


――パチッ――


目を開けば…其処には、見渡すばかりの平原が、ただ広がっているだけの…筈だった。


「……え?」

「むぅ……コレは…」


私の口から、呆然とした声が紡がれる…対して、私の隣に立つ、お祖父ちゃんはその顔を険しくして、その手に刀を握る。


「しゃんとせい由美…此処は既に敵陣じゃぞ…それに、どうやら〝向こう〟も策を弄したようじゃの…」


その視線の先には、牧歌的で幻想的な平原とは懸け離れた〝荒野〟が広がっていた。


「――〝警告〟…全方角から多数の魔力反応、推定〝竜種〟の群れが接近中…数は…ッ、〝百匹以上〟!」

「うむ、よぉく見えるわい…来よるぞ〝蜥蜴〟の群れが」


疑問も束の間に知らされる〝凶報〟…それに漸く、私は我に返りその手に剣を強く握る…。


「〝全員構えい〟!――散開し全力で迎撃じゃ…固まるなよ、一息に圧し殺されるぞ!」

『〝了解〟』


そして、お祖父ちゃんの言葉に耳を傾けながら…私は、空を埋め尽くす〝鱗の緞帳〟をその目に捉えて、駆け出した。



○●○●○●


――ドドドドドッ――


「オイオイオイッ、開口一番に随分な歓迎じゃねぇかよえぇ!?」

「そう熱くなるな氷太郎…武器が溶けるぞ?」


大地を走る、奔る、疾走る…鱗に身を包んだ〝竜〟達を切り裂き、撃ち抜き…防ぎ、躱しながら…冷気を放つ〝二人の戦士〟は武器を振るう。


「ハッ、そんな脆い術式は使ってねぇぜ?…俺の氷を溶かしたきゃ九音の炎でも持って来やがれってんだ――」


その一人…巌根氷太郎はそう言いながら、その手に握られた槍に万力を込め…その膨大な魔力を一直線に放射する…その瞬間。


「――竜の炎如きで、灼けるかよ!」


――ズオォォッ――


その魔力が触れた全てが、雪と氷に覆われ…生命の熱を奪ってゆく…竜の炎さえ一切の拮抗を許さないソレは、一瞬にして彼の前方数百メートルを〝氷の世界〟に作り変えた…。


「――ハッ、デケェだけのボンクラが、鍛え直して出直して来い!」


そう言い、獣の様に笑みを浮かべ氷太郎はその時…奥の方から感じた気配に、その笑みを抑える…。


「――どうやら、〝此方〟の方は〝当たり〟を引いたらしいな」


氷太郎の横へ並び立つ、雪斗もまた…その〝気配〟に気付いたのか、その身から魔力を迸らせる…程なくして、氷の世界に〝ソレ〟は来た。


――ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…――


氷の世界を〝歩む〟…ただ一人、竜の立ち退くその先からやって来る…その人影が…その人影は、悠然と歩みながら…その背に手を掛け…その身体程は有ろうかと言う〝大剣〟を頭上に掲げ…そして。


――ズンッ――


振り下ろす…その瞬間、その一撃が大地を割り…凄まじい〝飛ぶ刃〟となって、彼等二人に迫る。


「――〝小手調べ〟か…面白い!」


その一撃に…氷太郎を制して雪斗が一歩先行する…そして、その〝純白の刀〟を抜き…迫りくる刃へ〝一刀〟…横薙ぎで返す。


――ズドォッ――


二つの刃は拮抗し、その力が凄まじい〝余波〟として周囲に衝撃を撒き散らす…そして。


「――フンッ!」


雪斗が刀を振り抜くと同時に、その拮抗は解け…二つの刃の衝突は相殺され、終着する……その結果が、今度は――。


「〝見事な一撃〟だ……〝人間〟」


相対する…その大男の戦意に火を着けた。

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