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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第一章:謎だらけの教職者
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穢れ手掴むは仮初の憧憬

3本目ェ…時刻的には一本目だけど。

月日の流れは早く、私が教壇に立ち早2ヶ月…様々な変化が在った。


例えば、優秀な生徒達の教鞭…並の学生の数倍の速度で知識を吸収する彼等が面白く…まだ新入生だと言うのにその知識量は2年生をも凌駕する程だ。


次に弟子…魔術師にとって、師匠側にも弟子側にとっても重大な社会的アピールと成ると言うその弟子が二人も増えた事…即ち〝剣の魔術師〟と〝花の魔術師〟…〝黒乃結美〟と〝春芽椿〟である…黒乃結美君の実力はやはり、〝特別生〟と言う事も有り瞬く間に広がった…椿君の方はやはり、彼女が〝落ち零れ〟であると言う先入観からか、嫉妬が多く見受けられた…まぁ、それもちょっとした〝私の誂い〟で激減したが…イジメは良くないから、〝教育(虐め)〟して止めさせようね!…。


とまぁ、ソレ以外はボチボチ…噂から私を覗き見る学生やら根も葉もない噂を立てる少年少女へ軽いお仕置きをしつつ、知的好奇心を満たしつつ有る充実した教員生活…なのだが。


(ううむ……困ったねぇ…)


一つ…私の〝行為〟が原因で色々と困った事態も置きる様に成ったのだ……即ち――。


「先生!…私にも教鞭をお願いします!」

「俺も!」

「私も!」

「『我々も!』」

「君達は〝教員(此方)〟側だろう!?」


私が修行している結美君…その実力がメキメキと上昇している事を知った学生、生徒、はたまた教員達が私に個人的な教鞭を頼みに来るのだ…特に厄介なのは〝教員〟達!…私が多少博識だからと私に様々な理論を説明し、見解を聞いてくるのだ!恐ろしい!…こんな魅力的な物を不用意に私の元に持ってくるとは!…お陰で殆ど寝ていない…いや、肉体的に睡眠は不用とは言えね、精神は蝕まれる訳で。


「えぇい!…分かった、分かったとも!…話は聞くが待ち給え!…先ず制約だ、君達の〝お願い〟は一月に〝一度〟まで!…私の時間を取らない範囲で君達に最大限応えよう!…ソレが守れるならば私も全力で協力しよう!」

『いよっし!!!』


そして始まる…3列体制で始まる〝聖徳太子〟の如き一問一答。


「「「どうすれば今よりも更に強くなれますか!」」」

「シンプルだが向上心は花丸だ!…君は魔力制御と術式の見直し!…君はそもそも属性が不向きだ、風よりも土系統の方が向いている!…君はそのまま今まで通りの鍛錬を続けなさい!…独学か教えられたかは分からないが〝その判断は間違ってない〟!」

「「「はい!有り難う御座います!」」」

「次ィ!」

「「先生と結美ちゃんはどんな関係ですか!?」」

「先生は受けと攻め何方ですか!?」

「初手からそんな馬鹿な話を振るんじゃない!…あと君の質問は色々と毛色が違わないか!?…答えは私は彼女と色恋の仲に無いし男色趣味は無い!…後腐るのは構わないが飽く迄も妄想に留めておきたまえ、もし君が問題を起こせば君の趣味を一ヶ月断つ〝呪い〟を掛けるよ!」

「「チェ〜!」」

「そんな殺生な!?」

「次ィ!」


そうして捌いてゆく、捌いてゆく…時折交じる異色な質問も、出来る限り真面目に答えていく…私にモテ方を聞くな馬鹿者!…五百何十年モノの独身老人だぞ私は!?…。





「プハ〜!…大変だ〜ね〜シショー」

「でも…私達じゃどうにも出来ないですよ…」

「それに彼…〝契約魔術〟を使ってるから私がどうにかする事も出来ないわね…全く」

「「理事長先生!」」

「人集りが出来ていたから見ていたけれど、同仕様もないわねコレ…貴女達、暫く時間有るでしょ?…ならちょっと御茶しましょう、色々聞かせて頂戴」

「「は、はい!」」

「ウフフッ、そう緊張しないで」


クッ!…背後の気配、コレは字波君だな!?…せめて私が宣言する前に来てくれれば楽だったものぉぉ…グヌヌヌッ!…。


「次!」

「「「はい」」」


私はそう言い、次の生徒達を促し、質問を待つ。


「「「僕を結美さんや特別生の皆の様に強くして下さい」」」

「成る程、君は先ず魔力制御と肉体の増強、魔術師だから運動は不要と言う訳じゃ無い!…君はちゃんと栄養とって自身の現状を理解する事、理想だけを見る者は強く成れない、ハッキリ言って君の理想は〝まだ〟手に届かない!…:出来る範囲をマスターして行くことだ!、君はそもそも魔術師としての基礎が穴だらけだ、先ずは一度基礎を見直して其処から修行に励みなさい、土台が不安定だと幾ら修行してもすり抜けて行くだけだ!」

「「「ッ…そんな…」」」

「以上!…理想を持つのは無駄じゃない、ちゃんと今を見るべきだ、自らの才能を過信し過ぎちゃ行けない…次!」

「「「……有り難う…御座います…」」」


そして、人並みに紛れ消えゆく彼等を送り、次の生徒を呼ぶ…彼等が強さを求めた以上、下らない情けで調子の良い事を言うのはそれこそ〝残酷〟だろう…頑張り給えよ。


「はい、先生と字波理事長は――」

「またかね!?」




○●○●○●


『お前に魔術師の才能はねぇよ』

『コイツ魔術師の癖にしょぼい炎しか出せねぇってよ!』


ずっと…そう言われてきた…自分は〝出来損ない〟だって。


煩い、五月蝿い、うるさい…どいつもこいつも、僕の〝努力〟を鼻で笑いやがって。


俺には才能が有る筈何だ…だから、この学園にも入学出来たんだ。


なのに、どいつもこいつも僕を〝否定〟する。


『向いてない』

『的外れ』

『魔術師失格』


黙れ、黙れ黙れ黙れ!…どいつもこいつも、ただ人より〝才能〟が有っただけじゃないか!…〝天才〟には〝凡人〟の努力は分からないだろう!?…。


『君の理想は届かない』


クソッ、クソッ、クソッ、クソッ!…あの〝クソ教師〟…何が特別生の担任だ…彼奴だって結局は〝天才〟なだけじゃねぇか!…。


こんな世界、間違ってる……〝努力〟が報われない世界何て…何かの間違いだ。


「――おや?…ひょっとして君等、〝学園の生徒〟かい?」

「「「…ッ」」」


誰かの声が聞こえた…ソレ人で溢れる大通りの裏…人気の無い陰から僕達を呼ぶ声が。


「おっと…怖がらせたかな?…済まないねぇ…こちとらちょいと特殊な物売りなモンで…おぉっと、身構えんでくれよ…コレでも〝魔術師〟からの評判は良いんだぜぃ?」


その人物はヤケにテンションが高く、その顔を深いローブで包んだ怪しい男、それが此方を見ながら身振り手振りで無害を伝えてくる…その動きが更に〝胡散臭い〟…。


「アンタ等、何か困ってんだろ?…伸び悩み?行き詰まり?…いやぁ…違うなぁ…もっと単純だ……ズバリ、〝虐め〟か?…確かに、アンタ等ちと魔力が少ねえし、身体も弱そうだしなぁ…どうだ?当たりかい?」

「ッ…黙れ胡散臭い爺…!…おい、帰ろうぜこんな奴――」

「う〜ん…ソイツは勿体ねぇ…折角仕入れたこの〝魔力増強剤〟…試供品にくれてやろうと思ったんだがなぁ…?」

「…何?」

「何って増強剤だよ増強剤…俺の伝手の魔術師がな?…古代の文献から〝魔術師の強化〟の方法を見つけたらしくてよ…その改良品がこれだと…何と一日三粒でその日はその魔力量も魔術の出力も、序でに身体能力も強化するスグレモノ!…一応理論上安全だって話だが、まだ臨床実験が不十分らしくてな?…だから俺に寄越してくれたんだよ…だが、残念だなぁ…今なら一瓶丸ごとタダで――」

「「「寄越せ!」」」

「おん?…欲しいのか?……構わねぇが良いか?…〝一日3錠〟だぜ?…用法用量守って――って、聞いてねぇし…」


胡散臭いその男はそう言い、其々の手に瓶を掴んで其の場から離れてゆく三人を〝淀んだ目〟…死んだ目と冷めた声で見送る。


「ま、良いか……どーせ飲んだ時点でお先真っ暗だ…速いか遅いかの違いだけだ…後は彼奴等が〝一暴れ〟してくれりゃ…俺も彼奴等も一儲けってな♪…キッヒッヒッ♪」


その顔には人の歪んだ欲望と、底しれぬ悪意が色濃く滲み出していた。

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