お花さんとお花の少女
どうも皆様泥陀羅没地で御座います。
本日は2本目、懐かしの2本目投稿ですね。
モチベーションが高いので、きっと恐らくメイビー3本目も有る、かも!…。
――キィィィンッ――
――ニョキニョキニョキッ――
「で、出来ました!」
「うわぁ、ほんとに成長した!?(パチパチパチッ)」
「おめでとう…うん、やはり〝植物系統〟の術は君の〝領域〟らしいね…魔力の性質も、理解力も植物に限定されるとは言え〝私以上〟だ…素晴らしい(パチパチパチッ)」
現在私の私室にて、植木鉢に埋めた〝種〟を私の補助無しに〝成長〟させてみせた彼女に私と結美君は拍手を贈る…いや、私達だけでは無いか。
「『ッ―――!!!』」
――グニャグニャグニャッ――
「わ、わ、わっ!?――何ナニコレ!?」
「ふむ…」
私の背後、植木鉢を並べていたその窓辺に居る〝彼等〟…〝魔法植物〟の彼等はその蔓を伸ばし、椿君の手に触れる。
「『ッ―――♪』」
「ッ……コレは…」
「え!?何コレ!?椿ちゃん大丈夫!?――先生、切った方が良い!?」
「……いや、止め給え…椿君…〝彼等〟は何て?」
「あ、はい…えっと…〝おめでとう、次はこの子を咲かせて見せて〟と…」
そう言い、椿君はその手に握る…見るからに通常の種と異なる…紫と赤の〝斑〟の種を見せてくれる…。
「……〝魔女の青林檎〟と〝飽毒冬柿〟、の交配種?…成る程、魔力生産時の活動用以外の余分をこの種に注いだのかい?」
「「ッ――!(コクリッ)」」
「成る程、異種交配の変異種か…〝自らの子供〟と言える代物を、彼女に与えて良いのかい?」
「「ッ――!(コクコクッ)」」
「ふむ……では、有り難く〝教材〟にしよう……と、言う訳で椿君、早速だが彼等の望み通り、この子を咲かせて上げようか!」
私はそう言う彼等の葉を撫でて、椿君にそう言う……ふむ。
「私の〝子供達〟と可愛い〝愛弟子〟の晴れ舞台だ…私も少し、身銭を切るとしよう」
私はそう言い、〝宝物庫〟から〝ソレ〟を取り出す。
「ソレは……〝壺〟?」
「そ、〝神秘を宿した壺〟…以前遺跡発掘で拾い集めた物だ…使い道に悩んだ挙げ句、オークションにでも出品して泡銭にでもしようかと考えて居たが…〝閃いた〟♪」
――バチィンッ――
そして、その壺の形を作り変える…神秘の時代に造られた遺物の改造は多少の劣化を齎すが、コレの内蔵物は神秘と土と水…所謂土器だ、使い道など骨董品が関の山だろう…なら、〝彼等の息子〟やこれから続く〝生命の連鎖〟の橋渡しに使った方が有意義だろう。
――コトッ――
「まぁ腐っても遺物、強度や神秘はコレで良いとして…後は土だな…この子が成長する上で最適な土質と環境は…む?…〝問わない〟か、面白い性質だ…ならば新鮮且つ栄養豊富な物を用意しよう…配分は――」
――ザラザラザラザラッ――
「コレでよし……さぁ椿君…この壺…改め〝植木鉢〟に種を入れてくれ…細やかだが、通常の植木鉢よりも成長の質は良いだろう」
「あ…はい」
「先生、何か楽しんでない?」
私の催促に椿君は種を植え、結美君は懐疑の視線を私に向ける…楽しんでいるか?…〝勿論〟だとも。
「〝未知とは時と共に増える物〟…ソレは自然の変容による太古の露見、と言う意味では無い…私は考古学者では有るが、その目的は〝生命の始まり〟から〝現代まで〟の進化の過程を観測する事…即ち〝今の変容〟を太古に遡って識る事だ…ならば今、新たに生まれた〝未知〟は、私が改良し作り変えた新たな種で有る彼等が彼等の意志で生み出した〝未知〟は、私にとってかけがえ無い悦楽、〝今起きた未知の増幅〟だ…ならば成る程、私が楽しまない筈も無いよ」
「……成る…程?」
「――っと、興奮の余り長々と講釈垂れて済まないね…ササッ、私の同仕様もない性は置いておくとして…是非見せてくれ、彼等の子がどんなものか」
「はい……」
そして、私の無意味な自分語りを閉ざし椿君は〝魔術〟を行使する。
――フワッ――
それは…私の様な〝冷たい魔力〟でも、結美君の様な〝鋭さ〟も無い…〝穏やかな〟…〝暖かな魔力〟…ソレが周囲に満ち、その中心に注がれる。
彼女は〝特殊〟だ…その〝特殊性〟は〝天鋼級〟…つまりは〝二つ名〟持ちと同等かソレ以上だと私は思う。
彼女は優しく、心根は限り無く善良で有り、争いを好む存在では無い…何処までも〝慈愛〟に満ちた少女だ…しかし、ある局面で、彼女は彼女を〝魔術師〟足らしめんとする〝ソレ特有の狂気〟を覗かせる。
「……♪」
ソレは彼女と〝植物〟…より言えば〝花への愛〟…彼女のソレは常人では会得しよう筈もない…或いは生まれ持ったその時点から存在する彼女の〝価値観〟だ、彼女は人と異なる視点を持つ…〝植物〟を〝人間と同等に扱う〟と言う価値観が。
故に彼女は事〝植物〟に関する魔術や知識では〝私〟や〝字波君〟…或いは、世界全ての〝魔術師〟すらも遥か足元に置き去りに出来るだろう…それでも、根は善良、平和主義な為に人を傷付ける事は出来ないだろうし、彼女自身の魔力量から、今はまだ辛うじて対等に成れるだろうが…。
「……ッ」
「……ふむ」
と、行けない……思考に没入し過ぎた…見れば彼女の魔力は殆ど尽きる寸前だ…どうやら、彼等の〝息子〟は彼女ですらまだ芽吹かせる事しか出来ない頑固者らしい。
――パンッ!――
「ニャッ!?――」
――ガッ――
「ッ!?…師匠?」
「今日はこの辺にしておこうか、そして少し休憩としよう…君達、彼女を〝癒やす果実〟を作ってやってくれないかい?」
「「ッ―――!(コクンッ)」」
「ほら、結美君もそんな所で蹲ってないで立ち給え」
「ウゴォォォッ…あ、足がァァァッ!?」
●○●○●○
――ポォォッ――
〝ジワリ〟と…身体が暖かく包まれる…酷く心地良いその感覚に、困惑が浮かぶ。
『何だ?』
『何だ?』
『何だ?』
声は出ない…困惑が混乱に変わる、しかしその暖かな感覚は晴れない…兎も角心地良い、害意を感じないならば、良しとする。
ソレに…父様と母様の気配も感じる様だ。
――メキッ…――
『???』
ふと、身体がムズムズする…何か、酷く窮屈だ…そう思い、身動ぎする…。
――メキメキメキッ――
そうして〝暗闇〟を進んでいると漸く気付く……〝己は成長しているのだ〟…と、無論困惑が無い訳では無い…余りにも〝早すぎる〟のだ。
そして気付いた……この〝心地良さ〟と、この〝暗闇〟の全てから漠然と感じ、己の糧となる〝何か〟が己をこうまで早く〝押し上げる〟のだ。
そうこうしている間に、ふと暗闇が〝割れた〟…いや、〝突き破った〟…眩しい光に〝目〟が焼かれる…しかし、次第に慣れて来た…その時だった。
『こんにちは…〝お花さん〟』
そんな声が、己の身に響き渡る…その〝心地良さ〟を放つ〝生命〟の身から。
その姿を見た時…己は拙いながらにこう思った。
――〝善い〟…と――




