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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第九章:かつて神で在った者達
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厄災の生き残り

――ガコンッ――


「〝外郭装甲パーツ〟ノ組ミ立テガ終ワリマシタ!」

「……応」


小さな古めかしいデザインの機械人形がそう告げる…その言葉を聞きながら、白鵺翔太は何処か複雑そうな様子でその機械に返答し…己の手に握られた〝デバイス〟へ当惑混じりにボヤく。


「――どんだけ優秀何だよ、この〝制作補助機械人形クラフトマン・アンドロイド〟…プロジェクト発足から3日も経ってねぇぞ…」

「『どんな〝知性体モジュール(ノウミソ)〟してるのかしら…一匹くらい解剖しても良いかしらね?』」


そのボヤきに返ってくるのは、何処か加虐的な興味を覗かせる〝蛇妃〟の言葉…その言葉に反応してかもう一人…〝妖魁〟の声がその考えに口を出す。


「『残念やけど、このおチビさん達の〝中身〟は既製品の〝機械人形(アンドロイド)〟と大差無いらしいわ、おチビさんの中に居る〝リーダー〟が全作業の最適化して、最適化した〝行動パターン〟を送信してる……らしいよ?』」


そう言う本人ですら困惑した様なその説明に白鵺翔太は驚いた様に…視線の先を見やる…其処には。


「本気かよ……なら、本来のアンドロイドのスペックって〝アレ〟なのか…?」


既に街の中心に築かれつつ有る…巨大な〝ゲート〟の未完成品と、一切の無駄な動作も無く、完璧な連携で動く〝機械人形〟達の姿が有った。


「――〝計測〟…〝工事進捗〟ハ〝無問題(パーフェクト)〟…工事完成マデ後〝二日〟デス」


そんな彼等の潜在能力に、白鵺翔太は感嘆の眼差しを向け…その視線を釘付けにする…そんな彼へ〝伝達係〟は、機械的な報告を届け…また沈黙を再開した…。



○●○●○●


――フワッ――


甘い香りに目が覚める…目が覚めると其処は知らない天井で、見覚えの無い景色に微睡む思考は停止する。


「――此処は…?」


譫言の様に紡いだその言葉の後で…己の脳は漸く酩酊から覚め、眠り落ちる前の光景を思い返す。


「ッ―――あぁ!?」


暗闇の中から開かれた扉、その中から伸びる無数、無尽蔵の〝黒い腕〟…ソレに掴まれ、強引に引き込まれた事を思い出した瞬間…あまりの恐怖に全身が冷水に浸かった様な感覚に襲われる。


――ガバッ――


悲鳴と共に身体を起こす…全身を流れ打つ冷や汗と、極度の緊張感に脈打つ鼓動が全身を支配する…そんな中、直ぐ隣から己へ向けて〝声〟が紡がれる。


「――あぁ、起きた起きた…いやぁ流石に丸一日眠るとは思わなかったよ君」

「ッ!?――アンタは…!?」


其処には、白衣に眼鏡を掛けた黒い長髪の女性が…無気力そうな表情とは裏腹に強い活力を込めた視線で己を見詰めていた。


「――嗚呼、自己紹介がまだだったね!…私は〝ナース〟と呼ばれている者だ…この〝コロニー〟の副管理人兼治療チームの統括者だよ…気軽に〝ナース〟と呼び給え〝ジャック・コーニファー〟君」

「何で…俺の名前…」

「――そりゃ調べたからね、まぁ兎も角無事で良かった…〝このエリア〟では君が最後の〝入場者〟さ…それも後少し遅れていれば無事とは行かなかっただろう」


その〝ナース〟はそう言うと、未だ困惑する己の手を引き…ツカツカと磨かれた廊下を突き進む。


「――さて、実はつい先刻〝コロニー〟全域に放送が有った…〝全人員〟が〝管理区域〟へ招集されている…病み上がりで悪いが着いて来給え」

「おい、分かったッ…分かったから引っ張るな歩き辛い!?」


己の声が騒がしく廊下に響き渡る…結局、その手が離される事は無く…幾つかの通路を通って、ナースの言う所の〝管理区域〟に足を踏み入れる…其処には。


――ザワザワ…ザワザワ…――


ざっと数えて百人を超える人間が、緊張した面持ちで其処に集まっていた…流石に百人も居れば少し息苦しく、人の多さと生温かい気配の密度に頭が眩む。


「――済まないが〝管理人〟が私をお呼びだ…悪いが少し席を外すよ?」


壁に寄り掛かる俺へ、ナースはそう言うと姿を消す…それから暫くの間人のざわめきが小煩く耳を突いていた…ソレに辟易としていたその時。


――キィィィンッ――


ふと、空間に疾走る不快な金切り音が空間に静寂を呼ぶ…それから少し、ノイズの様な音を響かせたその後…〝一人の男〟が管理区域の頭上に配置されたモニターに映し出される。


「『招集に従い此処に集まってくれた事を感謝する…一度諸君等には自己紹介しただろうが、改めて名乗ろう…私はこのコロニー…〝アルファ〟の管理人として〝総括者(マスター)〟に選出された者…〝アーロット〟だ、宜しく』」


其処には、中年ながらに壮健な顔立ちをした鷲の様な風貌の男が映し出され…その言葉が低く皆の耳へ届く。


「『諸君等を招集した理由は、隠し立てをする必要も無い……この〝コロニー〟の建造者、つまりは〝総括者〟であるその人物からの〝通信〟が送られてきた為だ』」


その言葉に、またもざわめきは大きくなる…しかし、ソレを制するように響くアーロットの言葉に、彼等はまた静けさを取り戻す。


「『コレより、その通信を再生する…皆傾聴して欲しい』」



その言葉と共に、アーロットはそのモニターから姿を消す…ソレから少しして…モニターは小さな揺らぎを起こし…それから――。


『やぁ、やぁ……この通信を開けたと言う事は、〝コロニー〟が問題無く機能していると言う事だ……ソレはつまり、君達〝アルファ〟コロニーの君達は〝侵食された世界〟に取り残されたと言う悲しい事実でも有る訳だが…』


そのモニターの揺らぎが大きくなり…ソレが収まると同時に…其処には〝白髪の少年〟の姿が現れる。


『いや失礼…自己紹介がまだだったね…私は〝不身孝宏〟、この〝コロニー〟の創造者で在り、日本直属先進研究機関〝渡鴉〟の所長だ…こんな姿でも齢60は超えていると伝えておこうか?』


その青年は、そうおちゃらけた雰囲気を真顔で紡ぎながら…直ぐに話題を切り替え、己等へ語り掛ける。


『先んじて言っておこう…この通信は前もって録音しておいた物だ…従って君達からの質問には答えられない事を承知しておいて欲しい…悪いね』


そうその男は言うと…ソレから一拍おいて、再び言葉を紡ぎ出す。


『この通信の目的は…〝現状〟を君達へ伝える事と、〝君達への頼み事〟を伝える為だ、良く聞いて欲しい』


そして、その男は画面越しに己等を見据えながら…口を開いた。

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