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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第九章:かつて神で在った者達
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神に背く者達の企み

「――さて、それじゃあ早速字波君…付いて来たまえ」

「えぇ…何処に行くの?」

「当然、〝八咫烏〟の会議室だ…察しの良い局長殿が会議室の準備をしてくれて居るだろう、〝天鋼〟の諸君についても、事前に此方から使いを出している…もう既に揃っている頃だろう」


私はそう言うと、〝銀の鍵〟を執務室の扉に差し込み…其処を〝ゲート〟に空間を繋ぐ…そして、その扉を潜った先には……見慣れた顔触れの諸君が、それは険しい様相で静かに待っていた。


「――やぁ局長、準備が早くて助かるよ」

「……どういう事か、説明はしてくれるんだろうな?」

「説明も何も、既に君達には伝えていたと思うがねぇ?」


顰めっ面の局長殿へそう返しながら、私は字波君を連れて八咫烏のフロアに足を踏み入れる…そして、辺りを見渡し…室内のモニターに並んだ〝顔〟を見て、改めて口を開く。


「――しかし、改めて〝国政者〟諸君へ事実を伝える為に、事の説明は不可欠か…宜しい、では改めて〝現状〟についてを説明しよう」


その言葉に皆の視線が此方へ向く…普段なら少し辟易とするこの視線も、緊急時の今となっては気にしている余裕も無い。


「――先刻の〝声明〟の通り、事態の〝原因〟は〝謎の光柱〟だ…高密度の魔力に、遠方からの解析でさえ手間取る代物だ…まぁその主要な効果は予想通りだったが」

「――その〝効果〟とは?」


私の説明に食い付くのは、国を護る者達を束ねる長――〝国防大臣〟の任を任せられた壮年の男性、その質疑に応える様に、私は言葉の続きを紡ぎ上げる。


「――〝領域の拡張〟…ソレ一点だよ…もっとも、その拡張は、単に〝地上に重ねる上書き〟とは違い、〝地上を創り変える上書き〟と言うとんだ技術だが…」

「――声明に在った〝対応策〟は機能するのか?」

「〝理論上〟はね…何分始めての試みだ、出来得る限り現状から最善の方法を取ったが…実際に相手の領域が此方に来ない限りは分からないね」


国防大臣君との問答の後、今度はモニターの外側から、私へ問いが飛んでくる。


「――ソレで?……そんな大した事を考えやがった野郎は〝何者〟何だ?」

「野郎が首謀かはさておくが…まぁ予想も違わず〝神性存在〟…所謂〝神〟だね、間違い無く……おっと、有り得ないとは言わないで欲しいね、〝事実〟だ」


私は予定調和の如く誰彼の口から飛び出そうとしていたその言葉を静止し…呆れ半分に彼等へ紡ぐ。


「――そもそも、〝科学と魔術〟の混在した世界で在りながら、半ば盲目的に〝神〟の存在を否定し続けている方が可笑しいだろう…現代の物流問題を支えている〝錬金術〟だって、科学の理を超越した異次元の技術だぞ?…良い加減に自分達の常識が間違いだったと認めてくれねば困るよ」


私がそう言うと、彼等は出掛かった言葉を呑み込み、此方の話に耳を貸す。


「さて、事態が事態なだけに悠長に討論している暇が無い、早速今回諸君等を招集した理由の本題に入ろう、序でに〝政府(君達)〟にも働いてもらうよ?…何せ此方は本土に敵勢力の拠点でも作られたら即終わりだ、〝内側〟を固めなければ此方から攻める事も出来ない……フフフ♪」


私は語りながら口端から漏れる享楽に、少しの気恥ずかしさを覚える…実際この場にそぐわない行為であるのは確かだ…だが、それでも〝楽しい〟のだから仕方ない。


「――そういう訳だ、〝楽しい楽しい開発工事〟と行こうじゃないか♪」


何せ、此処から人類の生活基盤を数段階上へ引き揚げるのだから…楽しまねば損と言うものだ。




●○●○●○



――バサッ…バサッ…――


「いやぁ、始まった始まった♪」


〝拡がる世界〟を遠巻きに眺めながら…〝ソレ〟は逃げ惑い、騒ぎ歌い…挙句蹂躙される〝霊長〟を見下ろし…その紫の眼を愉悦に歪ませる。


「――う〜ん…〝駄目〟だなぁ…〝此処〟は全滅か…実に惜しい…侵食からそれなりに時間の余裕は有っただろうに…つまらん」


そして、空を駆ける幻想達がその一切を蹂躙する様を見届けると、子供の様にそう紡ぎ…その視線を遥か地平線の先へ向ける。


「――だが…フフフッ♪……〝破滅的結末(バッドエンド)〟の幕切れは早いか…良いね、差し詰め向こうは〝解放軍(レジスタンス)〟だ…実に見応えのある〝戦い(演目)〟に成りそうだ……ん?」


そして、1人ほくそ笑んでいたその時…ソレはふと感じた〝気配〟に視線を落とす…其処には…。


『……』


文明の残骸から、忌まわしい空の獣達を警戒しながら…路地裏に消えて行く〝者達〟の姿が有った。


「――フフッ、フフフフッ♪…成る程、成る程……そうだなぁ、大舞台に足繁く通うのも悪くは無いが――」


――ドスッ――


「ッ!?――グルギャォォォォン!?!?」


――ゴポッ…〝ガバァッ〟…!――


「〝陽ノ目ヲ見なイ二流舞台〟モ、悪く無いか♪」


ソレはそう言い…今し方その〝人間〟を襲おうとしていた竜を人知れず殺し…その瞳に〝狂気〟を宿す…そして。


――ズルゥッ――


「――〝顔〟は覚えたし…また後で軽く調べるとしよう♪」


人のカタチをした〝ソレ〟は…口端の鮮血を拭い…〝光の柱〟へ目掛けて飛び立った…。




○●○●○●



――ハァッ…ハァッ…――


薄暗く下水臭い通路を駆けていく…肩が痛む、息が苦しい…それでも、生きていると言う安心と、突然の出来事に混乱が収まらない。


「意味…分かんねぇよ!」


分からないままに、何故下水道を走っていたのか……ソレは以前に耳にした事が有るからだ。


『人類は近い未来、絶望的な災害によって存亡の危機に瀕する』


そんな、巫山戯た陰謀論者共の言葉が何度もリフレインする…ただの馬鹿な同僚の与太話だと思っていた話の〝続き〟――。


『――助かりたいなら、〝陽の光が届かない場所〟で呼び掛けを3度紡ぐ事』


手の込んだ与太話と思っていたソレが紡ぐ…〝その言葉〟…。


「『〝()は滅びを認めない〟!』」


暗い、暗い暗闇の中に…己の声が反響する、その反響は3度響き渡り…息も絶え絶えな俺は、反響し消えて行く己の声の先を見る…。


「――ッ……クソッ!…やっぱり嘘じゃねぇか――」


しかし、幾ら待とうが続く静寂に…思わずそう悪態を吐いた……その時。


――ガチャーンッ――


そんな、何かが〝外れる〟様な音が響き渡り…俺はその音の先に目を向ける…其処には。


「ッ――本気かよ…!」


薄暗い闇の中に、薄っすらとだけ存在する〝扉〟が有った…その扉は、薄暗がりの中で、ゆっくりと…軋む様に音を立てて、その中の暗闇を此方へ向ける…その〝異様な雰囲気〟に…信じられず〝瞬き〟をした……その瞬間。


「ッ―――!?!?」


己の目と鼻の先に…大量の黒い〝影の手〟が…己を掴んだ。

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