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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第一章:謎だらけの教職者
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八咫烏と侵入者

どうも皆様お久しぶりの作者、泥陀羅没地の前書きです。


本話は少し短いですが御容赦を…許されよ、許されよ。

――トンッ…――


「――と、言う訳だ…君達の見解はどうだ?」


その言葉に室内は静まり返る…いや、正確にはその言葉に何かを思案する物が過半数、残る2人…以前字波君と険悪な雰囲気だった〝蛇妃〟こと〝毒島苺(ぶすじまいちご)〟とその喧嘩を見物にしていた〝妖魁〟、〝冬超桜花(ふゆごえおうか)〟はその言葉にまるで興味を示さずに戯れている。


「――俺的にゃ判断に困るな…何せ〝夜門〟の調査なんざ誰一人として出来た試しがねぇ、それに人為的とは言うが、どうやって誰にもバレずに、それも同時に複数も〝夜門〟を〝創れる〟?…ってな所が本音だ…だが〝正体不明〟が今の所何モンで、敵か味方か、中立かも分からん以上、無闇矢鱈に否定するべきでも無いとは思う」


そんな二人の事はさておき、現状字波君を除いたこの集団の中で、個人的に好感を覚える青年…〝万雷〟こと〝白鵺翔太(しろぬえしょうた)〟君はそう言い自らの見解を述べる。


確かに、相手は正体不明な〝何者か〟…その存在が認知はされていれど、その姿形、人種、人外なのかすらも割れていないのだから警戒は当然、しかし不用意に切って捨てない所も間違いでは無い。


(ふむ、他の者達も概ね同じ考えか…まぁ良いとも…本命は〝此方〟だ)


――カチッ――


深夜11時59分59秒…そして、その秒針が丁度今、〝零〟を過ぎ、日を〝越えた〟…丁度その時。


――コンコンコンッ――


この会議室に、〝何者〟かの〝ノック〟が響く。


「『失礼しよう……〝魔術師諸君〟』」


そして、その声の主は冷たく低いその声でそう言い…扉を開け放ちこの会議室に入って来る…その〝身〟から濃密な〝瘴気〟を纏って。


――ブワッ――


その瞬間、膨れ上がる魔力と同時に、その部屋に侵入した〝何者か〟へ蛇が、雷が、血の斬撃が迫る。


――バシュンッ――

――バリバリッ――

――ゴリゴリゴリッ――


その三つの殺意はその人物が何か言葉を発するよりも早く、その身体を断ち切り、身体の骨を捻り折り、その身を黒焦げに変化させる。


――ドシャッ――


その攻撃は見事にその人物を直撃し…その攻撃にソレは完全に沈黙した……様に思えた。


「『……あぁ、コレは済まない、配慮に欠けたな…』」


――ググググッ――

――ゴリゴリゴリゴリッ――


「…〝死霊術〟ね?」

「『その通りだ〝字波美幸〟…コレは私の伝言を伝える為の器で有り私の本体では無い、そして私は〝君達の敵〟では無い…少なくとも今現在は…だが』」


そう言うとその人物はその身体を軽く竦ませて、部屋の中心に立つ。


「『手始めに、自己紹介をしよう…君達は結構だ、既に知っている……私は、君達が〝正体不明〟、〝Unknown〟と言う者だ、呼称は好きにすると良い…今日来たのは、君達にとある〝情報〟を伝える為に来た』」


そう言うと、その男は懐から〝丸薬〟と〝錠剤〟を取り出しソレを各人が見えるように配布し説明する。


「『現在この〝日本〟を含めた主要国家の中で、この〝薬物〟が流れ始めている…くれぐれも飲まない様に、死んでしまうぞ?』」

「…この薬は何だ?」


その説明に、八咫烏の会長殿は渋い顔で男を睨む、その視線に死体の淀んだ瞳で返しながら男は続ける。


「『この薬物は〝欺瞞の禁薬〟…錠剤はその劣化品だ、丸薬は再現して見た物だ…それでも本物よりも性能はかなり落ちたが…兎も角、コレの発生は2300年前、紀元前3世紀のアラビア半島周辺、〝サバア王国〟で蔓延した薬物だ』」

「へぇ…それで、効果はどんな物何です?」

「『〝魔力増強〟と〝出力増強〟だ…元々は〝魔術師の活性化剤〟を目的に作られた物だった…だが―』」

「禁薬って言われるからには、何か理由が有るのよね?」

「『その通り』」


男はそう首肯すると、その〝副作用〟を語る。


「『この薬物は〝魔術師〟を強化し、〝一般人を魔術師〟に変える事ができる…そうだ、〝効果だけ〟ならばその通りだ…だが、実体は〝破滅の呼び水〟に相応しい欠陥品だった…この薬物を投与された者は確かにその魔力量が増加する…しかし、魔力量が増加するのと引き換えに〝魔術回路〟が破壊されるのだ』」

『ッ!』

「『事実、この薬物を使用していたこの〝身体〟の魔術回路は酷い有り様だった…穴の空いた魔術回路からは魔力が放出され続け、やがて生命力…〝魂〟すらも魔力に変えて死に至る事に成る…この薬物が蔓延するのは非常に困る、ソレは私も、君達も同じだと思うがどうだ?』」


その男はそう言い、沈黙した室内を見渡して言う。


「『理解して貰えた様だな…それでは私は失礼しよう、この身体はどうする、君達のサンプルにするのも、このまま破棄するのも構わないが…?』」

「……いや、受け取ろう…」

「『良いだろう…それではそろそろ私は退散するとしよう…次はアポを取っておこう、それではな』」


ソレはそう冗談めかしてそう言い…その直後、糸が切れた人形の様にパタリと身体を崩れさせ、その場に寝そべる…。


「…孝宏」

「…了解しました、〝理事長〟…此方でも調べておきます」

「会議は一度解散しよう、〝正体不明〟の事も後回しだ」


そして会議はお開きと成り、彼等彼女等は其々が問題解決の為に動き出す。


(良し、コレで少なくとも〝私〟が中立、ないし味方で有ると印象付けられたか?…良い演技だったよ〝狡知〟!)

(そうだろうそうだろう!…それに、フフフッ、貴重な〝映像データ〟も手に入れられた!)

((帰って分析と洒落込もうか!))





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