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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第七章:神殺しへの道
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肉鉄の械天使①

――グチュッ…クチュッ…――


『嗚呼、勿体ない…勿体ない…君は実に勿体ない…♪』


気が付けば…己は仄暗い、まるで何か後ろ暗い物を隠すように、不必要なまでに灯りを落とされた室内で己は眠っていた。


――ジジジジジジッ――


『〝不死の霊薬に鱗の盗人〟、〝不老の薬に偽りの猛毒〟…決して多くは無いが、しかし…それでも確かに、その目的の果てが如何なる末路を辿るのか…君達は知り得ていたろうに…実に愚かな〝末路〟を選んだものだ』


――ザクッ――


〝否〟……〝起きている〟、〝見えている〟…〝聞こてている〟し、〝感じている〟……その上で、己は思う此処は〝地獄〟だと。


『〝木偶人形に狂った心臓〟…〝肉体の風化〟を恐れ、〝朽ちない肉体〟創り上げ、魂を移植する〝不死〟…成る程発想は悪く無いが、しかし〝お粗末〟だ』


自身の〝魂〟を弄り回される苦痛が〝己〟と言う存在の所有する全てに駆け巡る…荒ぶる己の抵抗は、しかし眼の前の〝ソレ〟には何一つ意味を成さず…ただ虚しく男の言葉は続いて行く。


『〝魂と肉体の分離〟は、それだけで高位の魔術師と張り合える技術だ…何せ、〝肉体と魂〟は密接に繋がっているからだ…肉体の影響は魂にも同調換され、魂の影響は、肉体へと伝播する…分かるかね?』


――ザクッ――


『ソレを〝半端な理解〟で行い、杜撰な儀式を行った末路がソレだ…〝凡そ健常とは程遠い錆鉄の肉体〟に、〝自我の希薄な狂った魂〟…魔術回路の出来も悪い上、儀式の効果はねじ曲がり、〝呪い〟として〝不死〟を与えられる始末……最早君1人では、〝死にたくても死ねない〟状態だった訳だ…因果応報極まれりだねぇ?』


――ザクッザクッ――


まるで嘲る様にそう淡々と紡いでいた、鉄面皮の男は…その刹那、その顔を狂気に歪めて嗤い…爛々と輝く〝眼〟で己を見た。


『だが、君は実に運が良い…君には〝私〟が…事〝魂と肉体〟の作用に関してはプロフェッショナルな〝探求者()〟が居る……そうだとも、私なら君を助けられる、君を延々と続く地獄から、解放する事が出来る』


その口から筒がれる言葉は、その無慈悲な〝所業〟を為した本人とは思えぬ程〝甘く〟…己の心を揺さぶり、苦痛を忘れさせる…そんな己の様子に…言葉に反応する己の様子を見てか、その男は益々と笑みを深くする…。


『――利害は一致している筈だ、君は〝この地獄〟を抜け出したい、私は都合の良い〝駒〟が欲しい…私が君の〝呪い〟を上手く処理しよう…その〝対価〟に、君は私に従い給え…コレは〝契約〟だ』


男はそう、その顔を悪辣に染めて言う…ソレは〝明らかな破滅〟の提案だった…だが、それでも…。


――〝キュィィンッ〟――


『ッ♪……いや結構!…実に話が早いね君は♪』


例え罠で有ろうと、こんな様で延々と眠り続けるよりはマシだ…と、己はそう…声無き声で男へ吐き捨てた。


『――無論、無論そうだろうさ…君とて成れて果てども〝魔術の者〟だ…良く言ったよ君♪』


その言葉に男はそう頷くと…灰色の視線に狂気の赤を浮かばせて、己を〝魔力〟で包み始める。


『――それじゃあ、〝契約〟も成立した事だ…手早く〝済ませよう〟…コレが〝君〟の新しい〝器〟であり――』


その魔力は黒く…だがただ虚無が拡がるだけの〝黒〟とは異なる……無数の色が混ざりあった果ての様な〝混沌の闇〟を纏い…己へと、その魔力を注ぎ込み、魂に染み渡って行った…眠る様に意識が落とされる…その直前――。


『〝試練の先鋒〟たる、〝君〟へ与える〝力〟だとも……存分に扱うが良いさね♪』


そんな、男の独り言の様な声を耳にしながら……〝己〟――否、〝我〟の意識は、急激に〝浮上〟し――。


――ドクンッ――


その刹那……〝光〟が、己の目に〝差し込んだ〟…。



●○●○●○


――ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ!――


脈打つ〝鼓動〟に、私は、俺達は…ただ、静かに、その〝瓦礫の中〟から這い出す〝ソレ〟を見る事しか出来なかった…。


その鼓動が、己の物か相手の物かさえ…分からない、ただ分かる事は〝2つ〟……〝試練〟は、未だ終わっていないと言う事…そして――。


――ガッ…ガッ…ガッ…――


〝眼の前のソレ〟は…先程の〝巨人〟と比較する事さえ無意味な程…〝絶対的な力〟を内包していると言う事だった。


「■■◆◆◆◆?」


ソレは、此方からは聞き取れない様な不快な〝雑音〟を言語に…此方を見て紡ぐ、無機物な以前の姿とは一転、赤く肉々しい肉体を持ち、雌雄の特徴を兼ね揃えた様な佇まいは悍ましくも艶めかしく…白い骨の様な〝殻〟を仮面の様に貼り付けた其処には、無表情な人間のパーツ、〝空洞の眼〟、〝削ぎ落とされた鼻〟、〝引き裂かれた口〟、〝縫い付けられた耳〟が有り…その頭上には――。


――ギギギギギギギッ――


頭部の少し上を漂う〝肉の冠〟…或いは錆び付きながら回転し、苦悶の声を上げる〝骨肉の歯車〟が…その存在を、より〝異常な存在〟で在ることを証明するように其処に在った…。


「■◆◆■■●●●」


己等が動かない事に、何を思ったのか…その、敢えて形容するならば〝肉の天使〟だろうか…その化物は、自身の身体から漂う魔力を、自身に集約させ…何かを紡ぐ…その刹那。


――ゴオォォッ!!!――


焔の外套が現れ。


――ビキビキビキビキッ――


氷の〝鎧〟が天使を覆い。


――ブォォンッ――


小さな〝赤い魔術陣〟が、天使の背後に現れた……そして、その瞬間。


「――■■▲▲▲▲」

『ッ――』


6人へ、凄まじい殺意と敵意が…肉の天使の、眼の無い空洞の瞳から飛び出した…刹那、6人はただ、反射的にその場から全速力で〝逃げる〟……その逃亡は〝正しかった〟…何故なら。


――『―――ッ!!!』――


その刹那、先程自分が立っていたその場所が…〝焼き払われた〟のだから。

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