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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第七章:神殺しへの道
251/319

そして合宿へ…

――ゴゴゴゴゴッ――


巨大な〝霊体の腕〟によって、巨人は見る間に…大地へと押し込められて行く…その光景を見ながら、足元の〝二人〟は快活に笑い…刃を抜く。


「ほっほ〜う!…良いのう良いのうッ、儂の好みとはちとズレるが、あの小娘も中々〝美味そう〟じゃなぁ!」

「アレが土御門当主の実力の一端…!……フフフッ…何れ手合わせ願いたい物だ」


刀がスラリと音を立て、二人の笑みはより獰猛に…その視線はより獣の様に歪み…その口からは、熱気の篭った新鮮な殺意が…溢れんばかりに吐き出され…巨人を射貫く…。


「小僧…貴様良い〝刀〟を創るのう?」

「コレで貴殿の首に迫れるかどうかと言う塩梅だがな…さて」


二人は徐々にその速度を加速させ…互いに剣を振るう最高の瞬間を待ちながら…隣の〝競合相手(ライバル)〟へ挑発を投げる。


「〝何方が先に敵を殺せるか〟」

「応よ…一丁、〝勝負〟と行こうではないかッ!」


その時、遂に霊体の腕の拘束に体勢を崩した巨人が、その胴体を地面へと倒れ込ませる…そして、その巨人の双眸が下を向いた瞬間。


――カチッ――


「「ッ―――!!!」」


二匹の〝剣鬼〟は…それぞれの〝剣閃〟で持って……巨人の土塊の身体を〝斬り裂いた〟…。


――ズバンッ!!!――


片や、胸を斜めに断ち切る…一撃必殺の〝霜の剣閃〟…。


――バラッ――


片や、その肉体の全ての部位を余すこと無く〝斬り刻む〟…〝獣の剣閃〟…。


静謐と激動…相反する二つの剣戟が、巨大な巨人の〝肉体〟を斬り刻んだ…そして。


「――美味しいところ、貰うわよ?」


残ったその頭部を…空を突き抜ける、緋色の淑女がその爪で持って斬り裂いた。



それは開戦から3分と経たない…〝決着〟……ソレを――。


「――oh…さっきお湯入れたばかりなんだけど…」


彼岸の先に居る、〝元凶〟の男はインスタントのカップを片手に見詰めていた…。



●○●○●○


「いやいやハッハッ、分かっていた、分かっていた事だがねぇ諸君ッ…流石に早過ぎないかい?」


――ズルズルズルッ――


私はそう言い、倒れ伏す巨人と…その側に集まる四人組に歩み寄りながら…半分乾麺なカップ麺を啜り…巨人の腕へ登る。


「一応〝試験用〟に調整したとは言え…そう簡単にやられる様な処理はしていなかったと思ったが…君達を過小評価していたかな」


――ズボッ――


そして私は…半壊した巨人の頭部の…その左目に腕を突っ込み…その中を弄る。


「数分で〝コレ〟を機能不全に陥らせるとは思わなんだ…お陰で私はこんなにも硬いインスタント食品を口にする羽目に成ったよ…結構良い値段するんだよ?…」


そして、その眼球の奥で絶賛〝修復中〟の核を抜き取り…ソレ〝握り潰し〟て皆へ労う。


「それじゃあまぁ、私の目的は達成されたし…少し私の〝工房〟で休んでから解散と言う事で――」


そして、振り向いたその瞬間…。


「「……まだ斬りたん(ない)」」


私を、二つの視線が射抜き…私は己の背筋にびっしゃりと冷や汗が滲んだのを感じる。


「……いやいや、流石に勘弁しておくれよ、コレは戦闘用ボd――じゃなくて装備は持ってきてないんだ…だから君達に付き合うのはまた今度で……」


身の危険を感じ、私は咄嗟にそう返す…しかし、それでも二匹の視線は外れない…その時。


「――あら孝宏、貴方武器無しでもある程度戦えるでしょう?」

「それに貴方、魔術主体なんだから触媒1つ有れば問題無いんじゃない?」


字波君と土御門稲魅君が…嫌らしく笑いながらそう焚き付ける…クッ、余計な事を――ッ。


――カチャンッ――


「「……いざ、尋常に――」」

「ッだから待ち給え!…そうだどうせなら後一匹似たようなのを――」


――ヒュンッ――


「「――〝勝負〟!」」

「――ならせめて一対一にしたまえよッ、流石に君等レベルを同時に相手取るのは面倒――うおっ!?…話を聞け!!!」


そうして、私の説得は虚しく…私は二匹の剣馬鹿を相手に逃げ回る羽目に成った……おい其処の二人ッ、何外野から私を攻擊してるッ…クソッ助けてくれ〝心異体〟――〝要請拒否〟!?…。


「「――貰ったァ!!!」」

「止め――ウギャアァァァッ!?!?!?」


土塊が横たわる平原に…私の悲鳴が悲しく木霊す……されど悲しきかな…私に手を差し伸べる救世主は居らず…私の声だけが虚しく響き渡るのだった…。





○●○●○●



――パラパラパラッ――


『ッ……何、今の声?』


涼やかな教室の中で…黙々と課題を読み解いていた6人の少年少女達がふと、己等の耳に届いた幻聴に…ポツリとそう呟く。


「『――気にするな、ただの気の所為だ』」


ソレを、白猫のアルが否定し。


「『そうだ、お前達は気にせずその問いを解いていくが良い』」


梟のアドラがソレを首肯し…少年少女達に勉学を促す。


「『ソレが終わったら一休憩ね!…最近お菓子作りに挑戦してるの!…あ、お花さん達には、』」


ソレを見ながら、緋色髪の少女はその燃えるような赤い視線を輝かせ…バスケット一杯に焼かれた〝焼き菓子〟を手に彼等を応援する…。


使い魔と魔術師達の勉強会は静かにつづき…その様子をチラチラと見ながら、一匹の黒猫と毛玉は本棚の〝本〟を読み漁る…。


「『認めるのは癪だが…やはり、あの男…魔術の知識に於いては〝一流〟だな…』」

「『それだけじゃ無いのう…魔術薬学、魔道具工学…魔術に関わらる技術の殆どが現時点の〝人間社会〟で到達し得る範疇を超えておる…そして恐らく…それは〝魔人〟と言う種故…と言う訳では無さそうじゃな…』」


そして互いに声を潜めながら…二匹の獣はこの部屋の主について思考を巡らせる…。


『……』


そんな二匹を静かに見詰める〝無機質な視線〟に…誰一人気付く事は無く…いや、ただ〝一人〟だけが…その〝視線〟に気付き…穏やかな少女の肩から…その視線に対し…警戒する様に見詰めていた…。


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