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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第七章:神殺しへの道
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災害の有効活用

「――驚いたかい?…さっき迄は現代的なコンクリートジャングルに居た筈が、今は絵物語の様な草原と空だけの世界に居る…無論〝幻覚〟の類では無く…〝此処と彼処〟は明確に違う〝座標〟に有る物だ」

「〝異界〟…〝空間移動〟かしら…?」


私は彼等へ語る様にそう言い、彼等へ謎掛けを送る…すると、土御門稲魅はそう言い…私の〝術理〟を解く…流石は天下の〝土御門〟…魔術に関する知識は日本一と言える。


「ザッツライト!――…より詳しく言うならば君の所の〝神隠し〟とは違い…此方はより〝現代的解釈〟の下…〝空間移動〟を可能にしたと言うべきかな」


私は彼女へそう言いながら、開け放たれた〝扉〟へ近付き、鍵を締める。


「〝扉〟とは〝境界の侵入口〟…隔てられた場所と場所を繋ぐ〝穴〟である……現代文明の発展は、汎ゆる伝承に〝新たな解釈〟を与え…同時に、現代文明が生み出した汎ゆる〝物事〟に対しても…汎ゆる魔術的解釈の余地が生まれた…コレもその一環だね」


〝扉〟が〝世界の出入り口〟…ならば潜り抜けたその先は〝異なる世界〟である筈だ。


尤もソレは飽く迄も〝補助〟…実際に〝世界〟を移動させるにはもう一手間掛かる。


「〝空間を移動する〟には〝この鍵〟が必要だ…材質はただの銀と鉄…多少の炭素結晶で構成された〝宝石鍵〟だが…コレは使用者の意思に感応し、〝望む場所〟へと導く〝祭具〟に成っている」


言ってしまえば〝どこでもドア〟ならぬ〝どこでも鍵〟だね。


「――まぁ、便利な日用品とでも思ってくれ給え…必要なら手配しよう……さて、それでは早速、〝君達を招集した理由〟について…話を進めていこうじゃないか」

「招集した理由?……強化合宿のスケジュールの説明でしょ――」


私の言葉に、字波君がそう言い掛けた……丁度その瞬間。


――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ――


地面が、振動と共に揺れ動き…凄まじい〝気配〟が草原一杯を覆い尽くす…。


「ッ――敵…か!?」

「――ムゥ…しかしコレは……」

「この〝魔力反応〟は…!?」


そして、その瞬間……。


――ズドォォッ――


宛ら、ゾンビ映画の様に唐突に…地面から柱の如く巨大な〝腕〟が伸び……地面を隆起させていく…やがてその腕は、苔生した肩を、錆び付いた胴を、軋む錻力の脚を地中から這い出させ…その巨体を〝見せ付ける〟…。


「Sー041…〝不朽の錻力〟…〝夜門〟内部で発掘…凄まじい〝魔力炉〟を保有する旧式〝魔動機〟…膨大な魔力生成量と自己修復機能により、破壊不能……魔力生成比率は魔素1に対して魔力が8以上…〝異常な魔力生成能力〟の秘密は、〝魔力炉〟に有り、その原材料は〝無数の生きた魔術師〟の魂だ」


私はそう説明しながら、彼女達を見る。


「〝山狗〟が保有していた〝Sクラス〟の妖魔……元は体長2m程度の古ぼけた錻力だったんだがね…〝強化合宿〟用に調整したらこうなった」

「合宿用にって、あんなのを生徒達に倒させるつもり!?」


その私の言葉に、字波君がそう反応し…私を睨む…稲魅君も同じらしく、私へ抗議の視線を向ける…対して、男共は――。


「「……(カチャッ)」」


起き上がる巨体に興奮と戦意を滾らせ…武器を抜いていた…相変わらず戦闘狂だね…。


「なぁに安心しなよ、相手はただの〝魔動機〟だ…〝核〟を潰せば簡単に壊せる代物だ…心配する必要は――」


私へ鋭い視線を向ける二人へ肩を竦め、私がそう言い掛けると…その瞬間。


――プチッ――


巨大な質量を纏った巨大な〝何か〟が押し潰し…私の身体を蚊の様に叩き潰した。


「――ッおいコラ…人が説明中だろうが」


――ビシビシビシッ――


その瞬間、私は…私を踏み潰した腕を粉々に砕き潰し…倒れ込む巨人を尻目に四人へ告げる…。


「まぁ兎も角…君達を此処に呼んだのは〝保険〟の為だ…生徒達が緊急事態へ陥った時の備えだよ…其の為にも、〝この程度〟の妖魔は軽く倒せると言う〝保証〟が欲しい訳だ」


――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ――


「――それじゃあ…〝頼んだよ〟」


そうして、起き上がる喪った脚を再生させながら巨兵は起き上がり、私はその世界から完全に姿を隠す…。


「ッ!?…ちょっと孝宏―」

「『※※※※※※!!!!』」


その瞬間、凄まじい殺気と共に……膨大な魔力の光が…四人の頭上を眩く照らした。



○●○●○●


――ドッ――


「アツッ!?――もうッあの人はァ…!!!」


魔力の光条が、頬を掠める…その熱と、凄まじい魔力の密度に私は、この場から消えた〝彼〟へ怒りを吐露する。


「ちょっと〝字波美幸〟ッ、彼奴頭可笑しいんじゃないの!?――どう言う教育してんのよ!?」

「ッ――あの人の両親に聞きなさいッ、降霊術使えるんでしょ!?」


そんな私へ、そう八つ当たりする土御門稲魅へ私はそう返し…拡散して放たれる魔力の〝光〟に手を翳す。


「――〝破壊(ブレイク)〟!」


その瞬間、私へ迫る無数の光条は刹那…魔力の残滓、〝魔素〟へと変わり霧散する…そして。


「〝吸魔(ドレイン)〟――〝血塗れの美套ブラッディ・エリザベート〟」


私はその身体に、魔力で編んだ赤く染まったドレスを身に纏い…〝巨人〟へ迫る。



●○●○●○



「――近接戦は苦手なのよね」


私は、光条の対象を私一人に変更した〝巨人〟を見ながら…そう言う。


――キュィィンッ――


「そう言えば…〝魔力炉〟は〝人間の魂〟だって言ってたわよね…彼奴……なら」


私は自身に向けられた膨大な魔力の収束を前に…数枚の呪符を取り出して…ソレを操る。


「――なら、〝コレ〟は効くかしら?」


――シャンッ――


ソレは私を中心に〝五芒星〟を描き…怪し気な魔力を滾らせる。


「『――ッ!』」


その瞬間…私目掛けて放たれる、魔力の光条…ソレは私を包み、消し飛ばさんと肉薄する――。


「〝降霊呪法〟――〝怨報の腕〟……貴方…随分と恨まれてるのねぇ?」


事は無く……その瞬間、巨人の首を、腕を…巨大な〝霊体の腕〟が掴み…その首を圧し折った。


「――何百人…何千人殺せば、こんなに〝恨まれる〟のかしらねぇ?」


私はそう言い…巨人へ群がる〝霊魂の群れ〟が形作る…巨大な腕へ、そう言葉を紡いだ。

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