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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第五章:取り憑かれた者達の狂騒曲
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海外出張

どうも皆様お久しぶりです、泥陀羅没地で御座います。


先日は投稿出来ずに申し訳ない、お詫びと言う訳では無く、単に今日は筆がノッただけですが二本目をば。

「――あら、私が何かした見たいな言い草ね」

「『――事実だろう?…君は少し私に過剰過ぎる部分が有るからね…彼等の顔色を見れば事の次第を把握するのは難しく無い…と、世間話はコレくらいにしよう、君達と違い私の魔力は凡百の域を出ないからね…今回の要件は〝2つ〟…〝私の状況報告〟と、〝現状の厄介事〟に対する君達への〝要請〟だ』」


不満気に眉を寄せる字波君へそう返しながら、私は八咫烏の職員、幹部諸君にそう伝達すると、彼等は直ぐに〝仕事人〟に変わる…流石日本、過労と仕事のディストピアは伊達じゃ無い。


「『先ず襲撃に関しては〝片付いた〟…どうやら色々と〝手違い〟が有ったらしい…コレに関しては〝事故〟として処理する様にして欲しい…犯人の情報は適当にでっち上げてくれ…で、問題は此処からだ…実はその〝先方〟、何やら〝面倒な問題〟を抱えているらしくてね…その解決に少し奔走する事になった…で、現在その問題を〝調査〟している最中だが…コレがまぁ言い辛いが〝人死に〟が出るかも知れない』」


私の口から飛び出すのは、事態を正確に捉え、その伝達に不足無い言葉の数々…その言葉を彼等は何食わぬ顔で書き留め、記録し、記憶していたが、最後の一文に強い警戒を滲ませる。


「『飽く迄も可能性だ、もしかすれば杞憂に終わるやも知れない…が、可能性は〝0では無い〟…最悪に備えておくべきだと判断した私は、君達に頼みたい…アメリカと協力して〝対策部隊〟を編成し…欲を言えば〝天鋼〟級を1名、八咫烏から出して欲しい…そうでなくとも〝金剛級〟を数人、戦闘実績の有る物を〝明後日までに〟頼みたい』」


私がそう言い終えると彼等は引き攣った様な顔で私を見詰める…うん、分かるよ…控えめに言って今の状況は『開発部署の許容量を超えた仕事を確認も無く持って来る営業部署』のソレだからね…私がソレをされたら間違い無くソイツの身体をバラバラの生物兵器に作り変えてる。


「『まぁ、無茶苦茶だと言うのは理解しているつもりだ…私としても交渉を君達に丸投げするつもりは無い…コレは君達全員に向けた〝依頼〟だと思ってくれ、報酬は用意しよう、交渉の手札も揃える…丁度アメリカ好みの〝研究品〟が蔵の中で寝息を立てていた所何だ、在庫処分に押し付けるのも悪く無い』」


新型の魔術兵装の設計図…天下のアメリカ様が欲しくない筈がないだろう…クククッ。


「『――と、言う訳で頼んだよ諸君』」


そして私は用件を全て伝え終えると、それと同じくして私の身体が薄らいで行く…〝魔力切れ〟だ。


「『座標は送付しておく―』――よ」


そして最後の言葉を言い終わらない内に、術は魔力を食い潰し…その構成を破綻させ、術は解ける。


――ジュウゥゥゥッ――


「――ヒュウッ、流石アメリカ…見て分かる油の暴力、最悪だね!」


そして私の眼の前にはコレでもかと並べられた高カロリーさを隠しもしない肉と揚げ物とパン、そして申し訳程度のサラダが視界を埋め尽くし…其れ等を頬張る〝彼等〟との〝夜食〟を始める。


――パクッ――


「暴力的な美味さだ、アメリカのこう言う知能指数の低い〝馬鹿さ〟は控えめに言って大好きだよ♪」

「『うむ…実に我好みの飯だ…おいタカヒロ、其処の肉を寄越せ』」

「お?…良い食いっぷりだな猫、このフライドチキンも脂が乗ってて美味いぞ!」

「『貰おう!』」


スパイスに楽しい会話を挟みながら…。




〜〜〜〜〜〜




――パチッ…パチパチッ…――


「――ふむ、また〝失敗〟か…しかし以前に比べて燃焼時間は伸びている…変換システムの稼働も順調だ…フフッ♪」


そして、時は経ち現在深夜2時を過ぎ…私は彼等の拠点の客間を間借りし…暇潰しの〝研究〟に暮れる…夏の終わりがけにしては妙に暑い部屋の中、その机の上には、無数の鉄の〝パネル〟に覆われた…〝真っ黒な燃え滓〟の様な何かが、その黒い体躯の中に未だ躍動する熱の輝きを秘め…煙を立ち昇らせていた。


「やはり生半可な〝術式〟では途中で焼き切れるか……となれば術式を維持する為の〝補強式〟を刻んで…」


静謐の中響く何かを掻き綴る音と男の独言…気分はさながら、超精密ボトルシップを組み立て様と集中する〝趣味人〟の様だ…確かに、趣味で有ることを否定はしないが…しかし。


「この〝試み〟が上手く行けば人類は先ず間違い無く〝発展のレベルを超える〟」


そう、この何気ない〝鉄と炭のボトルシップ〟は、その実…一皮剥けば世界を揺るがしかねない〝パンドラの箱〟なのだ…。


「希望と同時に絶望も振り撒くだろうが…其処は最早社会の摂理…私には変えられまい」


精々出来得る予防を講じるしか道は有るまい…。


「――さて、それは兎も角として…だ」


私は一頻り〝実験道具〟を弄ると、その手を止めて机に広げられた〝5人分の資料〟へ目を移す…。


「大体の情報は集め終えた……後は対策と、その準備だね…」


全員の〝症例〟が同じ物で有ることは喜ばしい…対策が楽になる…問題はその対策だ…幾つか有るには有るが…。


「〝時間が無く〟、〝切除は不可〟、〝寄生〟、〝悪魔〟…となれば――」


私がそう思考を巡らせていると、その時……。


――コンコンコンッ――


ふと、私の部屋の扉をノックする音に思考を閉ざされる…その横槍に微かな不満を抱きつつも、私は気を取り直してノックした〝何者か〟へ入室の許可をだす。


「〝入り給え〟」


その言葉から恐らく、数拍程間を於いて…ゆっくりと〝扉〟が開かれる。


興奮故にだろうか、脳が活性化しているが為の勘違いだろうか…その扉は〝開け放たれる〟…。


――ギイィィィィッ――


ゆっくり…不思議な程ゆっくりと……建付けの悪い扉特有の、何処か風情すら感じてしまう様な年季の籠もった扉の開閉音を調としながら、私はこの部屋に入って来た〝彼〟へ問う。


「――用件を聞こうか…〝何か用かな〟?」


私の紡いだ声の先には、私が向けた視線の先には…私が問うた意味の先には…悠然と立ち、私へ視線を向ける無口な〝ライト〟君が其処に立っていた……そして。


「〝不身孝宏〟……少し、話が有る…」


夜更けの客間に、館の主とその客は二人…炎の灯りが揺らめく中の密談に花を咲かせるのだった。

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