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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第四章:曲げられた神秘と論理
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憎悪の巣を壊す者

どうも皆様、泥陀羅没地に御座います。


本日の投稿を、それと昨日は投稿出来ずに申し訳無い…言い訳になりますが、現実が忙しく、疲労と睡魔で筆を取ることが出来ませんでした…口惜しや。


読者の皆様には申し訳御座いませんが度々同じ様な事が起きると思いますので、その時はどうか御容赦を。

世に驚天動地は数有れど、今この時程衝撃的で、同時に全ての物事を符号させてくる光景はそうと無かったろう……。


――ゴゴゴゴゴゴゴッ――


肉塊は脈動する、血肉を蠢かせ、目鼻口耳、顔に手と足、臓腑と髪を構築していく様は…如何に優れた目鼻立ちの人型で有ろうと、到底万人が許容出来る物では無いだろう。


眼の前に居る〝ソレ〟は、確かに…優れた容姿を持っていた…中性的な顔立ち、男にしては長く、女にしては短い長髪、色白の肌…その姿は数多人の目を引く〝優美〟と、浮世離れした儚げな〝神秘的魅力(ミステリアス)〟を孕んでいた…。


だが、そんな彼…ないし彼女の姿を見て私が最初に浮かんだ感情は…〝驚愕〟で有った…。


「――コレは…予想外な〝要素〟だね」


その姿は、無論身に覚えがなく…私の記憶の中でも該当する存在は居ない…しかし、良く知っている…その目、その身体の〝癖〟、〝肉体〟から滲み出す面影は、確かに――。


「〝私と同じ特徴〟を有している〝肉体〟…嗚呼、完全に把握したよ…この一連の事件の始まりを」


眼の前の彼彼女は、私の言葉にその猫の様な瞳を此方へ向けて、その顔を悪辣な笑みに歪める…。


「〝第五複製生命〟――〝心異体〟…識別名〝好奇心(キュリオス)〟…培養プラントで肉体培養中だった新たな私だが…遂先週の事、培養プラントに強力な認識阻害と電子偽装処理が発見され、消息を眩ませていた……まさかこんな所で遊んでいたとは」


…恐らくは、肉体の構築を促進させ、培養プラントのバイタルデータを改竄し勝手に街を散策していたのか。


「アレの性質は人一倍強い好奇心だ、謎を見つけると手を出さずには居られない…その向こう見ずな視野を求めて創った個体の性質が今回は裏目に出たのだろうね」


恐らくは、浄化施設の試験をしていた研究所の反応に惹かれて近付いた筈だ。


「事前に警告していたのだが……どうやら彼等は試験運用に出し渋って程度の低い〝触媒〟を使ったのか……ソレが君を引き寄せ、君に肉体までとは言わずとも強力な力を与えたのだろう」    


そして、その後に肉体の波長が合った〝好奇心〟を取り込み、己の器として利用していた訳だ。


「道理で、こんな大掛かりな〝儀式〟を秘密裏に進められた筈だ…好奇心が持つ膨大な知識を利用し、お前は愚かで優秀な手駒を作り、唆し…この状況を作り上げた…いや、まさかこんな大事件を起こした元凶の一端が私にも有るとは…予想外だったとも」


事態の全貌が徐々に暴かれ、私と彼とは互いに相対して煽り煽られを繰り返す。


「――斯様な事は最早気にする事も有るまい……コレよりこの世界は全て、私の世界に飲み込まれるのだからな」

「いやいや気にするとも…今回の件が公になり、万が一、億が一にでも字波君にバレてみろ…ただでさえ鬼な彼女が鬼違いの般若に変わる…世界の滅亡よりもソッチのほうが怖い……と、それは兎も角1つ聞いておこう…君と言う事例を保管する上で、君をどう呼称すれば良いだろうか?……君の名前は何かな?」


私の言葉にソレは少し考えると…


「ふむ……では、我が〝憎悪の心臓〟と〝真の悪魔〟へと新生した意味を込めて〝マスティマ〟と――」


そう己を新たに定義し、自信に満ちた顔で私へと向き直る……その瞬間。


――ズドォンッ――


そのマスティマ君の顔を巨大な魔力の塊が減り込み、彼を彼方肉の壁へと吹き飛ばした。


「〝呪文刻印(スペル・ルーン)〟起動…〝第一〟から〝第三刻印〟、〝第五刻印〟を起動」


その奇襲から始まった戦闘は、その瞬間…周囲の瘴気を取り込み拡張していく私の魔術陣と其処から放たれる百を、千を超える術砲の弾丸によって大規模な制圧へと様変わった…。


「さて憎悪の新人悪魔君、君に教えて上げよう…〝悪魔の戦い方〟と言う物を」


そして、私はそう言い…彼方、血煙に渦巻く膨大な〝憎悪の塊〟へと目を向けて挑発の言葉を口にした…。




●○●○●○


――グラグラグラグラッ――


「――ナニコレッ、地震…!?」

「いや、ちげぇ……〝殺り合ってる〟らしい……下の方で」

「『飛ばされて正確な位置は分からないとは言え、明らかに離れてる此処からでも分かる何て……どんな戦いなの…』」


大地は揺れ、空間が軋む…肉体の様な大地はその蠢動を明確に加速させ、その様相からは焦りの様な思いを感じさせる…そんな状況の中、異界にて抵抗を続ける〝八咫烏、山狗所属の魔術師〟の一団に加わった5人の有望株達は階下の住民と、其処に殴り込みを掛けた常識外れな〝自由人〟の所業に呆れと頼もしさに口を緩ませる。


「〝防衛陣地〟としては、及第点か…しかし、凄いな魔術学園の生徒達は…魔力量も凄えが何よりその運用が段違いだ…どんな授業受けてんだ?」

「凄く有益な授業を受けてますよ…気になるなら後日学園へ来てみればどうでしょう」


そんな彼等の雰囲気に、異界に急造された急拵えの〝防衛陣地〟は緩んだ空気で満ちて行く…しかし。


「諸君ッ、談笑は結構だが気を緩めるな!…我々の目的はこの異界の元凶を孝宏教授が討伐するまでの〝地点防衛〟だ!…月人君、九音さん…この地点で良いのですね?」


そう言い空気を締めるのは、勇ましい声に凛々しい顔立ちをした…美しく気丈な軍服の女性…その女性は己の言葉に場の驕りが消えた事を察すると、次にその視線を二人の若者へと向けそう言う。


「はい、孝宏先生との探索中に此処の通路の位置は把握しています……此処が階下から強力な敵が上昇してくる唯一の通路です…」

「此処の妖魔を押し留めながら我々は耐え忍ぶ……何時までかは分かりませんが…」

「――いえ、結構…それだけ分かればお任せ下さい…我々は山狗…妖魔達から善良なる市民の皆様を守る為の組織です…その程度の忍苦等、造作も御座いません」


――『※※※※※!!!!』――


そして、陣地の外から響き渡る声が…この場所で新たな戦火が生まれる事を示す…その場に居たほぼ全ての人員がその陣地から外界に表れ出た肉の獣の群れを見て、その目に冷徹なまでの覚悟を見せる。


「――総員、〝行動開始〟!」

『応!』


そうして震える異界で、二つの決戦が同時に幕を上げ…瞬く間に戦火は轟々と燃え上がっていった…。

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