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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第四章:曲げられた神秘と論理
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最悪の邂逅

どうも皆様こんにちは、泥陀羅没地でございます。

いや、前書きを書くのも久し振りですね…何時以来かな。


最近は作者の予定が予想外の打撃を受け、更新が不定期になったり、気力の低下と疲労のダブルコンボで内容がつまらなかったりと読者の皆様を飽きさせてしまっている気がして作者のメンタル細胞が死滅しています。


皆様もお仕事と休息のバランスを間違えないようお気を付けを…趣味を仕事に出来れば良いんですけどね…切実に。

――ポタッ…ポタッ…――


私の眼の前で、私に振るわれた冷たい殺意の刃は止まる。


「……」


沈黙が周囲一帯に満ち、その遥か遠くでは戦場の音色が微かに響いて来る。


「――ゴフッ、ブハッ…!?」


永遠に続くかと思われた、その沈黙は突如…今正に私を害そうとした男の吐血によって破られる…何が起きたのか、ソレは語るよりも見るほうが早いだろう。


「――〝対防郭魔術狙撃弾〟…それもかなりの大口径…いや〝対物ライフル〟による狙撃…酷いねぇ全く…〝人間に使う武装〟じゃ無いだろうに」


惨たらしくも、片膝を付き多量の血液に濡れる男の〝胴部〟を見る…その腹にはバスケットボール程の大きな穴が開き、本来ならば其処に有るはずの肉も皮も骨も何もかもが肉塊、骨片と成り周囲に散らばっている…尤も既に死屍累々のこの場所では、どれが誰の肉片なのか何て探す事も出来ないのだが。


「――何故…だ…!?」

「ん?…えぇ、まだ喋れるのかい?…その傷じゃ最小限のエネルギー消費でも保って一分其処らだろうに」

「――ゴフッ、ゴハッ…何故だ…!?」


私の言葉を無視しながら、死に引き摺られる身体を震わせながら、彼は血で満ちた喉から叫ぶ…既に大量の血が抜け、動く事さえままならない筈の人間がこれ程の〝大声〟を発せるとは…アドレナリンの過剰分泌でも起きたのかな?


「何故……貴様は〝死なない〟…!?」

「ん?……」


その言葉に、私は彼の目を見る…そして、その視線の先に有る光景を追うように私も己の胴部に目をやると…其処には。


――パカッ――


心臓部を中心に左胸へ巨大な風穴が開いていた、私の身体が有った…。


「……嗚呼、そうだった、そうだった…私も撃たれてたんだったね…忘れていた」


いや、思惑通り狙撃手に私諸共彼を撃たせる様動いたのは良いが、使用された弾丸の殺意に思わず忘れていたのだった。


「――行けないなぁ…この身体は、〝私の性質上〟…〝再現された身体の悪癖〟も再現してしまう」


本来は短期間を想定していた魔道具な為に、長期運用で起きる弊害は余り把握出来ていないんだよねぇ。


――グチュッ――


「まぁ、これで良いか」


――ポイポイポイッ――


私はそう言い、其処らに有る死体から適当な心臓を抜き取り、これまた適当な肉片を風穴に放り込んで少し〝整える〟…。


――グチュッ、ブチブチブチッ――


「平時ならいざ知らず、戦時に〝魔力〟を浪費する訳には行かないからね…うん、コレで稼働は問題無いか」


そして私が改めて向き直ると、彼は目に見えて〝恐怖〟を感じた様に身体を震わせる。


「……貴様…は」

「何だ、まだ生きてたのか…見ての通り、私は〝こういう性質〟でね…生憎とこの程度では壊れない(壊れた所で復元出来るし)…しかし、成る程…如何に強力な力を有する〝魔術師〟で有っても、〝対策〟を取られた上で奇襲されれば〝人間〟と大差無い様だね…うん、君達のはそのレベルか」


私がそう納得していると、ふとその男は突然懐に手を伸ばし、何かを引き抜く…。


――ガシャンッ――


ソレを私が認識するよりも早く、腰に帯剣している〝魔剣〟が震え…その〝声〟が私の脳に届く。


『〝殺せ〟』


と……その緊迫した声に、私は魔弾で男の顔を吹き飛ばし…直ぐに男が取り出した〝黒い何か〟を掠め取る…すると、首を失った男の手が、私の手に握られたソレを求める様に手を伸ばし…道半ばで力尽き…沈黙する。


「ふむ……何だろうか…コレは?」


そんな奇妙な現象を目の当たりにし、私はその手に握られた〝黒い球体〟を見てそう呟く……すると。


「〝知りたいか?〟」


そんな声が私の背後から響き…その瞬間、私の五体は見事に分割され地面に崩れ落ちる。


「――ふむ、成る程…」

「実に奇妙な〝体質〟だ…本当に〝人間〟なのかも疑問だな♪」


崩れ落ちる頭部で、私は声の元を見る…そして、その正体を〝理解〟する。


「コレは困ったね…君の相手は〝私じゃ荷が重い〟な」


其処に居たのは、白髪の〝男性〟…歳を重ね、しかしまだ若人の様に気力に満ちた精悍な顔付きの男は姿も、性格も、口調も何もかも違う……しかし。


「それに…少し〝不思議〟だ……」


私は知っている、いや…私だけが知り得る、その人物が何者なのか。


「お前とは…〝初対面〟の気がしないな」

「そうかい?」

(そりゃあそうだろう…この身体の〝設計(デザイン)〟はお前のモノなのだからな)


その男は、()の創造主で有り、この事態を調査する際に〝消息を絶った〟…〝本物〟の〝不身孝宏〟なのだから。


「――さて、早く立て…お前の〝性質〟を詳しく見せてもらおう」

其処(性根)は変わらないらしいな」


そうして私は、一分の時間も惜しい緊急事態に〝最悪の相手〟と相対する。


(困ったな……少し予定が狂ったか)


そして等々、戦場の〝混沌〟は、我々を次の標的に定めたらしい。



○●○●○●


「「不味い」」


静寂な戦場で一人の男が窮地に陥っている最中、静寂とは正反対の性質を持った戦場で二つの男女の声は重なる様に頭を悩ませる。


「チッ!…この執事野郎と貴族女、やるな…!」

「素の身体能力でコレかよ…!」

「「……むぅ」」


次々に己等へ降り注ぐ〝攻撃〟を躱すと、己等を囲む〝魔術師〟の集団…その攻撃は余りに苛烈を極め、彼等二人はその猛攻に焦りを覚える……訳では無い。


(不味い、非常に不味いねコレぇ…)

(監視を警戒して情報伝達を最小限にしていた事が裏目に出ましたか)


――ブォンッ――


((まさか味方同士で争い合う事になろうとは…!))


そう…情報不足による同士討ちが発生している事に頭を抱えていたのだ。


(どうする〝理知〟)

(どうするも何も…彼等を殺す訳には行かないでしょう)

(だよねぇ……なら)


――ダッ――


「ッお嬢様!――〝水槍〟!」

「――えぇ!…〝炎剣〟!」


二人は同時に魔術を行使すると、通常の〝水槍〟と〝炎剣〟とは遥かに規模の異なる魔術を行使し、ソレを八咫烏に向けて投げつける。


「ッ――何だその〝魔力〟!?」

「不味いッ、避けなさい刃!」

「無茶言うなッ…!?」


その膨大な魔力を消費する二つの魔術は眼の前で孤立している大男へと直撃し、水と炎が混ざり合い水蒸気が周囲を満たす。


「クッ!?…オイッ刃――」


仲間の一人が直撃した仲間の安否を確認しようと声を上げたその時。


――ダッ――


「ッ、しまッ――」


その脇を二人の男女が駆け抜け、霞と共にその場から姿を消す…そして、水蒸気が散り…元の景色へと戻ったその時、彼等は〝ソレ〟を見てその脚を止める。


「なッ!?――刃!!!」


――………――


其処には手足を拉げさせ、弱々しい息で辛うじて生命を維持する瀕死の仲間の姿が有った。

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