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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第四章:曲げられた神秘と論理
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錆鉄の翼を追って

――ガチャンッ――


「――おぉ、やっと来たね〝翔太〟君!…うん、ちゃんと必要な人員も輸送してくれて助かるよ♪」

「……」


時刻は午後1時を回り、現在…私は〝山狗〟が統括する〝山狗の情報処理場〟、領域内の汎ゆる情報を処理し、選別精査し、分類する〝データセンター〟のメインルームで、彼等八咫烏所属の職員達を出迎える…が、そんな私に帰ってきたのは〝困惑の視線〟だった。


「……なぁ、おい…」


――ガチャンッ――


「何かな?」

「――何で〝拘束〟されてんだ?」


彼等の視線に困惑するも、彼等の言葉に得心が行く…成る程、確かにそう言われればそうだった。


「……」

「いや〜ハハハッ!…実はちょっと、此処で〝勝手〟をやってね…絶賛〝監視中〟なのだよ」


何、手足に枷を嵌められ…〝魔術の行使を阻害する魔道具〟を嵌め込まれ、身動きが出来ず…身動ぎ一つしようものなら即座に身体中に武装が突き付けられるだけで、至って無問題(モーマンタイ)だとも。


「いや、それの何処が〝無問題〟だよ…ってかその状態でどうやって〝敵の位置〟を割り出すんだよ」


さて、そんな戯れも程々に早速本題に入ろうか…我々に時間は無い…人事を尽くすのに、1秒の無駄も許されないのだからね。


「何、君に頼んでいた物が役に立つ…ちゃんと〝ケーブル〟は持って来てくれたかい?」

「あ、あぁ……だが、こんな何処にでも売ってるケーブルでどうしろってんだ?」

「――〝私に挿し込め〟」


私が彼の疑問に答えると、メインルーム内には凍り付くほど冷たい沈黙で空気が満たされた…何故皆そんな顔で私を見るのかね?…。


「狂うなら一人で狂っていて下さい」

「失礼だね江理佳君……以下に突拍子もない〝荒唐無稽な話〟に聞こえ様と、これは必要な〝工程〟だ…私はこの手の話題で冗談はあまり言わないよ」

「ちょっとは言うんだな」


そりゃあ勿論、堅苦しくお話しても〝退屈〟だからね。


「さぁ、そうと分かったら早くする…君達は〝八咫烏の記録サーバー〟を此処と繋げて、後プロジェクターと其処のPCを接続し、そのPCに私と繋がったケーブルを差し込んで欲しい、翔太君、私のうなじ辺りに接続口が有るから、そのケーブルを差し込み繋げ給え」


そして、私の言葉と共に「うわッ、本気で有る!?」彼等は慌ただしく動き出し…それからものの数分で全ての準備は整った…。


――ピピピッ――


「ふん……宜しい、全て問題無く接続出来たね……じゃあ後は〝此方の手番〟だ…」

「あ、あの……一体何をやるんですか……?」


そしていざ、作業開始と言ったその時…私へ一人の職員が疑問を提起する…おや、彼女は確か…そう、〝夢宮香〟君…成る程、彼女も此処に来ていたのか…。


「――何をやるのか…か…うむ、実に率直な疑問だ…そしてうむ、君達の中で理解している者も居るだろうが、此処は今一度再確認としてお答えしよう…ズバリは――」


私の言葉と共にプロジェクター含めた周囲の機器が一斉に稼働する…その瞬間。


「〝大規模テロ〟の首謀組織の補足&追跡捜査…と言った所かな」


――ブンッブブブブブブブンッ――


プロジェクター(投影機)〟を通して私の脳髄から電化処理の施された情報が彼等の眼に映し出される。


「――って何だこの量!?」


其処に映し出されたのは、高速で移り変わる文字と映像の羅列…。


『本件の発生原因は〝2つの組織〟の衝突〟、〝衝突は仕込まれた〝計画的犯行〟で有り、2つの組織には共通の第三者…即ち〝黒幕〟が糸を引いている』

『黒幕は高度な魔術技能を持った〝妖魔〟…〝悪魔〟に分類する個体と推測され、人類に対する極めて強力な〝敵愾心〟を持っている事が判明している』

『現時点で入手している情報、〝首謀組織〟は〝科学至上主義〟と〝魔術至上主義〟の二つ、〝鋼の翼〟と〝崇高なる知恵〟と呼ばれる半世紀前に発足した〝テログループ〟』

『此処数カ月で急激に活性化しており、その影響範囲は最早無視出来ない程に広がっている』

『加えて、双方共に悪魔の力を行使する事が可能で有り、〝人間が化物へと変貌する〟例が発見されている』


其れ等は全て、周囲の人間がその内容を全て理解するよりも早く展開され、紙に垂らしたインクの様にジワリジワリと拡がって行く…そして。


『――〝鋼の翼〟の構成員から情報を摘出し、〝鋼の翼〟が保有しているで有ろう拠点を複数ピックアップ』

『私が君達へ要請するのは、このピックアップされた拠点の調査…だが前提条件として、ピックアップした拠点は既に放棄された可能性が高い』


やがて情報の洪水はその拡張を終えると、無数の文字が大きく現れ、〝1枚の写真〟を投影する。


『放棄された拠点を見つけた場合、〝コレ〟を起動して欲しい…コレは一種の〝環境再現機能シュミレート・システム〟を持つ科学と魔術のハイブリッドだ、上手く行けばコレで〝1年前〟の状況を再現出来る筈だ』


其処まで言うと、その文字列は消え去り広大な情報だけが残る…。


「――と、言うのが君達を呼んだ訳だ…悪いが協力してもらうよ…私だけでは〝時間〟が足りないからね」


ソレを呆然と眺める彼等に私はそう言い、彼等を正気に戻す……さて、コレで〝此処での作業は終わりだ〟…。



○●○●○●


――『※※※※※※!』――


叫び声が延々と響く…その声は不快に周囲の人間の耳を傷付けるが、其処に居る者達はその大半が檻に押し込められた…或いは拘束された〝複合獣〟を見てせせら笑い、絶叫を嘲笑う…。


「此処は?」


ただ〝一人〟を除いて…。


「複合獣の管理エリアですよ、此等は〝魔術師モドキ〟共との戦争に利用するつもりです…貴方方が討伐した〝複合獣〟も此処で管理していた個体ですよ」


その男は先導する人物の言葉を聞きながら、其処に運ばれる、己等が討伐した複合獣の死骸を見る。


「嗚呼、あの複合獣は他の複合獣の餌として利用します…そうして複合獣を食らわせ、複合獣の力を継ぎ足してより強い個体を形成していくのですよ」

「――成る程、〝蠱毒〟の様な物か」

「流石、その通りです」


そうして二人の男はその部屋を通り過ぎる……その時、ふと…後ろの男は〝足を止める〟…。


――ガツガツガツッ――


「……ふむ」


そして何かを訝しむように複合獣達を見…そして気が済んだのか、そのまま先行する男に追随する…それから暫くして、腹の満たされた化物達の、苦悶の叫びの歌が響き始めた。



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