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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第四章:曲げられた神秘と論理
141/318

魔術と科学

どうも皆様泥陀羅没地に御座います。


本日の投稿です

――ブンッ…ヒュンヒュンッ――


「ハァ!」


結美君が掛け声と共にその手の剣を振るう…その剣を視認し、その剣へ抵抗する為に刃を滑り込ませる。


――ガガガガッ――


『おぉぉッ…!』


彼等の耳にはきっと、重機の掘削音に聞こえた事だろう…しかし、それを受ける私にはそんな物など生易しく見える〝地獄〟を目にしていた…。


――ズォォッ――


辺り一面……いや、視界一杯に彼女が放った〝剣〟の残影が視える…流石の私も冷や汗が流れると言うものだ。


「〝身体強化〟と〝武器術〟の才能は…本当に怪物染みた物だねッ…!」

「それ防がれてる身からすれば嫌味にしか聞こえないよッ!」


違う、防がないと不味いから防いでいるのだ……流石に防郭魔術の起動の隙間を縫われたら余裕で死ねる……と言うか僅か〝0.08秒〟を狙って突ける時点で君は立派な魔術師殺しだよ!……と、心の中で私は叫ぶ。


コレも因果応報か…優秀な種に豊富な栄養と最適な育成を施し過ぎた…いやうん、ちょっと楽しく成りすぎたのは認めるがね。


――ギギィンッ――


私の剣と結美君の剣が触れ、拮抗し刹那の停滞を生む…その瞬間、驚くべき事に結美君が〝予想外の動き〟を見せる。


――ザッ――


「ッ――剣を…!」

「隙有りィ!」


彼女の最大の武器、〝卓越した剣技〟を、結美君は…彼女は自ら手放し私へ肉薄した。


「〝身体強化〟――〝脚力強化〟!」

「ッ――早」


刹那、私の視界から彼女が消える…その消失に僅かに彼女を見失ったその〝隙〟が命取りだった。


「――〝腕力強化〟…!」

「ッ――上か!?」


私がそう言い、上を見上げた時には既に…〝彼女の拳〟が眼前にまで迫っていた――。


「ッ――ハハハッ…これは、〝一本取られた〟ね…」


――ドゴォォッ――


そうして訓練場に轟音が響き渡る…その衝撃は凄まじく、周囲の野次馬達と私達を砂埃が隔てる程だった…いや、全く…。


「――〝とんでもない愛弟子〟だよ、本当に…」

「ッ――え!?」


私はそう言い、結美君の拳を肩から生えた〝黒い腕〟で受け止めながらそう言い…彼女を地面に放り投げた。



〜〜〜〜〜〜〜



「ずるいずるいずるいずるーい!」

「ハッハッハッ、そう大人は汚い生き物だよ」


膨れっ面でテーブルの菓子を頬張る結美君へ、ジュースを渡す…そんな彼女を椿君が苦笑しつつも穏やかに見詰め、彼女を慰める……すると結美君の癇癪が少しばかり収まり、変わりに私の腕を恨み半分興味半分の眼で見つめる。


「先生のその腕って何!?…あんなの反則でしょッ」

「――良い質問だね結美君♪…コレは私が研究していた〝万能装具〟――〝黒砂の魔導装肢(マギア・ナノマシン)〟と私は命名した」

「――へぇ……〝魔道具〟何ですか?」


すると私の話に興味を惹かれたのか、菅野君や巌根君も私の私室へと足を踏み入れる。


「――そうだとも、コレは現代に置ける〝高等科学〟と〝魔術工学〟の融合だ…コレがその〝設計図〟…だが、この図に描かれた〝マシン〟はミクロ以下の体躯で〝製造〟されている…幾億、幾兆と言う数を接続し、束ねる事でこうして肉眼で分かる程の〝実体〟を作る事が出来、各マシンにはそれぞれ〝魔術刻印〟が刻まれ、所有者の命令に沿った魔術を行使出来る…そして、〝耐久性〟は見ての通り、結美君の剛力を受けても耐えられると言う優れモノさ♪」


デメリットはこの極小サイズのマシンを何億と用意する手間暇費用と、コレを造る事ができる〝製造機〟が必要だと言う事……コレを造るには人類が後数度、科学的ブレイクスルーを引き起こさねば足掛かりは掴めないだろう…これだけの〝知恵〟を持ちながら実行に移さなかった〝悪魔(アスタロト)〟君は、やはりそれまでの存在だったのだろう。


「――そこまで豪語するならよ先生、俺にもいっちょ〝手合わせ〟してくれよ」

「「私(僕)も」」

「フフッ――良いとも…折角なら他の玩具も試してみようかな♪」


そして、私と闘争本能に目覚めた四人の魔術師と一人の平和主義者は、その古びた教室を去り…夕暮が近付く空の下に出るのだった…。


●○●○●○


「――ほんま何なん、〝アレ〟?」


驚く様に、呆れた様に…その胡乱な優男は屋上から階下の大地の騒乱にそう言葉を紡ぐ。


「いやぁ、〝巌根家〟の連中は元から〝武人の巌根〟って言われてるから分かるで?…〝土御門〟は〝妖術の土御門〟…他の子らもあの歳で化物揃い…やけどねぇ」


其処には、四人の〝小さな怪物〟を相手に〝魔術を使わず〟大立ち回りを繰り広げる〝青年〟の姿が有った。


「〝魔術〟の知識、〝科学〟の知識はずば抜け、戦闘技術も申し分無く…完璧超人過ぎひん?」

(幸いなのは〝紅月〟みたく〝魔術主義〟を明確に問題視してない事と、本人が〝他者に興味が無い〟事やけど…)

「う〜ん……〝此方〟に引き込むのは…ちょっと微妙かなぁ…」

(作戦結構は1週間後……それまでに)

「……どうにかせんとなぁ」


如月秋久はそう言い、悩ましげに頭を抱え……彼等の戦いに集る野次馬に目を向ける。


「……僕だけ何でこないハードモードなん?」


そして…そう、悲しそうに呟くのだった。




〜〜〜〜〜〜〜



――ピキピキピキッ――


「待てコラァッ」


――ガシュンッ――


「ハッハハハーッ!…嫌だよ、君等四人相手に止まったら死ぬだろう!?」

「捕まえたッ――え!?」

「〝投影分身(ホログラム)〟は魔力探知に引っ掛からないだろう?」

「小癪なぁ!」



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