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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第一章:謎だらけの教職者
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緊急事態発生

皆様どうもこんにちは、泥陀羅没地に御座います。


今話は少し短いですが御容赦を…m(_ _)m

「〝視覚強化〟――〝鷹の目(ホーク・アイ)〟」


屋根屋根を飛び回り、空の上から周囲を〝視る〟…。


――キュキュキュキュィンッ――


「〝標的指定(ターゲット・ロック)〟、〝視覚同調(シンクロ)〟…〝魔弾〟――〝魔弾の射手〟」


其処には〝6匹〟…コソコソと隠れ潜み、物陰から道行く人間を狙う〝鼠〟が居た。


「〝追尾〟、〝拡散〟――〝発射〟」


――ドゥンッ――


放たれた弾丸は魔術陣を通り、六つに分かれて飛翔する…〝コレ〟で良し。


「おい、待――」

「周囲の妖魔は粗方処理したよ、さぁ次のエリアへ行こう、早くしたまえ」

「ッ巫山戯んなテメェ、たかが中銀級の癖に――」

「……はぁ、良いかい君、我々の職務は〝夜門〟発生中、その間不在と成った彼等の代わりに周辺を〝警備〟…そして妖魔を見つけ次第処理する事だ…君一人の言う事を一々鵜呑みにして間に合うはずだった〝生命〟が守れなかったならばその責任は誰が負うと思う?」

「ッ…テメェ誰に物言って――」

「誰に、君にだとも…位の上下は関係無い、君自身の〝能力〟に合わせていられないという話だ、無駄話は以上だ、次のルートに――」


人気の無いビルの屋上から降り立ち、怒り心頭な彼との無意味な会話を切り上げ、いざ次の地点へと足を前に出した…その瞬間。


――ピピピッ――


『聞こえるか、聞こえるかッ!?』


無差別に飛ばされた〝魔力通信〟から切羽詰まった声が響き渡る。


「「ッ!?」――あぁ、聞こえているよ、場所は?」

『〝廃工場の夜門〟だ!…今直ぐ〝金剛級〟の魔術師を呼んでくれ!…後――ガアァァァッ!?!?』


その魔術師から情報を引き出していたその最中、その魔術師は何者かに襲われたのかその〝通信〟が途絶する。


「ッ…来たまえ〝安土〟君、君の有り余る魔力の使い道が出来た」


私は相棒へそう言いつつ〝廃工場〟へ向かい、今得た情報を魔術師局へ送信し次に〝字波君(万が一の切り札)〟へ連絡する。


「『字波君、緊急事態だ…廃工場の〝夜門〟で問題が起きた』」

「『了解したわ、今直ぐ向かう…貴方は?』」

「『今向かっている、魔術師局の連中には報告済みだよ』」

「『流石、〝夜門〟の拡大は最悪周囲の民家も巻き込んで巨大に成るから、直ぐに近隣住民に避難勧告を出すわね』」

「『了解…私はどうすれば良い?』」

「『貴方一人?』」

「『いや、扱い所の難しい爆弾が一つ有る』」

「『成る程…じゃあ周辺住民の避難を優先して…〝夜門〟の侵食速度は内部の瘴気の濃度によって変わるの、貴方一人なら内部の妖魔を処理して侵食を抑えられたかも知れないけど…』」

「『…私の正体の露見に繋がるやも知れないと言う訳だね?』」

「『そう、だから出来るだけ〝中銀級〟相応の動きをお願い』」

「『任せ給え』」


そうこう言っている間に視界の先に〝見えてくる〟…其処は何十年も前に遺棄された〝廃工場〟…その工場全域から溢れ出すドス黒い気配からは、成る程確かに…〝強力で、狡猾な気配が感じ取れる〟…恐らく此処まで侵食され、発覚が遅れたのは〝隠蔽〟が施されていたからだろう…中々狡猾な〝存在〟が居るらしい。


「コレは随分と〝大きい〟ねぇ?」

(…瘴気が目に見えて濃いね…一体中で何が有ったのやら…?)

「…いや、それよりも先ずは――」


――『ガヤガヤガヤッ』――


工場から意識を周囲に向ける…恐らくは〝魔術局〟から避難警告が成されたのだろう…住民達の〝大移動〟が行われている。


「……此方側は問題無いか、ならば後は〝反対〟の――」


私がそう言いかけたその瞬間、背後から凄まじい勢いで私を追い抜く者が居た。


――バッ――


「ッフフハハハッ!…やっと来たな俺の〝出番〟が!」


ソレは、そう言いながら周囲の屋根を踏み壊しながら高笑いと共に一目散に廃工場へ突入する〝安土大晴〟の姿だった。


「ッ!…何をしている安土大晴…現状我々が成すべきは住民の避難だ、直ぐに戻れ!」

「黙れッ、あの程度の〝夜門〟なら俺一人で何とか出来るッ…テメェはそうして何の功績にも成らねぇ〝人助け〟〝でも〟してやがれ!」

「…ハァ、そうかい?…じゃあ好きにすれば良い」


〝安土大晴〟はその言葉を聞いていたのか…否、聞いては居なかったのだろう…彼はその内に燻る汚泥の如き下劣な欲望のままに、〝夜門〟へ向かう…その背を見送る影の〝双眸〟は酷く冷めた目をし…そしてその目を別の場所へ向けてその場から消えた…。


「――精々〝爆弾〟らしく、役に立ってもらおうか」




●○●○●○


――グチャッ、グチャッ、グチャッ――


〝一口〟齧る……その肉を。


〝二口〟食らう…その〝苦悶〟を。


「ゥゥゥ…ァァァ……」


その声を聞く度に、その〝恐れ〟を耳にする度に…己の心が柔和に満たされ、〝心地良い〟…。


しかし、まだ足りない……この〝憎しみ〟を癒やすにはまだ〝足りない〟…。


ただ生まれただけの我等の〝悲しみ〟を…身勝手に捨てられた我々の〝絶望〟を…物陰を這い、腐った肉を啜らねば成らない〝屈辱〟を、安全等欠片と存在しない世界への〝恐怖〟を…我々を〝棄てた全て〟への〝憎悪〟を満たすには…まだ、まだまだまだまだ…〝足りない〟…。


『ナァァァゴォォォッ…!!!!』


我等を癒やす、より大きな〝絶望〟を…より悍ましき〝恐怖〟を人間へ与えねば、この〝(復讐)〟は満たされない。


より多く喰らい、より多く〝奪わねば〟……。


――『……』――


『ッ!…―――ッ♪』


見つけた、ミツケタ、ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタ――。



暗闇を蠢く〝ソレ〟は…その〝存在〟を嗅ぎ取ると音も無く進む…。


――フッ――


異界と化したこの〝己が領土(廃工場)〟の隙間から漏れ出す、〝偽りの月光〟は照らす…暗がりに満たされた〝廃工場〟を駆ける…〝二又〟の尾を持つソレの姿…その断片を。



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