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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第三章:蠢動する人成らざる者
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公平な取引を

どうも皆様こんにちは泥陀羅没地で御座います。


今日は珍しく気力が余ったので2本目をば…。


コレで本章は終幕…次次回からは新章の開幕と相成ります、楽しみ、楽しみですねぇ…。


次回は少し…本編とは少し違う言わば作者の〝悪癖〟、〝発作〟の様な物となります、興味がない方は読み飛ばして問題無いものです、ええ…ちゃんと本編のお話も投稿致しますので御安心を。

――〝魔弾の射手〟の結末は分かりやすい〝勧善懲悪〟の結末だ――


「アガーテへと迫る凶弾は、彼女が数日前に賢者より贈られた〝白薔薇の花冠〟へと当たり、跳弾し、悪魔へと魂を売った〝カスパール〟を射抜いた…罪人は死に愚かな狩人は悔い改めて物語は締め括られる…さてではこの〝状況〟はまさに〝ソレ〟だ…尤も、この〝凶弾の主(ザミエル)〟は原典よりも貪欲だが」


――ドサッ――


崩れ落ちる、一人の老人……その右肩から胸部に掛けて〝穴を開けた〟その老人へとそう語りながら…〝私〟は己の胸に空いた風穴に赤い血の幕を下ろしながら〝語る〟…。


「まさかまさか…一人で三役を熟さなければならないとは…私には〝脚本の才能〟は無さそうだ」

「クッ……ハッハハハッ…しかし、それでは貴様も〝死ぬ〟…その傷で、〝核たる心臓〟を貫かれて貴様は生きて居られるのか…!?」


その言葉に老人は、ぬらりひょんはそう言い、血塗れの顔に嘲弄な笑みを浮かべる…その疑問は尤もだ。


「――その心配は無用だとも…〝何事にも備えろ〟だよ」


私はそう言い、己の懐から〝白い四角の箱〟を取り出す。


「〝宝物庫(シソーラス)〟……〝解錠〟」


そしてそう言うと、白い箱は…私の〝宝物庫〟はその形体に刻まれた無数の魔術文字を蠢かせて音を立てて〝開く〟…。


「私の身体は特別性でね、以前様々な実験にこの身体を用い…その挙げ句に同仕様もない破損で痛い目を見てね…だからその対処法を用意した…つまりは――」


私はそう言いながら宝物庫の開いた〝虚空〟に手を伸ばし…目的の物を引き抜く…すると、それを見たぬらりひょんと酒吞の目には激しい動揺と驚愕の色を帯びる……その理由は――。


「肉体の〝部品化(パーツ化)〟だ、クローニング技術のお陰で予備の四肢に手足、少しコストは掛かるが〝心臓〟でさえ創れる…科学が〝魔術〟を滅ぼしたのにも納得が行くと言うものだ…彼等が求めてやまない〝神々の領域〟…その一つ、〝生命の創造〟を、〝複製〟と言う形で成し遂げたのだから」


私の手に握られた赤々と脈打つ〝人の心臓〟が為だろう。


――ヌプッ――


「さて、核たる急所…心臓はこの通り…後はこの心臓が私の身体に馴染むまで安静にするだけで、私の肉体は修復を始める…後の問題は〝君達〟だ」


私はそう言い、立ち上がって彼等へと歩み寄る。


「君達程の〝妖魔〟は実に希少だ、殺して皮を剥ぎ、肉を切り分け、骨を削り出し、臓腑を摘出し、魂を取り出すのも良いだろう…特に君の妖刀は〝類稀な性質〟を持っている…是非手に入れたい…しかし、しかしだ諸君…私は君達を〝生かそう〟と思う」

「「ッ…!?」」


その言葉は彼女達にすればまさに予想外だった筈だ…何せ、完全に敵対している筈の相手がその敵の親玉を生かそうと言うのだから…。


「単純な話…〝私と契約〟して欲しい、契約により三方に明確なデメリットを課した上で互いに利益を提供する…言わば我々〝人間〟と君達〝妖魔〟でおける暗黙の了解と言う奴さ」


そう言うと、その青年は二人を見下ろし告げる。


「先ず…私が提示する事は簡単な3つの条件さ…〝1つ〟、〝私の生徒達〟には手を出さない事、分かりやすい条件だろう?…私が大事なのは私の〝生徒と友人達〟だけだ、私に関わりの有る者〝以外〟に何をしようと私は〝関与しない〟…尤も、私に〝そう言う依頼〟が回った場合はその限りでは無いがね…それに加えて〝2つ〟、君達の縄張りに居る野良の妖魔達の間引きを頼みたい…君達にとって利益にもならない様な妖魔達、我々にとって利益に成らず、かと言って害に成り得る者達の処理……そして〝3つ〟…〝三方〟にとって共通の敵に成り得る〝存在〟が現れた場合のみ〝臨時同盟〟を組む事…コレは〝人間〟と言うよりは〝私個人〟との同盟と言う事になるが…君達にとってもそう悪く無い〝契約〟だと思うが…どうかね?」


私はそう、沈黙し…そしてじっくりと思考を煮込む彼等の顔を見る。


「その契約を呑めば我々の生命は〝保証〟されるのか?」

「少なくとも此処で君達を殺すことはしない…何なら〝治療〟して帰すよ?」

「…それ以外には無いのかよ?」

「ん……無いね、今の所はこれだけだ、後は状況によって交渉はするだろうが、それの拒否は構わないよ、それは君達の権利だからね」

「……では、もし我々がこの契約を呑まなければ?」

「?……コレで終わりだとも、〝殺す〟よそりゃあ」

「「……」」


私の言葉にまた沈黙が流れる…そろそろ〝字波君〟の気配が近付いて居るので答えてほしいが…さて。


「「………分かった、〝契約成立〟だ(な)」」


――キュィィィンッ――


二人が同意する…すると私達の身体に刻印が浮かび…そして、肌に同化してその姿が消える…。


「さてそれじゃあ手早く〝治療〟しよう…不要な四肢は頂くが安心したまえよ、無駄に削ったりはしない…再生薬が欲しければ投与するがどうする?」

「自前で有る」

「儂は貰おうかのう」

「「(ニヤッ)…了解」」

「……何じゃ、寒気が…」


そうして私は手早く治療に移り、手術を始める…と言っても彼等の四肢や欠損を私の〝部品〟で埋めて形だけを元通りにしただけだが…そこはそれ、持ち前の治癒力で何れ元通りに成る筈だ。



そして―――。


――ザッ――


「孝宏ッ…!?」

「ん……やぁやぁ、〝字波〟君…そう走ると折角の髪が乱れるよ?」


彼等が彼等の部下に運ばれていく頃に、私と美幸君の2人きりと成る…。


「……大丈夫…よね?」

「ん?……嗚呼、既に治療は済ませてあるよ、かなりの消耗だから、数週間は激しい運動は出来ないと思うけどね…それに、残念ながら彼等の大将は〝殺してない〟…私では倒し切れなかったよ…済まないね」


――ヨロッ――


「おっと…流石に、血を無くしすぎた…〝アル〟…悪いが乗せておくれ」

「『……』」

「それじゃあ、一度戻ろう…言いたいことや説教はこの〝死線を生き延びた彼等〟を労ってからにしたまえ」

「えぇ、そうね」



かくして一夜の激戦は、その苛烈さとは裏腹に理想的な結末を以て幕を下ろした……。



余談だが、この1件は日本全土に放送されこの1件に賛否両論は有れど我が学園とその生徒達には多大な労いと功績を讃えられ、日本の未来を憂う者達の心を幾ばくかは救ったらしい……尤もその1件が報道されている裏では――。


――カリカリカリカリッ――


「まさか反省文を書かねばならないとは…それも100枚もだと!?…こんな物に何の意味が有ると言うのだ!?」

「『貴様がそう叫ぶ程度には十分罰として機能しているだろうよ』」

「後60枚よ、ほら…早く書きなさい」

「何も結界で閉じ込めずとも良いじゃないか……」


私は字波君によって、余りにも酷い罰を与えられて居たのだが……。






●○●○●○



――カタカタカタッ――


31■■年、8月12日


某国、■■■■州のとある打ち捨てられた廃教会にて、惨殺事件発生。


通報者は野良犬駆除を行っていた業者、近隣住民により野良犬が廃教会の周囲を根城にしていると言う情報を手に入れ調査に入った際、廃教会の教壇に十数名に及ぶ男女の死体が発見されたとの事…。


通報を受け、現地警察及び現地在住の魔術師が調査へと向かった…その調査の際、彼等は皆一様にその不気味極まる現場を目にした。



――〝|i will return from nothingness《虚無より我、帰還せり》〟――


それは血で綴られた文字であり、その死体は磔の如くに縫い着けられ…その教会のくすんだステンドグラスには赤黒い血で塗られた〝十字架〟のマークが描かれていたのだという。

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