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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第一章:謎だらけの教職者
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神秘とは古臭さ

「さて、前回は君達〝魔術師〟が知るべき知識の一つ…〝魔術〟を形成する文言、詠唱の媒介たる〝魔術文字〟を教えたね…では次のステップだ…〝魔術〟における重要な因子の一つ…即ち〝神秘〟についてお教えしよう♪」


コレは〝古代魔術〟と呼ばれる遥か昔の魔術を扱う者ら、或いはその類を相手取る際に非常に役に立つ。


「先ず〝神秘〟とは読んで字の如く…〝魔術〟と言う現象の顕現化においてそれを証明出来ない物に付加される物だ…噴火のサイクルも、津波のサイクルも現代では科学によって証明されてきたが、科学が未発達で有った文明の初期では、これらは己等の手には負えない存在…即ち〝神〟、〝上位存在〟によって成された試練、天罰と考えられていた…そんな科学のかの字も無い時代に生み出された魔術…即ち〝古代魔術〟が含有する性質だ…と言うのは魔術を齧る君達ならば知っていよう…では〝神秘〟とは具体的にどの様な作用を引き出すのかについては御存知無いだろう…当然だとも、そもそも古代魔術はその存在が稀有な上、扱いが非常に難しい…何故ならば古代の時代では〝神の御業〟とされていた物だからね…その威力は絶大、効果は異常…代わりに扱うのは正に神的な技術が居る…そして、現代ではそんな魔術を行使し、安定化出来る魔術師は存在しない上、そもそも〝神秘〟について研究している者達がそう居ない…そう凄く〝少ない〟…なんてったって情報が無いから進めようが無い、使えないから情報が集まらない、集まらないから〝研究〟する気も起きないと…〝担う要素〟に対して余りに不遇な立場なのだよ」


その言葉に生徒達がげんなりとした顔をする…そうだろう、魔術師ならば、知恵を求める者ならばその悪循環は遠慮願いたいだろう…。


「――しかし、裏を返せばソレは、未だ前人未到の〝領域〟だ♪」

『ッ!』


神秘の何たるかを抑えて居れば他の魔術師よりも研究と言う分野で一歩先を行く…知的競争と言う闘争の中でこれ程心地よい物は無いだろう。


「――と言う訳で早速〝教えよう〟!…〝神秘〟とは――」

「「ちょっと待て!」」

「ん?……何かね?」


私がいざ教えようとした最中、この教室において早速リーダー的立ち位置を確立しつつある〝土御門九音〟君と〝巌根氷太郎〟君が気付きましたと言わんばかりに立ち上がり指を指す。


「アンタ今自分で〝神秘は研究が進んで無い〟って言ってたろ!」

「そうですッ、なのにどうやって〝神秘〟を教えると言うのですか!?」


二人の言葉に周囲の生徒達も『確かに!?』と言わんばかりのハッとした表情で此方を見る…。


「何、簡単な疑問だね…私は確かに〝神秘〟を知る者は少ないと言ったが、〝私が神秘を知らない〟とは一言も言ってないよ?」

「「な!?」」

「そりゃ私は研究者だ、ソレも〝超雑食〟のね?…魔術と言う存在については片端から手を出してるし調べもしている…そして、当然〝神秘〟と言う魔術の重要な〝因子〟にも手を出したさ…生憎〝古代魔術〟を利用は出来なかったがね?」


全く口惜しい…〝アスタロト(悪魔)〟ならば軽々扱えたろうが〝(魔人)〟では魔力量は悪魔には及ばないのが惜しい…実物を見れば知見は得られたろうに…と行けない行けない。


「と言う訳で私は〝神秘〟について多少知っている…なので安心して聞くと良い♪」


私の言葉に二人は信じられない物を見るような目で見て…しかし気になるのかそれ以上何も言わず座る…さて。


「では早速〝神秘〟について説明しよう♪…神秘とはズバリ〝古臭さ〟だ!…簡単に言えば〝ワイン〟だよ〝ワイン〟」


おや?…余りに身も蓋もない結論に拍子抜けしたね?…でも事実なんだなコレが。


「〝神秘〟とは即ち…どれだけ摩訶不思議な物か、〝理屈で説明出来ない概念〟なのかの割合だ…その術の発案が古ければ古い程より〝強力強大〟な力に成る」

「――質問だセンセ、じゃあ何で家の秘術は簡単に破られたんだ?」

「――〝エクセレント〟!…良い着眼点だ〝氷太郎〟君…そう、神秘とはどれだけ〝古く〟、且つ〝不可思議〟かだ…では何故君や土御門家の秘術が簡単に〝分解〟されたのか…簡単な話さ、〝理屈〟で〝神秘〟を打ち消してしまえば良い!」


私はそう言い、魔術による投影で巨大なホログラムを創り彼等へ見せる。


「〝神秘〟は強大な反面致命的な弱点が有る…ソレが先述した〝理屈証明〟による〝神秘の抹消〟だ…例えば先程例に出した〝噴火〟…アレは遥か昔は〝大地の怒り〟、〝神々の天罰〟として恐れられてきた…だが、その実態は〝火山ガス〟が溶け合い軽くなる事で発生する現象だ…其処を証明し、その〝不可思議〟を埋めてやればその分だけ神秘は縮小し、やがて〝理屈〟のみと成る…そうなれば最早〝古代魔術〟はその〝神秘〟を恒久的に失うのだよ…だが安心したまえ、機能を喪ったと言えど神秘は多少は残る…だから君達の秘伝が失伝する何てことは無いよ」


それでも本来の権能は使えないのだが…。


「他にも世界の〝神話魔術〟と呼ばれる独立した〝古代魔術〟等…単なる〝神秘〟だけでは無い魔術についてや〝民話・伝承〟等が魔術に於いて如何なる影響を成すのかについても教えたい所だが――」


――キーンコーンカーンコーン――


「残念ながら時間だね……コレはまた次回にしよう!…それじゃあ諸君、次もまた講義開始前に軽いテストを始めるので、しっかり以前渡した〝魔術文字〟の資料を読み返し理解を深める様に!」


フッフッフッ、残念がっても無駄だよ…こうやって焦らし、良い所で区切る事で次の講義への意欲を高め、勉学の質を高めるのだ!…。



〜〜〜〜〜〜〜〜



――ジジッ…――


――キュィィィンッ――


「……講義の後で更に研究出来る何て、相変わらずの体力ね」

「昔は有るか分からない遺跡を探しに走り回ったからねぇ…持ち帰った遺物のコレクションを調べるのは凄く楽しいよ…特に今はただ年代を調べて分布を記すだけじゃなくて魔術的観点から何に使われどんな効果を持っているのか、対盗人用の呪術形式や偽装魔術何かも調べられる…研究者冥利に尽きるってものさ♪」

「フフフッ、まるで子供みたいね…でも無茶しちゃ駄目よ?…研究に没頭して過労死なんて赦さないわよ?」

「安心したまえ…コレでも自分の限界値は熟知しているさ」


流石に四つ以上の並列思考は時間単位での維持が厳しいからね…魔術で補助すれば可能だけど脳がウェルダンに…流石にあの痛みは魔人の身と言えども効くよ。



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