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魔人教授の怪奇譚  作者: 泥陀羅没地
第一章:謎だらけの教職者
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ア、コレ私じゃないか!?

――ゴゴゴゴゴッ――


いやぁ〜…怖いコワイ、コレが女性同士の喧嘩かな?…と言うよりは其処な美女が字波君に突っかかってる構図だけど。


「ん?…」

「ソレに、コレもどういうつもりなのかしらね?」


――シャアァァァッ――


そんな風に成り行きを見守り空気と同化していた最中、ふとその美女の視線がコチラへ向く…その直後、私へ無数の蛇が這い寄り、威嚇の声を上げる…中々色艶が良いね君達。


「(ほほ〜…凄いねコレ、〝生きる魔術〟か…自立思考の魔術は高度な技術と凄まじい魔力が必要だが…ふむ…)……字波k…理事長、助けて頂いて――」

「黙りなさい、そもそもたかが銀級の魔術師が何故此処へ来ているのかしら?…この会議は機密性の高い物で有る以上、我々〝天鋼級〟の魔術師のみの出席が望ましい筈よ?」

「あら、貴女も前は従者を連れてきていたじゃない…ソレにそもそも此処へは〝出席者〟とソレが認めた者〝1名〟は入る事を許されてるわよね?」

「ッ…」


――ギチギチギチギチッ――

――ゴリゴリゴリッ――


「ちょいちょいちょい、〝紅月〟も〝蛇妃〟も良い加減にしろよ…そろそろ其処の坊主死ぬぞ?」

「グエェ…(ナイス其処の青年!…でももっと早くフォローが欲しかった!)」


そんなこんなで金髪な一昔前の厳ついイケメンの仲裁から何とか私は救出される。


「理事長、私は救助要請を出した筈ですが?」

「あら、あの程度で貴方死なないでしょう?」

「…ソンナコトナイデスヨ?」


いや実際〝アレ〟は中々に厄介な術だよ…種が割れて無ければ成す術無く殺される程度には…。


(中々興味を唆られるなぁ♪)

「孝宏」

「……分かってます」


チッ…釘を刺されれば致し方有るまい…精々字波君の付き添いとして振る舞うとするかね…。


――コンッ――


「――コホンッ…それでは時間も惜しい…早速定例報告会議を始めるとしよう…本日の午後16時頃、京都の伏見区の下水道にて強力な〝魔力反応〟…〝妖卵〟の発生が確認された」


妖卵か…負の魔力〝瘴気〟から形成される魔物の〝未成熟状態〟の事だね…ふむふむ。


「知ってるぜ…だが確か、〝観測部門〟の連中が魔力反応を計測した所、その推定脅威度は〝B〟だった筈だぜ?」

「この場で態々議論する必要は無いわよね?」

「落ち着きなさいな御二人共」

「そうやで?…態々〝局長〟殿が話題に上げるって事は続きが有るんとちゃいますの?」

「……」


確かにそうだ、その程度なら〝金級〟を一人か二人派遣すれば鎮圧出来るだろう…となれば此処でこの話題を出す意味はない、何故ならば此処の誰かが出張る程の緊急事態では無いのだから…となれば恐らくはその先の方が本命かな?


「その通りだ…続けるぞ、妖卵の駆除に駆け付けた中金級の魔術師達が到着した、その場所には…〝既に駆除された妖卵〟だけが有った…その残骸以外は何一つ〝検出〟されなかったのだ…〝魔力反応〟も、〝魔術行使の残滓〟も、何もかも…足跡すら無かった」


ほうほうほう…つまりその妖卵を破壊した何者かは〝金級〟が出動するレベルの存在を処理し、尚且つ魔力反応も痕跡も何一つ残さずに去る事ができると…。


『……』


…ん?…何だいこの雰囲気は…そんな怖い顔をして、何か引っ掛かる点でも有ったのかい?…。


「…成る程……〝正体不明(アンノウン)〟か?」

「そうだ…完全に痕跡を消し去り、何一つ情報を得られない…そして、その目的も何もかもが不明…ただ一度、〝2ヶ月前〟にのみ何らかの要因でその存在が露見した脅威度〝S〟の謎の存在…妖卵を破壊したのは〝正体不明〟の可能性が高い…この事実を踏まえて、君達〝天鋼級魔術師〟の意見を聞きたい」


……ん?…。


「……(まて、待てよ…16時頃に魔力反応?…それも下水道…)」


妖卵…資料による観測時刻…。


――ピコーンッ――


(ア、コレ私じゃないか!?)


……じゃなーい!?…。


(しまった!…魔術社会に浮かれ過ぎて自分の出自完全に抜け落ちてた!)


クソォッ、なまじ字波君の魔力の大きさや日本有数の魔術師学校に居た所為で完全に現代魔術の平均を測れてなかった!…。


(ま、まぁ良いか落ち着け…私がその〝正体不明〟なる存在とは誰も分からない…筈!)


だって魔力の痕跡も何もかも完全に抹消してるからね!


「……」

「…何かね字波君?」

「……〝正体不明〟…ねぇ?」


……。


………。


…………。


(無茶苦茶怪しまれてるゥゥゥ!?!?)


そうだ彼女日本一だ!…それに伊達に長生きしてない!…そりゃあ頭も回るよねぇ!?…。


「……う〜ん、〝正体不明〟の意図がさっぱり読めん!…なぁおい坊主、お前さんはどう思うよ?」

「ッ!?」


危なッ、今水飲んでたらヤバかった絶対吐いてた!…イヤイヤイヤ、落ち着け私、何を焦る事が有る!…。


「生憎ト検討ノ一ツモ着カナイデスネ」

「…だよなぁ……」


や、ヤバい…今の私にはこの間も視線も疑念の意思が籠もっているように見えてしまう…!…落ち着け私、アナコンダに遭遇した時もアフリカ象に追い掛けられた時だって冷静だったじゃないか、何ならピラニアの居る池に突き落された事も有った!…大丈夫、絶対にバレない自身を持て!…。


「……」

「――〝正体不明〟が何者なのか、敵なのか、味方なのか…そもそも〝個人〟なのか〝グループ〟なのかも分からない以上、我々に出来るのは警戒と事後の調査のみだ…しかし確かに〝存在〟すると言う事は記憶に刻んでいて欲しい…さて、続いては…年々増す〝妖魔、魔物〟についてだが――」


その後何度か私にとって都合の悪い報告は成されたが、どれもこれも大した話題にならなかったので良しとしよう…全く、何て場所に連れて着てくれたんだね字波君は!?…。


――ブオォォォッ――


「ねぇ、本当に〝正体不明〟について知らないの?」

「――全く以て検討も付かないねぇ…そもそも情報が何一つ無いし、他人の視点から見るだけじゃ何とも」

「…じゃあ其処に行けば分かるのかしら?」

「恐らくはね?」


帰宅途中…何度か字波君による誘導尋問を躱しつつ、ある意味で波乱万丈な一日は幕を閉じたのだった。

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