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少年への罪と罰、ついでに自己嫌悪

作者: とある1192

 ただ歩いていただけだった。

 別に何かを考えていてうっかり……というわけではない。逆に何も考えていなかったからこそうっかりしてしまった。

 自分はただ教室の真ん中を突っ切るように歩いていただけだった。

 すると、ちらりとあるものが目に入ってきた。それは日記だ。しかも女子の交換日記と思しきもの。

 言い訳をするようだが、別に日記をのぞき見したくて教室を歩いていたわけではない。本当に何も考えていなかったのだ。その時、女子の机の上に何かが置いてあるのが見えたような気がした。ふと何だろうと思い視線を滑らせてしまったのだ(何か気になるものがあるからとはいえ、人のプライベートに視線を移すのは改めて考えるとどうかと思うが)

 結果、机の上に置いてあったのは交換日記。しかも、ページを開きっぱなしだったので書いてある内容もある程度わかった(なぜ開きっぱなしだったかというと、ちょうどその時だけ編集中の女子たちが席を外したからだ)

 書いてある内容も問題だったような気がする。本当にコンマ数秒視界に映しただけなので確証は持てないが、三、四人で恋バナが開かれていた。クラスの男子の名前も書かれていた気がする(恋愛対象として書かれていたのか、無理なタイプとして話題に挙げられたのかはわからない)


 ――これはすごいものを見てしまったかもわからんぞ


 自分はすぐにこの交換日記が取扱注意の代物だと察して目をそらした(数秒の間凝視してしまったのかもしれない。すぐに目をそらしたつもりでも、そこそこ長い間見ていたかもしれない)

 悪いことをしてしまったかもしれないというのは理解していた。だけど、これも男子の性。女子の秘密を知れたかもしれないと、少しばかり嬉しくなってしまった。気持ち悪くニヤけていたかもしれない。

 すると……悲劇!

 日記の所有者たちにこの一部始終を見られてしまっていたのだ!(さっき説明した通り、女子たちは一瞬席を外しただけで、すぐに席に戻ってきた)


 女子A:ヒソヒソ……


 女子B:オカシクナイ?アレ……


 女子C:オカシクナイッテ……フキュッwww


 女子D:ピギャーwwwwww


 ――――…………


 ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんんんん!うでゃゃゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁあああああああああ!ふわあああああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!うぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!


 ひとしきり心の中で絶叫した後、焦っていることを悟られないように速足で教室から逃げ出した。

 しまった。やらかした。なんで他人の交換日記なんて見てしまったんだ。と心の中で自分を責めた。しかもよりにもよって、クラスの女子の恋バナ。

 あぁぁ、きっと今頃女子は自分のことをキモがっているのだろう。そして、この話は尾ひれがついて学校中に伝播するのだろう。そうなったら、学校中の女子から同じ空気を吸うことすら拒否されるに決まっている。

 さようなら、わが虹色の青春よ……(なお元からグレーであることを付け加えておく)

 重い足取りでトイレへ向かった。便所飯上等。なんなら一生トイレにこもって外界との交わりを断つぐらい絶望していた。

 今、自分はどんな顔をしているのだろう。そう思い、トイレの鏡と向き合ってみた。


 すると


 夏の紫外線に焼かれて真っ赤に腫れ上がった、寝ぐせボーボーのブサイクがそこにいるではないか。

 ・まだまだ夏の日差しは強い。自転車通学の人間はもれなくこんがり焼かれる。

 ・最近、寝る時間が遅くなっている。あまりにも眠いので休み時間はずっと机に突っ伏して眠っている。

 この二段コンボによって醜い顔面がよりひどくなって、鏡面に移されていた。

 それにしても何だこの寝ぐせ。

 ……もしかして。

 女子たちはこの寝癖を笑っているだけなのではないか?

 ひとまず水を髪にべたべたとつけて、何事もなかったように教室に戻った。


 女子A:ナオッタ?


 女子B:ナオッタ


 女子C:ナオッタネェ


 女子D:ネグセキヅイタwww?


 この中でなら、やや親しい女子から話しかけられた「ウス・・・」と適当に返事をして、席に着く。

 自分が日記をのぞき見していたの気づいた?いいや、気づいていない!

 助かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ。

 どうやら自分の寝癖を笑っていただけで、日記を覗かれていたことは一切気づいていないようだ。

 うーん。そう考えると……

 自分のブサイク面と交換日記の内容を見せ合っただけ……これは自分だけ得では?見てもうれしくもないブサイク面で笑った女子たちと、どんなに背伸びしても見ることの叶わない女子の交換日記をチラ見できた自分では自分のほうが一方的に得だろう。

 やったー!得した!得した!


 まだまだ騒がしい休み時間の教室で自分は机に突っ伏しながら一人でニヤけていた。











 気持ち悪っ。

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