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短編

いやだってまさか、ねぇ?

作者: 猫宮蒼



 クロード・カルムレドはつい最近侯爵となったばかりの年若い少年である。

 本来ならばもう少し先に侯爵となるはずだったのだが予定が大幅に繰り上げられた結果だ。

 とはいえ、本来ならばまだ侯爵となるには早すぎるのもあって、今は母が補佐をしてくれてどうにか侯爵としてやっていけている状態だった。



「それにしても……」


 呟く。


「まさか本当に侯爵になるとはなぁ……」


 それもこんなに早く。

 下手をすると史上最年少侯爵だ。そのせいでちょっと社交界で話題の人扱い。


「仕方ありませんわ。それだけお父様が頭空っぽだった、それだけの事です」


 双子の妹、シャルロットが嘆息混じりに言う。

 ちなみにクロードはシャルロットの事を妹扱いしているが、シャルロットはクロードを弟扱いしている。自分の方がお姉さんだと言って憚らない。

 とりあえずどっちが上であるか、という話し合いは一向に決着がつかないので保留にしてある。

 どのみち当主はクロードであることに変わりはない。


「お母さまがお父様は頭の中身空っぽのすっからかんだから、と言ってましたけど、まさか本当に、ねぇ?」

「そうだな……」


 新しい屋敷。

 今まで過ごしていた家とは違う場所。

 クロードが新たな当主となったついでに引っ越して、新生活が始まったばかり……ではあるのだが、新生活という言葉にうきうきするような心弾むようなものは一切ない。


 大体元々ここは侯爵家の領地だ。

 領地経営のために何度も王都から足繁く通っていたが別に王都での暮らしに未練があるわけでもない。それなら最初から領地で生活した方が色々と便利なのだ。

 そりゃあ最新の流行だとかは王都こそが最先端であるけれど、クロードもシャルロットも目の色変えて流行の最先端を追い求める程でもなかった。



 クロードとシャルロットが物心ついた時には家庭内はすっかり冷え切っていた。

 いや、聞けば元々冷え切っていたようなので、最初からそう、と言ってしまえばそれまでなのだが。


 父クロセルと母ナディアは政略結婚で、伯爵家令嬢だった母が嫁入りしてきた形での結婚だ。


 クロセルの両親――クロード達からすれば祖父母――は既になく、また親戚ともそう深い付き合いでもないらしくクロード達の幼少期は酷く寂しかった記憶がある。

 かろうじて一番近くにいた親族とは、クロードもシャルロットも面識がない。

 話に聞いてはいたけれどそれだけだ。肖像画一枚お目にかかったこともなかった、と言えばそれがどれほどのものかわかるだろう。


 元々疎遠だった親類は流行り病だとか暴動に巻き込まれてだとかの物騒な案件で命を落とした者も多くクロセルは当時頼れる者がほとんどいない状態だった。クロセルの両親もナディアと結婚する少し前に亡くなっている。当主として跡を継いだとはいえ、その頃のクロセルにはやることが膨大にありすぎたのだ。到底一人で抱え込める仕事量ではないけれど、頼れる人材が圧倒的に少ない。

 ナディアが少しずつ補佐をしていたが、元は伯爵令嬢だ。領地経営だとかはさっぱりでできる事なんて限られている。けれどもできないなどと言っていられないのはナディアもわかっていた事なので必死に学び夫の支えとなれるように努力していた……とは、家令の言葉である。


「それが最終的に母上に仕事丸投げした挙句」

「えぇ、あっさりと家の全権クロードに譲り渡す書類にサインしてしまわれたのですから……」

「こう言ってはなんだが」

「馬鹿、としか言いようがありませんわねぇ……」


 そもそも結婚した当初、初夜の事。

「お前を愛することはない」

 と言ったそうではないか。


 その話を聞いた時クロードもシャルロットも「何言ってるんだろうこの馬鹿」と口に出しこそしなかったが思ったものである。


 大体政略結婚って国にとっての利益があるからこそ王命で結ばれるだとか、家同士が結びつくことでお互いにメリットがあるからやるものであって。何の得にもならなければわざわざ政略結婚する必要がないわけで。


 例えば家のお金が尽きそうでこのままでは領地諸共大変な事に、とかそういう家に資金援助してあげるから、と手を差し伸べるにしたってだ。

 慈善事業じゃないんだからタダのはずもない。

 そういうところは大抵結婚相手として若い娘か息子が嫁入り婿入りをするわけで。


 これが別に資金にも困っていない家に援助するからそちらの娘さんを嫁に下さい、とか言われても援助とか必要としてませんし……なんてお断りされる事だってあるわけだ。


 聞けばナディアが嫁入りすることになった原因は、一向に嫁を迎える気配も様子もないからと、まだ存命していたクロセルの両親――主に父親――がこのままでは我が家の血は絶えてしまう……! と危機感を抱き若く健康でそれなりに美しい令嬢で家の経済状況が傾きつつあるナディアが目をつけられたにすぎない。


 資金援助をしてくれるならこの際どんな相手でも構わない。元気な子を産んで役目を果たせばいいのですね! というとても割り切った関係としてナディアは嫁に来たという。

 なので別にそこに愛があろうとなかろうとどうでも良かったのだ。


 だというのに初夜。

 いざ事に及びますよという直前で。

「お前を愛することはない」

 発言である。


「血縁上の父はその……なんというか」

「頭が可哀そうな人ですのね……大体お母さまだってあなたの事これっぽっちも愛していなかったでしょうに」


 クロードが言葉を選んでいるうちに、シャルロットがずばっと言い切る。


 そうだよなぁ、どう聞いても金目当てであってクロセルの事とかなんとも思ってないようにしか聞こえなかったもんなぁ……

 一応見た目だけはいい人だったらしいので、きっと勘違いしちゃったんだろうなぁ……クロードは割と見た目は父に似ているらしいので、自分もそこら辺思い上がっておかしな勘違いをしないようにしなければ、と心に深く刻んだ。父の二の舞とかごめんだ。


 こっちだって貴方の事など愛していませんよ、とズバッとナディアが言い返さなかったのはここで逆上されて家を追い出されて資金援助も打ち切られてしまえば困るからだ。

 けれども内心では、

「こっちだってお前なんか金出さなかったら結婚する事になってませんからピッピロピ~~~~!」

 ととても令嬢とは思えない言葉で罵っていたらしい。ピッピロピー……という効果音は一体何を意味しているのかその時話を聞いていたクロードにもシャルロットにも理解できなかったが。


 愛してなくてもやることやってれば子は産まれる。

 それがクロードとシャルロットである。


 父とはほとんど関わっていないが、その分母は愛情たっぷり育ててくれた。

 二人が生まれたころにはほとんどの仕事を丸投げされていたのだから、さぞ大変だっただろうに……


 聞けば使用人の数も最低限だったようだし、聞けば聞く程苦労しかない。


 肝心の父親は侯爵としての仕事を妻に丸投げし、では一体何をしていたかというと……



 女の家に入り浸っていた。



 これだけ聞けば愛人だと思うのだが、その相手、何とクロセルの従姉のメシュメレイア。クロセルより十離れた年齢の未亡人である。


 クロセルとナディアが結婚した少し後、メシュメレイアの夫が帰らぬ人となり彼女の家もまた大変だったらしい。残されたのは生まれたばかりの子と妻。メシュメレイアの夫の親戚だとかは仕事で国を離れていたり領地に引きこもっていたりですぐに頼れる状況ではなかったらしい。

 それもあって、親戚だから、という理由でクロセルが彼女の元へ通い色々と手伝いをしていたようなのだが……


「それで入り浸るのはどうかしてるよなぁ……」

「ですよねぇ……」


 そこら辺考えるとやはり血縁上の父は頭が悪いのかな? としか思えなかった。


 親戚が大変だから助けてあげたい。大いに結構。

 しかし何事にも限度というものはある。


 ナディアに仕事を丸投げして、育児もまるなげ。

 そうして自分は従姉の家の手伝いを、とかどう考えてもおかしいだろうに。

 使用人が手伝ってくれたとはいえ仕事も育児もほぼワンオペ。聞けば聞く程クロセルと言う血縁上の父親に対して尊敬できる部分が見えない。


「そんなんだから母上の怒りを買うんだよなぁ……」

「女の恨みなんて何よりも恐ろしいのに、わかっていない殿方多すぎ……」


 シャルロットがさもわかったような口をきくが、ここで茶化すと怒りの矛先が自分に向けられるのがわかっているのでクロードはそうだなぁ、と同意するだけにしておく。


 生まれてからデビュタントを迎えるまでにクロードとシャルロットが父親の姿を見たのは精々片手の指で数えるほどでしかない。それも本当に見かけただけで直接言葉を交わす事すらなかったのだ。

 なので二人にとって父親と言われても、それは父親と言う肩書を持っただけの他人でしかなかった。

 正直家令のジョルノの方が余程父親のようなものに近い。


 政略結婚だったから元から愛はない。

 けれども、それでもお互いに歩み寄っていればいずれは愛が芽生えたかもしれない。

 とはいえ、もう愛が芽生える事はないだろう。


 何せナディアとクロセルは既に離縁している。

 ついでにクロードとシャルロットはクロセルと絶縁している。


「本当に……なんていうか」

「愚かな人でしたわねぇ……」


 王都にあるゴシップ新聞紙が机の上に置かれているが、そこには元侯爵が死んだという記事があった。

 なんでも酒を飲んで酔っ払い、誰かと揉めて喧嘩した後死んでいるところを発見されたらしい。

 本来ならば貴族を殺した誰か、というのが捜索されて然るべきなのだがこの時点で彼は侯爵家の人間であった、という事実があるだけの権力も既に持っていない――実質平民だ。

 だからこそ、死んだというニュースが新聞に載せられても犯人の目撃情報を求むだとかの一文はどこにもなかった。



 妻に仕事を丸投げし、どうやら長年秘めた思いを持っていた従姉の夫が亡くなったからとここぞとばかりに彼女の助けになりたいなんて言ってメシュメレイアの家に足繁く通いそちらの手伝いをしていたクロセルは、家に戻ってくるのは月に一度であればいい方であった。

 そうして戻ってきて、侯爵直々にサインが必要な書類にサインだけしてすぐさま引き返していく。

 クロセルにとって自宅であったはずの屋敷は、足を運ぶに値しない存在になっていたようだ。


 領地経営、侯爵家で行っていた事業。

 それらすべての仕事を妻に丸投げした夫は、だからこそ破滅したとも言える。

 何もかも投げ出して逃げだすこともナディアにはできたはずなのに、それをすれば困る領民がいる。事業にかかわる人間だってそうだ。だからこそナディアは必死になって代理を務めた。

 幸いだったのは、意外にもナディアには才覚があったというところだろうか。

 結果として侯爵家はつぶれる事もなかった。もしナディアに才覚も何もなかったら、家を潰すわけにはいかぬとクロセルが戻ってきた可能性もあったが……既にそれはもしもの話でしかない。



 一月に一度戻ってきて、当主のサインが必要なものにサインだけしてすぐさま取って返すクロセルを、ナディアは切り捨てることに決めた。

 当主としての仕事をほとんどせずに従姉の家に入り浸る男の何を必要としろというのか。

 あの男がいなくても困る事はほとんどない。


 家への援助の手続きだって仕事を丸投げされた時点でナディアが自分でやっているのだ。

 よっぽど腹いせに援助の金額勝手に上げてやろうかと思った、とは過去のナディアの言葉だ。勿論それをやるのは問題があるとわかっていたから言うだけで実行には至らなかったが。


 しかし、当主としてのサイン以外何もしていないのだ。

 跡継ぎが生まれたからもうナディアと夜を共にする事もない。

 跡継ぎの教育などがあるだろうに、クロセルは従姉の産んだ子でもあるレオニードの教育こそすれこちらにはノータッチ。侯爵家の跡もそっちの子に継がせる気か? と思われてもおかしくはない。


 ナディア曰く、ちょっとした出来心だったらしい。


 当主としてのサインが必要な書類。

 その中に離縁届とクロードに当主の座を譲り渡すことを承諾する書類と、子供たちとクロセルの縁を切る書類を混ぜたのは。


 文字をきちんと読んでいれば、すぐにわかるはずなのだ。


 それをロクに読みもしないでサインしたのはクロセルだ。

 なので遠慮なくその書類を役所に提出した。


「え? だって侯爵家の当主ともあろう御方が、まさか文字を読めないなんて事はないでしょうし、貴族というのは契約を重んじます。であれば契約書などは特にしっかりと読んだうえでサインをするものですから。

 なので後からあれは間違いだったなんて言われましても……ねぇ?」


 というのが、ナディアの言い分である。

 しかも離縁手続きと当主変更手続きと絶縁に関する手続き、三つも間違いがあるというのがまずおかしい。

 一つくらいなら人間だものうっかり、という事もあるだろうけれど三つも立て続けに間違えるなど、いっそ致命的である。



「こっちに殴り込んで来るかと思ったけど」

「そもそもここに来るまでの足がないでしょう」


 だからこそ代理で役所の人間が来たわけだが。


 クロセルが王都で生活していたのは、そこに従姉もいたからだ。

 流石にナディアだって気付いていた。

 クロセルの想い人がメシュメレイアであった事に。

 けれども既に結婚した相手。想いを伝えるわけにもいかず、せめて近くに……という事でクロセルは王都で生活していた。事業に関してや領地の事を考えるなら王都で暮らすより領地で生活した方が余程スムーズなのに頑なに王都から離れようとしないのだから、ナディアだって流石に気付くというものだ。


 メシュメレイアはクロセルの事を単なる親戚としか思っていないようだが、クロセルはただ近くにいて必要とされていればそれで満足らしかった。メシュメレイアとその夫との子であるレオニードを立派な跡取りとして育てる事に心血を注いでいた。恐らくクロセルの脳内ではメシュメレイアとの共同作業にでも変換されていたのだろう。


 どうやらメシュメレイアはクロセルが足繁く通い滞在している事に関して家族の了承を得ていると聞かされていたらしい。

 しかし実際は仕事は丸投げ育児も丸投げ。侯爵家としてやらねばならない事の何もかもを丸投げ状態で、挙句離縁。

 そこでメシュメレイアは真実に気付いたらしい。後日丁寧な謝罪の手紙が届いた。


 自分の子をほったらかしにしてよその家の子の面倒を見るなど何を考えているのか、と流石にメシュメレイアもクロセルの所業に怒りを覚え、家を追い出したらしい。その結果がロクに行くアテもなくなって酒浸りになった後の――新聞に書かれている出来事になったのだろうけれど。



 役所の人間経由でクロセルがあれは何かの間違いだった、なんて言っていたがナディアとしては何も間違えてはいない。

 大体子が産まれてデビュタントを済ませるまでの期間が一体どれくらいあると思っているのか。一日二日仕事を任されたとかならともかく、年単位で丸投げしておいてロクに働きもしていない証拠はバッチリだし、当主のサインが必要な時はもうクロードが当主になったのだから、クロセルの帰りを待つ必要もない。

 仕事もしないで当主であることにふんぞり返るような男など、領地の発展を考えれば必要としていない。


 クロセルはナディアに家を乗っ取られた! と喚いたようだが、乗っ取ってなどいない。クロセルが放棄しただけで、むしろその尻拭いをしていたようなものだ。社交の場ですら夫同伴でいかなかったことでナディアは周囲に色々な噂をされていたし、肝心の夫はメシュメレイアと共に夜会に参加していたという話も流れてきた。

 醜聞振りまくような真似をしておいて、今更……としか思えなかった。

 メシュメレイアは家が大変なので手伝ってもらっている、と知り合いの貴族には話していたようだが、事情をロクに知らない貴族たちの噂話がさも真実のように広まったりもしたせいで、ナディアはそれも離縁する際の材料としていたわけだが……


 拗れる以前に本人が書類をロクに見もせずサインしたのでとてもスムーズであった。


 ついでに今まで仕事を丸投げされていた分の給金と称して王都の屋敷の中の家財道具や調度品は遠慮なく売り払った。家への支援金は毎月一定額であったが、そこを勝手に変更などしなかったし、夫を支えるのが妻の役目とはいえ、まさか全力で寄り掛かってこられるなど思うはずもない。その労働分の賃金と考えれば妥当なところだろう。むしろ安いと言える。


 ただ、クロセルが王都の屋敷に戻ってきてもあの屋敷の中には既に何もない状態だったので、生活するのは大変だろう。使用人たちも領地にある屋敷へ連れてきてしまったし。

 この時点で当主はクロードになったのだから、何も問題はない。


 新たに当主になったクロードから縁を切られるという事になった部分も、クロセルにとっては大変な事になっただろうな、と思うもののナディアにとって既にクロセルがどうなろうと知ったことではないし、クロードもシャルロットもロクに会話もした事のない血縁上の父親というだけの男だ。どうなったところで「それが何?」という気持ちにしかならない。


 せめてもうちょっと父親らしい事でもしていてくれれば……と思わなくもないのだが、王都でとっくに死んだ男の事だ。何を思うにしても今更すぎた。



「でも、良かった。下手にこちらに興味を持たれてその、ニジェーレ家のご令息……レオニード様とわたくしを婚約させる、なんて言い出される可能性もありましたものね」

「あぁ、母上もそれを懸念してあの男の前には特に出ないようにと言っていたな」

「まぁ、メイドの振りをして仕事してるように見せかけてたら余裕で誤魔化せたわけなんですけれどもね、ほほほ」


 もし生まれた子にもう少し関心を向けていたら。

 メシュメレイアの家とより深く結びつこうと考えて彼女の子であるレオニードとシャルロットを婚約させれば、クロセルからすればもっと堂々とあの家に行く口実になっただろう。

 けれども正直その政略結婚に旨味を感じているのはクロセルだけでナディアにとってもシャルロットにとっても何の益もない。

 あの頭すっからかん男、あんなんでも侯爵やってたわけだから、思いつく可能性は高いわ。なんて言ってナディアはシャルロットに気を付けるように言い含めていたのだが。


 妻になった相手からもその子供からも頭すっからかんと言われるだけあってか、自分の子供の顔もロクに覚えていなかったらしい。

 まぁ月一でしか戻ってこないし育児にも関わらなかったのだから、知っている方がむしろ……という気もする。



 そんなこんなで、とある貴族の家の当主交代劇はあっさりと終了した。


 周囲の貴族たちはそれに関連する噂を囁くなどしていたものの、そもそも今まで仕事を丸投げしていたわけで。かつての当主がいなくなったからといって、特に家が傾くでもない状況から。

 あまりにも早すぎる当主交代だと言われていたそれはいつの間にやら英断であった、なんて言われるようになったのである。


「ま、噂なんてそんなものだよね」


 当の本人である最年少侯爵は、他人事のように肩を竦めるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 当事者からしたら、妥当な結末、ですね。 何もやってない名ばかり、から、名を持って行っただけですし。 「実」はすでに前からこっちのものだったし! と。 ナイスな物語でした。 [気になる点] …
[一言] 思慮の足らない男が自爆して全てを失った話だったなぁ。 蚊帳の外からいきなり任された長男からすると、確かに「いやだってまさか、ねぇ?」になるなぁw
[一言] 「お前を愛(ry」もアホだし、家事・育児・仕事全部丸投げなのも「お前がいる意味は?」だけど、一番アレなのは、 そこまでして従妹(子持未亡人)の家に入り浸って、財産以外のクロセル自身のリソー…
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