四人パーティー
四人パーティー
砂漠の夜は冷える。アヤとサヤは二人抱き合ってガタガタ震えている。
「寒いのかい?着る?」
ダークグリーンの毛布を渡すとサヤが震える手で布をもらって二人を包む。
「その・・・赤毛の人。人間なの?」
「あ~こいつね~。ちょっと特異体質で・・・」
ライムが横になっているオーラを揺するが起きる気配はない。一見して今は少女の姿なのだが、先ほどの救出劇では確かに赤いドラゴンの姿だったのだ。
「あ~その、私はライムって言うんだ。んで、こいつはオーラ。君たちは?」
いぶかしげにサヤが答える。
「私はサヤ。で、こっちがアヤ。あなたたち一体・・・・?」
不安と緊迫の気まずい空気の中に大きな腹の音が響く。
「お腹空いた。何か食べないと飛べないよ」
オーラがむくりと起き上がり、背伸びをしながら言う。
「ホント、場の空気読まないよね」
「ん?何のこと?」
「いや、何でもない」
ライムはヤレヤレと言った感じでため息をつくと、アヤがクスッ笑った。
「あれ?君?もしかして・・・」
サヤを頭の上から足の先までなめまわすように眺めるライム。
一通り見るとウ~ムと腕を組む。
「な、何ですか?人をじろじろ見て」
「いや、君、どっちもついてるだろ?」
ライムの言葉に二人は立ち上がりライムから二・三歩後ろに下がった。
「なぜそれを!」
サヤが今にも襲い掛かりそうなアヤを押さえつつライムに聞く。
「あ~、私も似たようなものだから、何となくわかったんだよね~。でも、君は自分でどっちかを選べるよね。どっちにするのかな~?」
「き、君に関係ないじゃないか・・・」
オーラーがゆっくりと立ち上がって、その間に立つ。
「どうでも良いけどさ~。お腹空いたよ。どっかに、食べ物無いの~」
ボヨボヨの顔で三人に聞く。
「敵陣のど真ん中に落ちてご飯も何もないと思うけど」
サヤがため息交じりに言う。
「暗いうちに離脱して、友軍と落ち合える場所まで歩く?」
「歩くってどれぐらい?」
「4~50キロぐらいかな?」
「無理でーす」
オーラがサヤとのやり取りで両手を万歳したまま前に倒れる。
「うへぇ~口に砂が入った~やだ~ペッペッペ」
サヤとアヤがオーラの姿に顔を見合わせてクスッと笑う。
「でも、ここにとどまってもご飯は食べられないから歩くしかないよね」
アヤが言うとライムが何か閃いたようにポンと手を打った。
「この方向に食い物の匂いがする」
指をさす方向を見てサヤが首を振る。
「いやいや、そっちは敵指揮所のある方向だよ。私たち捕まって酷い事されるよ」
「でも、行くんだよな。ライムは」
オーラがため息交じりに言う。
「だってさ、こっちはそんなに歩かなくても着きそうだし、あんたたちも用があるんでしょ?」
「いやいや、絶対無理だって。あいつら人身売買だってやってるんだ。私たち良いカモだよ」
アヤが少し上ずった声で言うが、ライムは気にも留めない。
「大丈夫だって。その軍服みたいなものはここに置いて、行くよ」
ライムはオーラの手を引き、サヤとアヤに微笑む。
「え?この下は下着・・・」
「ん?良いって。動きやすくて良いでしょ」
ホラホラと言った感じでライムはそそくさと二人の軍服を脱がして下着姿にし、背中を押した。
「4~5キロってとこだね。さ~いこいこ」
ライムは4人パーティーのリーダー的な感じで敵陣奥深く歩いて行った。
砂漠の夜は冷える。服を着ているライムとオーラはともかく、下着姿に毛布を羽織っただけのサヤとアヤは小刻みに震えながら歩く。目的地に近づくと何やらあちこちで煙が上がり肉を焼く香ばしい匂いが漂う。
「きたきた~!これよこれ」
オーラは臭いに気が付くと足早になって、次第にスピードを速めて小走りに臭いのもとへ駆けていく。
「ほらね、あったでしょ」
ライムが後ろを震えながら歩いてくる二人にニカッと笑う。
「いや、まぁ~そうだけど」
サヤがぽつりと言う。
「私たちが食料にならなきゃ良いけどね」
アヤの言葉にライムがニカッと笑った顔のまま言う。
「大丈夫だって。四人いれば何とやらッていうじゃない?」
「三人いれば文殊の知恵ね・・・ふぅー」
サヤがため息交じりに応えた。
「こっちこっち。場所確保しておいたぞ!」
オーラは既に場に溶け込んでガツガツと肉を焼いて食べている。その勢いに他の男どもは少し引き気味に様子をうかがっている。
「じゃ~お世話になろうかしら。ここのリーダーはどなたかしら」
ライムが声色を変えて丁寧に言う。
「おう、俺じゃ。お前たちは・・・旅の商人か?」
ひげづらの四角い顔がズンズンと迫ってくる。ライムの慎重より頭一個分大きい。食べまくっているオーラと毛布を羽織った二人とライムを一通り見ながら髭をさすり言う。
「お前たち・・・もしかしてあっちから逃げてきたのか?」
指さす方向はサヤが友軍がいると言っていた方角だ。サヤとアヤが一瞬、後ろに下がろうとするのをライムが逆に背中を押して前に出す。
「良くわかりましたね。この子たち、体が冷えていて、お腹もすいているんです。食事と暖をもらっても良いかしら」
「お頭、こいつら引き渡した方が良いんじゃないか」
突然、様子を見ていた男の一人がひげづらの男に耳打ちする。しかし、その言葉を手で遮り、ニカッと笑ってライムたちに言う。
「まぁ~詳しい話は食べながら聞こうじゃないか、こっちに座れ」
そう言うとひげづらの男は三人をオーラが座る場所へ案内された。
いろいろとありまして更新が遅れてしまいました。
プロットもろくに書かないまま突撃した小説だったのですが、登場人物とか設定とか簡単なものを書いているうちに月日が経ってしまいました。
仕事の合間にアップするので、遅れる事があるかと思いますが、一週間に一回は更新していきたいと思いますので、よろしくお願いします。