輸入玩具
ライムとオーラは少女の兄を警察に保護させ、少女の兄から聞いた倉庫にいた。
「おいおい・・・これって、生きてるのか?」
カプセルの中に無数のケーブルを装着された少女が水溶液に浸かっているのを見てオーラが言う。
「ふっ、ここでも似たような事をやっとるのか・・・」
ライムの言葉にオーラはギョッとする。
「へっ?ライムは知ってるのか?」
「知るも知らぬも以前この身でやられたわ」
「ちょ、それって・・・」
「知ってるだろ。私は記憶を受け継ぎし者。転生とはちと違うが、全てを記憶しておる。いや、刻まれておるよ」
多くのカプセルの中には少女ばかりが入れられている。その一つ一つを確認しながら二人は奥へ向かった。
扉を開けようとすると不意にドアが開く。とっさにドアの両脇に身を隠す二人。
戸の隙間からライフル銃が男の横顔と共に覗き込んだ。男の視界には二人は見えていないようで、すぐに通路へ戻っていった。
「あっぶねぇ~冷や冷やするぜ」
額の汗をぬぐう素振りをするオーラを尻目にライムがもう一つの声に聞き耳を立てる。オーラもその行動に気が付いて耳に集中する。
「さらに下の方に女の子の声が聞こえる。行ってみよう」
ライムの言葉にオーラがうなずいた。
「やめてください!もう家に返して!」
「今回も生きが良いねぇ~。処置して外国に輸入したらたいそう高く売れるぜ!」
「いやー、もういや、これを外してよー!お腹壊れちゃう!」
歯のかけたボロボロの薄汚れた白衣を着たやせこけた男は、裸体で暴れる少女の拘束を更にきつくして外れかけている管を深く体内へ挿入しなおした。少女の体が硬直し腹部が膨らみ始める。
「痛い・・・もう、許して・・・」
「あ~。あともう少し。これが終わればカプセルに突っ込んで眠らせておれの仕事は終わりっと」
「ほー。これからどうするんですかな?」
オーラが男に尋ねる。
「そりゃ~町でかっさらったゴミを再生して玩具として外国に売るのさ。良い商売だろ。社会のゴミは減るし、おれたちは儲かるし。ウヒヒヒって、お前誰よ?」
気が付いたと同時に男はオーラの拳を顎にうけて気絶する。
「ライム聞いたか?やはりここはヤバい所らしいぜ」
ライムは拘束されていた少女を開放し、体を隠す程度の布を見つけて少女へかけた。
「どうするよ?」
ライムは周囲を注意深く見る。そして集中するように右手の人差し指を眉間にあてた。建物が透けて、多くの人の未来の糸が絡んで見える。そこから時間軸を付加して未来予測をしていく。
「おい、早くしろよ。沢山の奴が来たら俺がまた変身しなきゃいけなくなるだろ。あまり繰り返すと入れ物が壊れるんだから」
「待って・・・もう少し・・・」
ライムが糸から予測し最善の未来を掴もうとしていると、多くの足音が階段を下りてくる音が聞こえてきた。
「やばい、もうこっちに来る。くっそ!この入れ物、気に入ってたのに!」
オーラが変身するのをライムが止める。ゆっくりと頷いて人差し指を天井に向ける。
「あそこに私を投げて!」
「へっ?何も無いぞ?そこには?頭ぶつけるだけ」
「良いから早く!」
オーラはライムが何を言っているのかわからないが、ヒョイと持ち上げるとライムを天井へ放り投げた。
ガンと言う音とメキって言う音がほぼ同時に起こってライムはオーラの腕の中に戻る。
「逃げるよ!」
オーラから飛び降りると天井が崩れていく部屋から三人は逃げて行った。