イケメン炒飯
飯にありつこうと二人は行く。人助けをしたが、そこでは問題は解決しそうにない。まずは腹ごしらえ。
「ここかな?」
ライムは少女が持っていた破れた学生証の住所を辿ってきた。
「結構歩いたぞ。おれが強いからって表通りで目立ちすぎ。バーコード禿のおっさんなんて、私見て腰抜かしてたし、腕に入れ墨したおにーちゃんは、多数寄って来るし。って、聞いてるか?ライム」
オーラは少女を担ぎながら言う。
「いや、ずいぶん豪華な店だよなって思ってさ。ここだよね?どれどれ?ふむふむ、あってるね。とりあえず中に入ってみようか」
ライムが扉に手をかけて中に入ろうとした瞬間、男の声が聞こえた。
「ヒロミ!」
頭に鉢巻を巻いて、エプロンをした若い男が駆け寄ってくる。
「どうしたんだ?こんなに怪我をして!まさか、お前たちが!」
男が少女を奪い返そうと腕を掴まれたオーラは、男に少女を渡した。
「ったく、俺は女だぜ。何処に目をつけてるんだ。助けた人に向かって全く」
「あらあら、ガサツなオーラさんは、どのような姿になっても野蛮人に見えるのではなくって」
ライムが言葉を変えて高笑いをする。
「おまえ・・・なぁ!」
「う・・・ん」
男の胸の中で少女がうっすらと目を開ける。が、すぐに気を失ってしまう。
「済まない。どうやら勘違いをしていたようだ。事情が知りたい。こっちに来てくれ」
そう言うと男は少女を抱いたままライムたちを連れて横道へ入っていった。
暗い脇道の突き当りに仄かに灯る提灯があった。「つむぎ」と書いたその提灯は半分屋台のような店先で、店内と言っても玄関のような間取りに四人ほど座れるカウンター席があるだけだった。
男は店のさらに奥のドアを開けて少女を降ろして寝かせた。
「病院行った方が良いんじゃないのか?こういっちゃーなんだけど、物凄い暴行を受けていたみたいだぜ」
オーラが覗き込むように後ろから男に言う。男はそっと毛布を少女に被せて静かにドアを閉めた。
「本当にありがとう。こんなところでは何も出してやれないが」
「あーなんか、食べ物頂戴。育ち盛りにはエネルギーが必要なのよ」
先ほどの言葉とはうって変わって砕けた言葉をライムが男にかける。
「あ、では、炒飯とか」
「良いねぇ~、おれ大盛な!」
「わたしも~」
ライムはボーとしながら、男と少女の糸を見ていた。太いが切れかけている。もうすぐ劇的な別れがありそうだ。
「なぁなぁライム。あの兄ちゃん結構イケメンだよな?あいつと交わったらイケメンが出来るかな?」
「あ~、あいつは人間。あんたはドラゴンやろが。何考えてるんだよ」
「そか~。入れ物が同じでも無理かな~」
ため息交じりに肩を落とすオーラ。
「はい、炒飯出来上がり!」
湯気が上がる黄金色のホカホカの丘。
路地裏に出てくる期待を裏切る品。
「いっただきまーす」
二人はうまいうまい言いながら炒飯を口の中にかきこんだ。
一週間に一回はアップしようとしているのに、なかなか難しいですね。
まずは、紡ぎ出すと言う習慣を身につけなければ。
読んでくださった皆様ありがとうございます。