プロローグ
岩風呂と美女、追い返される二人。
神の世界にあるかもしれない岩風呂をお楽しみください。
余裕があれば、追い返されたお二人の行く先を想ってくだされば幸いです。
煌めく星々を眼下に大きめな岩風呂が浮かび、ほのかに薔薇系の匂いが漂う。
湯けむりが微かに湯船につかる人影を揺らめかせる。
「ここの湯は最高じゃの~。宇宙一じゃ!」
お湯を片手ですくい腕にかけ、頬を染めながら堪能する傲慢バディーの美女。
「そなたたちも入って良いのだぞ」
小学生ぐらいの小さな子供たちが、その声掛けに戸惑っているとスラっとした黒服の中性美人がゆっくりと歩いてきた。
「侍女たちが萎縮しています。そんなに魔力を放出されては」
「ミカよ。では、そちが入るか?この湯はその貧相な胸をふくよかにする効果もあるのだぞ」
「け、結構です!別に姉上のようにけしか・・・ゴホン。重たそうなボディーじゃなくても良いのです!」
胸を押さえて眉間に血管を浮き立たせるようにして怒りを抑え込むように静かに言う。
「やれやれ、堅物よのぉ~」
しばしの静寂。お湯が流れる静かな音と花の匂いが岩風呂を包む。
「何か、時空を超えてくるものがいます!」
ミカが構えるのゆっくりと女性はさえぎる。
「騒がしいのが来たようじゃの」
言い終わると同時に遠くから聞こえるような小さな声が光の点から聞こえてくる。
「お・・・か・・・あ・・・さ・・・ま」
光の点から緑色の髪をたなびかせて赤いドラゴンにまたがった少女が突進してくる。その姿が確認したと同時に女性は湯船から立ち上がった。湯けむりが体に巻き付き一瞬で黄金バットを持ったバッターに変身する。
剛速球を打つ構えの強打者。バットを揺らし、二・三度素振りをすると向かってきた光輝く緑と赤の塊目がけて振りぬいた。
「お母さま!やっと戻ってきーーーーあーーーーーー」
「グッパイ。ライム。もう少し現世で遊んでらっしゃい」
ホームラン級の放物線を描きながら緑と赤の光る球は遠ざかっていく。
ユニフォームが湯けむりとなって掻き消え、女性は何事も無かったように湯船につかる。
「あ、あの。クロ様。良かったんですか?戻してしまって」
「ふふ、良いのです。あの子にはもう少し現世にいてもらわないと」
「でも、可愛そうではありませんか?現世ではロクに力をふるえませんし、何かと不便かと」
「いいですか、ミカ。私とあの子は時の使い手。多少力が弱くなったと言っても異次元の力なのです。しっかりと修行してもらわないとね。それに~」
クロはそう言うとミカの腕を引っ張って湯船に引きずり込む。途端に湯けむりがミカの服が湯けむりと同化して肌があらわになる。
「ちょ、ちょっと!何するんですか」
「あらあら、頬まで赤く染めて可愛い子ね。体型まで男の子寄りにしなくても良いのよ」
クロのように我儘ボディーではないにしろ、スポーティーな女性のボディーだ。
ミカはクロを抱きかかえ、潤んだ瞳で顔を近づけると一陣の風とバシッと言う音が岩風呂に鳴り響いた。
「もう!油断も好きも無い。私はそう言う者ではありません!!!」
「良いではないか、良いではないか」
「おい!侍女ども!この痴女を止めろ!」
並んでいる侍女は一礼して何故か全員静かに立ち去っていく。
「お、おい、お前たち!って、え?」
背後に両手をあげて迫る黒い人影。ミカの艶っぽい声とクロの怪しい声が暫く続いた。
数分で読めるサイズで執筆していきますので、興味が湧いたらお気に入りに入れて下さるとうれしいです。
人の魂は肉体と言う入れ物に入って初めて現世で活動できると言うコンセプトで書いています。