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第8話 主人公の優しさが胃を刺激する悪役

「立ち話もなんだし中に入ろうよ。僕はアイスが食べたくなってさ。中学の頃は夜にコンビニに行くの親に禁止されてて……だから今ちょっと悪いことしるってドキドキしてるんだ。えへへ……」


 笑顔と理由が可愛いな!!!


 主人公、佐伯結斗が話しかけてくれているが俺はただ相槌を打つことしか出来なかった。

 

 だってさ……突然のことすぎて頭がパニック!!!


 今日は策を練る日にしようって一旦引いたのにまさか主人公と鉢合わせるなんて……。美人姉妹よりは安全だが、美人姉妹が動く引き金、危険人物であることは変わりない。


 店内に入っても俺は無言。


「あったあった。僕アイスの中でブラックモンブランが好きなんだよね。笠島くんは何を買いに来たの?」

「…………」

「笠島くん?」


 主人公がまた疑問げに首を傾げている。無視してごめんな。


 でも接し方一つ間違えれば俺は美人姉妹に馬乗りされて体力がなくなるまでやられてバットエンドになるんだ。


 考えろ、悪役、笠島雄二……主人公とどう接すれば美人姉妹に目をつけられいかをッッ!!!!


①前世と同じ態度だった場合


「笠島くん?」

『あん? 笠島財閥の息子の俺様に馴れ馴れしく話しかけてくんなッ』

「え、あ、ごめんなさい……」

『そういえばお前、美人な姉妹と仲良かったよなぁ。俺今女に飽きててさぁ。紹介してくれよぉ』

「いや、2人は……」

『あ? チッ、なんだよ。別にテメーの女じゃねーだろ。いつまでも彼氏ズラしてんじゃねーぞ! どうしても捨てるつもりがないって言うなら俺にも考えがあるわ。クックック……』


 翌日。主人公に不良をけしかける。


 あーダメダメ!! これは人間最低だし、美人姉妹が駆けつけて俺氏バットエンド直行。 却下!!!!


②無視して店内を出る


「あの……」

『………』

「笠島くん待ってよ!!」


 翌日


「結斗、今日は元気がないね」

「ゆいくんどうしたの〜?」

「そうかな……。昨日、笠島くんとコンビニで会ったんだけど、無視されちゃってさ。僕、なにか気に触ることでもしたかなーって」

「へぇ……結斗を無視、ねぇ」

「ゆいくんを無視……」


 美人姉妹に目をつけられる。

 翌日に響きますね!! 却下!!


 ③は……


「笠島くん?」

「ん? あっ」


 主人公は俺が脳内で必死に会議していることなんて知らないだろう。

 

 どう接するか決まらないまま主人公の呼びかけに思わず返事してしまった。


「なんだかすごい思い詰めたような顔してたよ……?」

 

 そりゃ命掛かってますからね。

 

 始まってしまった会話。このまま黙ったままじゃ②コース。でもそれじゃダメだ。なにかいい方法を……。


 ………………。

 ……………………。


 ええい! もうどうにでもなれ!! ③は気合いでどうにかするじゃ!!


「い、いやー悪い結斗っ。今さっきまで強烈な腹痛と戦っていてな。で、でも今治ったところだ。あっはっはっ」


 最後に笑っとけばなんとかなるってじっちゃん言ってた。


 主人公の反応が怖くて笑った時につぶった目を薄々開けてみる。


 ……すごい驚いた顔をしているぞ。


「笠島くん、今結斗って……」

「え? あ、悪いっ!!」


 つい、下の名前で呼んでしまった。

 同じクラスとはいえ向こうからしたら俺は初対面でロクに話したこともないのにいきなり下の名前呼びはまずかったかも——

 

「そうじゃないんだ! その……」

「その?」

「う、嬉しくて……」

「う、嬉しい?」


 主人公……結斗がもじもじと、照れた様子で話す。


「実は僕、中学の頃、男子とあまり仲が良くなくてさ。仲が良くないってのは、会話はしてくれるんだけど、友達って呼べるほど親しい人はいなくて……。だから男子から結斗って下の名前で呼ばれたことなんてなかったんだ」

「そ、そうなのか……」


 まあ原因は美人姉妹だろう。彼女たちに好意を向けられる結斗の立場に嫉妬した。恋愛って一番面倒だよな。


 主人公は主人公で大変な思いしてるんだな。


「だからね、笠島くんが結斗って呼んでくれて嬉しかった。初めは笠島くんのこと怖い人だなって思ってしまった。でも今、こうやって話して笠島くん……いいや、雄二くんは絶対いい人だって確信したよ」

「あ、ありがとう……」


 なんか好感度上がったぞ。


 というか冷静に考えて主人公の好感度を上げとけば美人姉妹に襲われる可能性が低くならないか? 元といえば俺が主人公にちょっかいを出し始めて美人姉妹の怒りを買ったんだから……。


 これだ!!!! 主人公の好感度を上げることこそが俺の生存ルートに違いない!!


「結斗」

「何かな雄二くんっ」

「ふっ、下呼びしたくらいで大袈裟だ。それに俺と結斗は今日から友達……友達を下呼びするなんて当たり前だろ。よろしくな」


 自分でもクサイ台詞言ってるなって自覚ある。雲雀でも見られたら罵られそうだ。


 だが、これが主人公には効果的面で、


「〜〜〜〜! うん、友達! よろしく雄二くん!」


 すごい嬉しそうな笑顔を見せてくれた。


「なにあの男の子たち……尊い。カップルかな?」

「強面兄貴×ワンコ系男子……あり」


 おっと。BL好きなお客のお姉さんから変な目で見られ始めた。


 商品を買い店を出る。

 

「雄二くん今日は大変だったよね。クラスメイトに怖がられて……」

「あんなもの、慣れてるから気にしてない」

「そうなの? けど……雄二くんだけ怖がられてクラスで省かれたら可哀想だよ! 雄二くんの良さを僕がクラスメイトに教えるから」

「マジ!?」


 主人公自ら俺の平穏な学園生活を手伝ってくれるとは……優しさが染みるぜ。


「うんっ。友達だからね!」


 主人公の友達……最高!


「じゃあまずは——」


 うんうん。まずは何をしてくださるんですか。


「僕の一番の友達の()()()()()()()()()()()()()に雄二くんのこと、話してみるね!!」

「…………」


 思考が固まった。


「じゃあまた明日!!」


 手を振り結斗が機嫌良く去っていった。


 1人になり、振り返る。


『僕の一番の友達の()()()()()()()()()()()()()に雄二くんのこと、話してみるね!!』


 まひろちゃんとりいなちゃん……

 

「一番近寄りたくない美人姉妹ぃぃぃぃぃぃ!!!!」 

 




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― 新着の感想 ―
[一言] なんでBL好きのお客さんが丁度近くにおるねんwww
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