第47話 「アンタには、ちゃんとお礼したいから」
「教室がなにやら騒がしいね」
「本当だ。なにかあったのかな」
日直であるまひろと結斗がゴミ捨て場から教室へ戻ってくると、クラスメイトたちが騒がしい。そして、放課後にも関わらず、かなりの人数が残っている。
「あ! まひろさんだ!」
「まひろさんに聞けばっ」
「おっと。結斗、私の後ろにいて」
「うん? わわっ」
まひろに気づいたクラスメイトたちはぞくぞくと彼女に詰め寄る。
結斗は慌ててまひろの後ろに移動し、人混みに巻き込まれずに済んだ。
「まひろさん! りいなちゃんとアイツ……笠島が2人で帰ったんだけど!」
「も、もしやあの2人って………ああああっ」
クラスがより騒がしくなった。特に男子は、りいなに幾度となく遊びの誘い断られ、よりダメージがあるのだろう。
「みんな落ち着いて。りいなたちには先に校門に行っていてくれ、と頼んでいる間だけだよ」
まひろがそう言うと、クラスの騒めきが収まった。
まひろを囲んでいた生徒たちは自分の席に戻り、安心したように帰る支度を始めた。部活に急いでいく生徒もいた。
「みんな分かりやすいねぇ。対応が楽だよ」
「あはは……。それで、りいなちゃんと雄二くんは2人で帰ったのかな? それとも2人で打ち上げ? 仲良くなったのは確かだよね!」
「結斗はりいなと笠島くんが仲良くなるのは嬉しいかい?」
「そりゃあもちろん。りいなちゃんに雄二くんの魅力が伝わっているってことだとだし」
「そうだね。笠島くんの魅力……伝わっているといいね」
「うん」
◆
「………」
「………」
校門を出て、並んで歩く。お互い無言。
俺は、りいなを改めて見る。
長いまつ毛に、やや釣り目がちなパッチリ大きな目。スラリと通った鼻筋。制服を押し上げる巨乳。紛れもなく可愛いし、メインヒロイン力を感じる。
「なあ、お礼ってなんだ?」
お礼という主旨で移動しているのは分かるが、そろそろ内容も教えて欲しい。
歩く足を止めたりいな。俺も止める。
次の発言を待っていると、りいなは、眉ひとつ歪めず、極めてクールな口調でこう言った。
「私、アンタにはちゃんとお礼したいから色々考えたの」
「お、おう。ありがとう」
「色々と考えたけど、金品だと気を遣わせるし、お出かけはない」
「まあ、はい」
選択肢を絞っているような発言。もしや今からお礼を決めるとか……?
「お姉ちゃんはゆいくんと2人っきりだし、すぐに家に帰ってくる可能性は低い」
「ほ、ほう?」
「そして勉強会のお昼休憩中。2人っきりで話していた時に、アンタから出た言葉でピンときた。手料理っていう言葉に」
「手料理……?」
『ちなみ雲雀は料理も得意だ。味は店で出せるレベル』
『私のより?』
『……俺、りいなさんの手料理食べたことないけど』
確かに話の流れで言っていたな、手料理。って、お礼ってまさか………。
「アンタへのお礼は——手料理にする。だから今から私の家に来て」




