第39話 悪役とメイド。1日半ぶり
バスが学園に着いた頃には、夕方になっていた。
荷物を持って、朝の集合場所であったグラウンドに再度集合。
俺も含め、バスの中で眠っていた生徒が多かったようで、ほとんどの生徒が疲れた顔を浮かべながら、学年主任の林間学校のまとめの話を聞き終わり、
「家に帰るまでが林間学校だからなー! 気をつけて帰れよー!」
担任がそう言ってクラスは解散。
グラウンドの近くにある駐車場には、車がたくさん停められており、保護者らしき大人もチラホラと見える。
「雄二くんは雲雀さんの迎えかな」
「そうだな」
帰りのバスに乗っている時に、指定の時間帯に迎えを頼む、的なことをメッセージ送ったし、学園にはもう来ているだろう。
駐車場を見渡すが、雲雀らしき人も黒塗りのベンツも見つからない……けど。
「結斗は親の送迎か?」
「僕は帰りも徒歩かな」
「じゃあ家まで送ろっか? 多分俺の家から近いだろうし」
結斗とバッタリ会って、初めて会話したのが、最寄りのコンビニだったしな。
「気遣いありがとうね。でも僕は、まひろちゃんとりいなちゃんと一緒に帰るから。朝は別々だったけど、帰りは日も落ち始めてるし、女の子だけで歩くのも危ないだろうし」
「なるほどな。結斗は優しいな」
こういうさりげない気遣いもできるし、美人姉妹が惚れる理由が分かるわ。
と、美人姉妹もこちらにきた。
「笠島くんはいつも通りメイドさんの迎えかな」
「たまには運動しないと太るよ〜」
「ふっ、自宅で筋トレしてるから大丈夫だ」
腹筋背筋腕立て30回ずつだけど。続けることに意味があるよな。ちなみに始めてまだ5日。
「だから雄二くんって体つきが逞しいんだね! 腹筋も割れていたし、カッコいいよっ。自分を追い込みながら日々過酷な筋トレしているんだね」
「ま、まあな」
体つきが逞しいのはゲームの笠島雄二が鍛えてくれたおかげだけどな。
「おや。あれは笠島くんのメイドさんじゃないかい?」
「ん? おお」
まひろの視線を追っていくと……校門付近でメイド服をきた女性が立っていた。顔は暗くてよく見えないが、メイド服といえば雲雀くらいしかいないだろう。
「じゃあお先に。3人とも気をつけて帰れよ」
「うんっ。またね雄二くん」
「笠島くん。また休日明けに」
「ばいばーい」
校門へ駆け足で向かう。
途中、振り向いて手を振ると、結斗と美人姉妹も手を振りかえしてくれた。
そして……雲雀の目の前にきた。
1日半ぶりくらいだが、なんだか長く会っていなかったような感覚だな。
「ただいま、雲雀。元気にしてたか?」
「おかえりなさいませ、雄二様。はい、とても健康ですよ」
「健康なら良かった。ところで、車が見当たらないのだが」
送迎用の黒塗りのベンツが見当たらない。
「少し離れたところに停めております。目立つかと思いまして」
「俺はメイド服姿の雲雀の方が目立つと思うけど」
実際、後ろから視線を感じるし。今時、メイドさんなんて滅多に見れないよな。
「その様子だと、昨日も今日もメイド服で過ごしたんだろ? 俺がいない日くらい自由な格好でいいんだぞ」
「いえ。私は雄二様のメイドですから」
「そうだけどさ」
「それに、メイド服を脱ぐということは、ひとりの女性になるのです」
「お、おう。そうなのか」
よく分からなかったが、とりあえず頷いておいた。
「それにしても、林間学校を通してお友達が増えたようですね」
「結斗以外は、まだ友達とは呼べないけど……まあみんな、思っていた以上に接しやすいよ」
美人姉妹も最初の頃は怖かったが
実際に接してみると話しやすい。あと、田嶋と里島……まあ頑張ったらたまに話す程度の関係にはなれそうな気がする。
「雄二様にお友達が増えるのは喜ばしいことです」
「どうも」
「林間学校は楽しかったですか?」
「途中ハプニングもあったが……楽しかった」
「それは良かったです。例の件はどうでしたか?」
「例の件? あー、もしや……」
『おちんちんを確認するまでは女の子です』
これ、だよなぁ。
「ばっちり付いてたぞ」
こんなことを報告する自体おかしいと思うが、俺は親指を立てて堂々と報告した。
「そうでしたか。それは付いててお得でしたね」
「ああ、付いてて……えっ、どういう意味?」
「帰りますよ」
「せめてこのモヤモヤを晴らしてからにして!?」
「ふふ、雄二くんと雲雀さん、相変わらず2人でいると楽しそう。特に雲雀さんは少しの間会えなかった分、より……」
「そうなのか? 私にはメイドさんの表情が読み取れないなぁ」
「僕もはっきりとは分からないけど、なんとなく雰囲気で、かな」
「ふむ。確かによく見ればそんな気も……」
校門を出ながら何やら話している雄二と雲雀を見守る結斗たち。
ふと、まひろが一眼レフのカメラを構えて……
パシャ。
「まひろちゃん、なにを撮ったの?」
「もちろん、笠島くんとメイドさんだよ。お似合いだなと思ってね」
「確かに。あとで雄二くんに送ってあげよう!」
「笠島くんが写真をいると言えばだけどね」
「そうだね。僕がメールで聞こうか?」
「私も彼の連絡先を持っているから大丈夫だよ」
「そっか」
話がキリ良く終わったので、結斗とまひろは帰ろうか、と校門に向けて歩き出す。
ただ、りいなは何やら不満そうに、
「私だけ連絡先、持ってないし。……ふーん」
第二章終わり
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