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第33話 メイドのひとりは夕方まで

【楽しんでるよー】


「そうですか。楽しんでらっしゃいますか」


 雲雀はスマホの電源を入れ、雄二からのメッセージを確認していた。


 昨夜、迷いながら送ったメッセージ。わざわざ電源を切ったのに、それでも電源を入れて送ったメッセージ。


 なのに、会話がすぐ終わってしまうような返答に、雲雀はまた何かメッセージを送ろうとしたが……スマホの電源を切った。

 仕事用のスマホを持っているので、こちらのスマホを切っても問題はない。


「ひとりは今日まで……夕方までですしね」


 何やら自分に言い聞かせるように呟き立ち上がる。

 雲雀は、白と黒を基調とした清楚なメイド服に素早く着替えた。今日は長い髪を結わえて、肩から胸元に垂らす。


 雲雀はキッチンで自分の朝食を作り始めた。作るのは昨日と同じで1人分。

 しかし、今朝もうっかり2人分の料理が出来上がってしまった。今日もまた、作りすぎた分は昼食の分に回すことになるだろう。

 

 朝食を食べ終わった雲雀は軽く掃除を始めた。

 ここまで見てわかるように、雲雀は雄二がいない日でも実に真面目である。雄二がいない時くらいテレビでも見たり、出掛けたりすればいいものの……メイド服を着用して黙々といつも通りの仕事をこなすだけ。


 そんな雲雀だったが、ふと動きが止まり、


「雄二様。いつも通りのまま、何も変わらぬまま帰ってこられますよね」


 そう呟く雲雀の脳裏に浮かぶのは、ショッピングモールに行く前。結斗の隣でこちらを興味そうに見つめていた……美人姉妹の存在だった。





 朝食を終え、少し長めの休憩時間。その間、俺たちのクラスは竹中先生を施設の外に呼び出した。

 

 理由はもちろん……


「お前ら……お前らありが……ぐすん、ありがとうぉぉぉ! うぉぉぉぉぉんん!」


 サプライズである、1日遅れの誕生日プレゼントを受け取った竹中先生は大号泣。

 ゲーム画面でもこういうシーンがあったが、実際に泣きながら大喜びしている先生を見ると……鼻水まで垂らし始めた姿き苦笑はするものの、こっちも嬉しい気持ちになるよな。


「先生喜んでくれたね」


 結斗がこっそり話しかけてきた。


「そうだな。まあ計画してくれたのは別のやつだけど」

「計画立ててくれた人には感謝だね。それと、田嶋くんに300円届けにいかないと」

「そうだな」


 次のイベントもあるので解散。

 俺と結斗は部屋に戻って財布から300円を取り出してまた部屋を出た時だった。


「お、おい笠島……」

「ん?」


 俺の名前を呼ぶ、か細い声が聞こえた。横を見ると、お金を渡そうと思っていた田嶋がちょうどいて……。


「田嶋くんちょうど良かったっ。今雄二くんと一緒にお金を渡そうと——」

「笠島……」

「ん?」

「お、お前だろっ。お金盗んだの」

「…………はい?」


 田嶋は俺を疑うように睨んできた。

 

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