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第29話 悪役はおちんちんを確かめる①

 昼飯後は、自然のことについて学ぶ時間で、スクリーンに映し出される資料を見ながら話を聞いた。とても考えさせられる話だった……はず。お腹いっぱいで途中から記憶がなかった。


 夕食後は、消灯時間の10時40分まで自由時間。


 俺は喉が渇いたので自動販売機にきていた。飲み物も買って部屋に戻ろうとしていた時。


「やあ、笠島くん。奇遇だね」

「まひろさん……」


 まひろがひらひらと手を振りながら俺の方へ近づいてきた。


「一日お疲れ様。楽しかったけど疲れたね」

「ああ、そうだな……」


 ……これ、このまま話さないといけないパターン?


 完全に逃げるタイミングを見失った俺は、まひろが自動販売機で飲み物を買うのを見守る。


「さて、笠島くん。私が来たということはどういう用件か分かっているね?」

「用件……あー……」


『林間学校での結斗を——"盗撮"して欲し……』


 違う。こっちの記憶じゃない。


『3枚でいいんだ。結斗が写っている写真をくれないかい?』


 こっちだ。で、俺がせめて2枚にしてくれと提案したんだっけ。


 俺はポケットに入れたスマホを取り出して操作する。


「何枚かは撮れたが……」

「ほう、見せてもらえないかい?」

「頭いいこと考えるなぁ、まひろさんは」


 写真の中からお好みの結斗を送信してもらうつもりなのだろう。


 写真を見せると、まひろは食い入るようにスマホ画面に顔を近づけた。撮った分は全部見るだろうし、数秒経ったら横にスクロールしていく。


 全部見終わるとまひろは、


「期待はしてなかったけど……中々いい写真揃えじゃないか。特にこの……部屋のベッドに寝転んでウトウトしている結斗……最高に可愛い♡」


 はい、蕩け顔いただきました。

 満足そうであった。


「でもこの写真は盗撮に近いんじゃないかい?」

「………まひろさんが最初に言ったんだろうが」

「優しいねぇー」


 はにかむ姿もカッコいいなぁ。でも今は恥ずかしさも相まってなんかムカつくっ!!


 結斗には悪いが、この一枚だけは勝手に撮らせてもらった。男の子の寝顔写真を撮るのにここまでドキドキしたのは……初めてだった。もちろん、写真を撮ったことがバレないか、と緊張した意味で。


「とりあえず、1枚はコレで。2枚目は……明日の写真に期待だね」

「そう言うと思ったよ」


 明日も俺は結斗の写真を撮るのか。写真フォルダーの中、結斗とのツーショットだらけになったんだけど。()()()見られたら勘違いされるわ。


「私は戻るね。笠島くんがちょうどここに居てくれて助かったよ」

「俺はまひろさんが近づいてきてビビったけど」

「大袈裟だなぁ。いくら私がクラスの人気者だからって」


 自分の人気を自覚しているヒロイン……嫌いじゃないぜ。謙遜や鈍感すぎるとだんだんとウザさを感じるしな。


「人気者のまひろさんは夜の方も予定が詰まってそうだな」

「実はクラスの女子からお誘いがあってね。もちろんエッチな意味じゃないよ? トランプで遊ぼうってね」

「なるほど。ってことは、りいなさんもか?」


 2人セットってイメージだし。

 特に意味はなく聞いたのが……まひろの表情が一瞬だけ暗くなったのを俺は見逃さなかった。


「りいなは……ああ見えて人付き合いは苦手な方なんだ。今夜も部屋から出ずにゴロゴロしていると思うよ」

「へぇー」

「じゃあ私はこれで」


 手をひらひらと振りながらまひろは去っていった。


「……急に話を切り上げたな」


 まるでこれ以上はりいなのことを……過去を話さないように。






「えぇ……なんでこのタイミングでいるのさ……。嫌がらせなの……?」


 部屋に戻ろうとしている途中。廊下の壁に背中を寄りかけている——りいなを見つけた。……部屋でゴロゴロしてるんじゃないのかよ。


「話があるんだけど」

「………えぇ」


 無視しようとしたが……待っていたかのように話しかけられた。


「ちなみに断ったら? なんで俺に?」

「悲鳴あげる。アンタなら……似てるし話が分かると思って」


 話の内容を誤魔化しているようだが、なんとなく分かる。きっと()()の話をしたいのだろう。俺に話すのは、見た目で勘違いされやすいって同じ境遇だから。


 でも、なんで急に……。

 美人姉妹に関わるのは怖いが、無視するのは悪い気がするしなぁ……。


 悩んだ末に、


「悪いが出直してくれ」

「遊園地の時みたいに逃げるの……?」

「まだ風呂に入ってないんだ」

「まだ入ってないの?」


 りいなが驚くのも無理はない。

 現在の時刻は9時過ぎ。ほとんどの生徒は、自由時間を満喫したいのでお風呂は早めに済ませているだろう。


「ちなみに大浴場な。理由は結斗が行きたいって言ってたから」

「……じゃあ出直す」

「そうしてくれ。あと、ここじゃ目立つし、向こうの自動販売機があるところで集合しようぜ。9時40分くらいには上がると思う」

「分かった」


 りいなは自分の部屋に戻るのか、反対方向に歩いた。


 遊園地の時のウザさはどこにやら。素直に従ったなぁ。


 俺にさえ話を聞いてもらいたいとは……朝の件、相当堪えたみたいだな。





「やっぱり誰もいないねー。雄二くんごめんね、僕が寝ちゃったせいで」

「全然いいぞ。むしろいない方がゆっくりできる」


 俺と結斗は大浴場の更衣室にきていた。

 やはり、ほとんどの生徒が早めにお風呂に入っていたようで、更衣室には俺たちしかいない。


 シャツのボタンを外し始めた時、結斗が話す。


「そういえば雄二くんが部屋を出ている間にクラスメイトの田嶋くんが来たんだけど」

「ほう」

「竹林先生の誕生日プレゼント代をクラスから集めるから、今日か明日までに田嶋くんに300円渡してってさ」

「結局プレゼント渡すのか」


 まあ分かっていたけど。

 クラスの人数は25人だから……合わせて7500円。結構いい物をプレゼントに選んだな。


「ちなみに、プレゼントは明日渡すんだって」

「それ、誕生日プレゼントじゃなくね?」


 まあドッキリも含めての誕生日プレゼントなのだろう。当日に祝われなくて完全に気が逸れているところで……誕生日プレゼントを渡す。号泣すること間違いないぜ。


「あとね、雄二くん」

「ん?」


 プレゼント関連の話しかと思いきや、結斗はもじもじしていて……


「その、良かったらなんだけど……向こうを向いてもらえないかな? は、恥ずかしくて……」

「ああ、分かった……」


 思春期の時期だし、身体を見せるのは恥ずかしいのはあるあるだ。


 俺は反対を向く。


「あ、ありがとう」

「おう」


 シャツを脱ぎ終わり、ふと思い出した。


『おちんちんを確認するまでは女の子です』


 雲雀の変な名言がほんと頭によぎるなぁー。


 なんかモヤモヤするし………確かめますか…………。

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